5-7.帰還
5-7.帰還
神速ブーストを掛けたデリヴァは1時間ほどで、ドメウの街に入る関所に着いた。
「急ぐんだ。ドリカ様の通行証もある。」
「ふん。」
番兵は面白くなさそうに通行証を取り上げて一瞥し、そのまま左手の掌を指しだした。なめるような目でデリヴァの胸を見ていた。
「えっ?」
――また賄賂取るの?正気?
「ほら。急ぐんだろ?」
寄越せと言わないのが小狡い。デリヴァは耳まで赤くなったが、黙って銀貨を二枚取り出して放り投げた。番兵が銀貨に気を取られた瞬間に
「確認は済んだね?」
と通行証をふんだくって、再び駆け出した。
――若い頃なら関所を吹っ飛ばしていたかもな。
と思いつつ、
――今はヒセラ様だ。
と一目散に山道を駆け下りた。
大通りを暴走するわけにも行かないので、人が多くなると早歩きに切り替え、閉店間近のギルドの扉をくぐった。
「治癒師のデリヴァです。ドリカ様のご依頼のポーション、お届けしました。」
保護用の布をほどいて、黄金色の上級ポーションを差し出した。
受付嬢が、領主案件と聞いて奥からギルドマスターを呼び出した。
「おお、デリヴァ様。1日で行って帰ってくるとは、さすがですな。」
「確認してもらえますか。」
「おおおお。こんな美しいポーション、長年勤めていて一度も見たことがありません。」
「それは光栄です。私は納入までがお仕事なので、任務完了のサインと、報酬をお願い致します。」
「承知致しました。ドリカ様も安心なさるでしょう。他の者に任せず、私が護衛を連れて確実にドリカ様に手渡しして参ります。おい、トーマスとロブを呼べ。」
受付嬢が護衛を呼びに行った。
「それなら安心です。ギルマス、よろしくお願いいたします。」
「こちらが報酬の金貨二十枚です。」
「そんなに?」
「これでヒセラ様がお救いできるなら、金貨百枚だって惜しくありませんよ。」
「ありがとうございます。これでしばらく牡蠣を食べ続けることが出来そうです。」
「それでは、ドリカ様も首を長くしてお待ちでしょうから、私どもはお城に急ぎますね。良きご滞在を。」
「ご無事で、お気を付けて。」
――懐が温かい。今日は蒸し牡蠣と牡蠣のパエリヤにしよう。
おにぎり二つだけで山から駆け下りたデリヴァは、ギルドの真ん中で盛大におなかを鳴らした。




