5-3.青髯の娘
5-3.青髯の娘
「…というわけでして。」
ディーデは眉間に皺を寄せ、両手を祈るように組んで説明を終えた。
「つまり…?ヒセラお嬢様が不治の病ということですか?」
「ええ。おそらく。」
「うーん…。」
デリヴァは腕を組んだ。
「どうにかして頂けないでしょうか?」
ディーデは藁にもすがるようにデリヴァの顔色をうかがった。
「いえね。依頼があり、正当な金額であれば、基本的に私は全てお引き受け致します。」
「そうなんですね。」
ディーデがほっとしたように肩を下ろした。
「ですが・・・。」
「ですが?」
「なぜ、診察をさせて頂けないのでしょう?」
デリヴァは核心に切り込んだ。ディーデが肩を丸めてうなだれた。
「そのお話は少し込み入っております。説明させて頂いてもかまわないでしょうか?」
「もちろん。私はヒューマンのみなさんからご覧になれば、時間には相当な余裕を持っています。むしろ詳しくお知らせ下さい。」
「畏まりました。実を申しますと。」
ディーデは水を一口飲んだ。
「ヒセラ様の治療のために、御館様は、宮廷治癒師のベルタ様を国王陛下の勅許を得て、お招きしているのです。」
「ベルタ…。その名はどこかで聞いたことがある気がする。エルフの治癒師では?」
「その通りです。おそらく同郷の方でしょう。」
「じゃあ、ベルタさんが治されれば私は要らないじゃないですか。」
「ご指摘の通りです。ですが、そう話は簡単ではないのです。」
デリヴァは一口水を飲み、視線で先を促した。
「ベルタの治療には効果はあるのですが、延命であって、治癒ではないようなのです。」
「なるほど。ヒセラ様はそれだけ重体なんですね。」
「ええ…。」
「また、ベルタ様は当家の領地の啓発もされています。迷信を信じないようにとか、遊牧民の薬に手を出さぬようにとか、特定の宗教の祈祷に騙されるなとか。」
「むしろ真っ当なことを言っている気がしますけど。」
「仰せの通りです。御館様はその指示を守り、おかげで無資格の宗教治癒師などは駆除され、領内の民間療法は駆逐されたとすら言えます。」
「喜ぶべきことなのでは?」
「ええ。確かに。ですが…。」
「ですが?」
「ヒセラ様は弱る一方なのです。医師の見立てでは、余命幾ばくもないと。」
デリヴァは眉を上げた。




