4-3.暗殺者来訪
4-3.暗殺者来訪
デリヴァはむくりと起き上がった。隣の部屋には、世話係のルイザがすやすやと寝息を立てている。
「念のため…。『シールド』」
デリヴァはルイザにとばっちりが来ないよう、防御魔法を掛けると、サッと冒険着に着替え、足音を忍ばせてニコラの部屋に向かった。
音もなくニコラの部屋に入る。
――あっさり入れるのはそれはそれで心配なんだが。
ザシャも刀にもたれてこっくりこっくりやっていた。
――かわいそうに。本気でニコラ様を守る気なら、護衛騎士も複数名寄越せば良いのに。
「ずっと一晩中なんて交代じゃなきゃ無理だよね。」
ザシャに話しかけてみるが起きる気配もない。
――天井裏だな。
デリヴァは目をつむると、呪文を唱えた。
「ツルツル。」
「!!」
どたん、とすごい音がした。
「何事だ!」
さすがにザシャが起きた。
「お客様だよ。天井裏に。」
「デリヴァ様いつの間に部屋に?面目ない。」
ドタン、バタン、ドシン。
大型犬より大きなものが天井裏でもがいている音が聞こえるのだ。
「侵入者だ。総員、出合え!」
ザシャが大きな声を出すと、夜勤係の私兵が次々と集まってきた。
デリヴァは寝ているニコラ様に向かって、
「念のため、防御魔法掛けておきますね。『シールド』」
集まってきた警備兵達が梯子を持ち出す。
「賊は天井裏だ!」
駆けて上がっていく兵達にデリヴァは慌てて注意喚起した。
「みなさん、天井裏にはお気をつけて…」
「え?気をつけろ、滑るぞ」
「うわあああ」
「遅かった…。」
デリヴァは右手で目を覆った。
天井裏に入り込んだ兵達は摩擦が効かずドタバタした。
敵も味方も踏ん張りが利かずドッタンバッタンしたが、敵は猫獣人の女が一人だったらしく、ツルツルの効果が切れた頃に漸くお縄となった。
「もう少し、味方を巻き込まない撃退法はなかったんですか?」
ザシャが少し不満そうな顔をしてデリヴァを見た。
「すみません。」
デリヴァは頭をかいた。
「治癒師なので、敵も含めてあまり殺傷性の高いのは使いたくなくて。」
「まあ、ニコラ様を始め、誰も死んではいませんけど。眠りの魔法とか使わないんですか?」
「暗殺者が魔法抵抗のアイテムなど持っていたり、反射アイテムを持っていたらこっちが寝かされてしまいます。」
「あーなるほど。」
「床をツルツルにするのは、魔法抵抗関係ないですからね。」
「考えて使ってたんですね。」
「ええ、こう見えても。」
「これで落ち着くと良いんですが。」
「いえ…。多分、諦めないと思いますよ。その内第二波が来ます。」
デリヴァは大きなあくびをしたが、目は光っていた。




