3-3.パーティの記憶
3-3.パーティの記憶
オブリスらのパーティは、「ライオンの末裔」という名前で登録し、最近オイダのダンジョンに挑んでいると噂されていた。
「踏破したぜ!」
オイダのギルドに帰って来たオブリスらは鎧が所々損傷していたものの、無事にダンジョンを踏破したと報告に来た。
「おめでとうございます。」
受付嬢がギルドマスターの部屋にパーティを案内した。
「おお、オブリス、みなさん、踏破おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「踏破証明の確認と、報奨金だ。それはそれとして…。」
「何でしょう?」
「警備隊長のヴェルスが、リカバリーが終わったら顔を出して欲しいと言っていたよ。メンバー全員に聞きたいことがあるらしい。山賊の件だろ。」
「承知した。今日は、風呂に入って沢山食べて眠りたい。明日は、装備のメンテナンスにも行きたいし、明後日伺うと伝えてくれないか。どこにも行かない。みんなもそれでいいか?」
一同、頷いた。
そして、翌々日。ライオンの末裔の面々は警備隊を訪れた。
「まずはダンジョン踏破、おめでとう。山賊退治についても改めて御礼を言いたい。」
「ありがとうございます。」
「実は山賊どもが、毎晩夜泣きをするわ、証言が食い違うわ、困っている。君たちのような、『まともな』人間の証言を改めて聞きたい。」
「分かりました。それで?」
「この調書のサインは、オブリス、君の物で間違いないな?」
「はい。俺の字です。」
「ここに出て来る、治癒師デリヴァとはどのような者だ。」
「デリ…ヴァ?」
オブリスは胸を押さえた。マリスとアリアがポロポロと泣き出した。サムもビルもベンも頭を抱えている。
異様な光景に気圧されながら、ヴェルスはやっと言葉を紡いだ。
「まさか、思い出せない…のか?」
「はい…。」
「誰か居た…とても大切な、懐かしい…何かをみんな忘れていました。」
「不思議なことに、山賊も、行商人のロイも彼女を覚えてない。が、エルフの治癒師が、魔法で賊を無力化したと、書いてある。」
オブリスは覗き込んだ。
「ほんとだ…」
マリスがそれをひったくりアリアも凝視した。
「居た…。」
マリスの腕がブルブルと震えた。
「デリヴァ…。」
アリアがしゃくり上げた。
「俺たちが、踏破出来たのは、アリアが粘着地面を覚えたからなんです。」
打ち震えながら、オブリスがやっと言った。ヴェルスが眉を上げた。
「そう。なぜかあの日から使えるようになっていて…。きっと習ったんだ。」
「敵が無力化して倒しやすくなり、アリアの成長で踏破出来たんです。」
「私もハイ・ヒール覚えてた…」
マリスも泣きながら吐露した。
「書く物をお借りしても?」
「ああ…」
懐から羊皮紙を取り出すと、「エルフの治癒師、デリヴァ」
とメモを取った。
「彼女の行く先はわかるか?お礼もしたい。」
「いえ…。」
オブリスはうなだれつつ首を振った。
「でも……。」
マリスが人差し指を立てた。
「治癒師だから、大病や大怪我が治った人を探せば足跡が辿れるかもしれないわ。」
「ありがとう。マリス、聞き込みの参考にさせてもらうよ。」
「君たちはどうするんだ?」
「デリヴァを追うのは当てもなく難しいです。私達は次のダンジョンを目指します。でも、いつか会える日が来るまで、この名前は常に覚えておこうと思います。」
「どちらが先にデリヴァを見つけるかわからないが…。会うことがあれば、山賊退治の御礼をしたい。」
ヴェルスは言った。オブリスらは、
「会えたら御礼を言いたいです。」
と言い、ライオンの末裔の面々は落ち着いた面構えになっていた。
「今日は、有意義だった。デリヴァと名乗る不思議な治癒師が実在するのは確かなようだ。」
ヴェルスは言った。
「こちらこそ、命の恩人を思い出させて頂き、感謝します。」
オブリスはガッチリとヴェルスの手を握った。
「関係あるかないか分かりませんがね。」
これまで黙って聞いていたホビットのベンが口を挟んだ。
「何かな?」
「あの日から俺たち、こんな古代銀貨を持ち歩いてるんです。」
「ほお?レオ銀貨だな。滅した古代王朝のものだ。」
「レオ…銀貨…。」
こうしてライオンの末裔は詰所を辞去した。
「やれやれ、色々あった日だったな。」
「お疲れ様でした。」
マクシムも労った。
「かみさんのシチューが恋しいぜ。また明日な!」
ヴェルスは詰所を後にした。
帰り道、美しいプラチナブロンドのエルフとすれ違ったが、ヴェルスは真っ直ぐに家路についた。




