5-4.依頼
5-4.依頼
デリヴァは立ち上がりそうになったが、腰を浮かせたかと思うと、もう一度腰掛けた。
「急がないと。」
「その通りです。が…。」
「が?」
「ベルタ様は確かに優秀で、宮廷治癒師であらせられます。ですので、御館様が深く信頼されるのも、奥方様も私めも十分承知しております。ただ、少しベルタ様に入れ込みすぎと申しますか…。それ以外の治癒師を全く信用して下さらないのです。」
「なるほど?」
「しかし、ヒセラ様は日に日にやつれております。奥方様が、見るに見かね、ギルドに治癒の依頼を掛けたのです。」
「わかりました。でもディーデさん。あなた、私を尾行していらっしゃいましたよね?」
「見破られていましたか。申し訳ございません。」
「それに、ギルドにそのような複雑な治癒の依頼はありませんでしたが?」
「ええ。まだ出していません。ただ、依頼をしようというまさにその時、隣でチラリと、あなた様が『一級治癒師』と名乗られたのを聞いてしまいまして。」
「ええ。それで?」
「私の独断で、奥方様ならデリヴァ様に依頼を掛けるのではないかと思い、どんな方か面談をお願いに伺った次第です。」
「なるほど。必死の思いだったのですね。」
「ええ。」
「ただ、私はいざという時には、魔法もあるので、あなたから逃げおおせることは出来るでしょうけど。女性にとって、男性から後を付けられるのは、気持ちの良いものではありません。」
「その点は…。平に申し訳なく。」
「切迫しておられるのが分かったので不問に致します。」
「ご海容に感謝致します。」
「それで?」
「旅の治癒師の方となると、御館様が入城を拒まれる可能性も高く。」
「それが診察不可につながるんですね。」
デリヴァは、さすがに毎回忘れられてしまう副作用が自分の名声や信用も皆無にしてしまうということを改めて呪った。
「ええ…申し訳ございません。」
「ご事情はよく分かりました。それで…。」
デリヴァはディーデの目を真っ直ぐに見た。
「私にご依頼なさりたいことは?」




