5-2.尾行者
5-2.尾行者
旅慣れているデリヴァである。
自分が、多くの男から押し倒したい女、と見られることも経験で知っている。また、一人で行動しているのも見たら分かる。一人で行動できる人間は、暴漢にも一人で対応できるつわものか、不用心な世間知らずのどちらかである。エルフの耳を見れば、後者の可能性はほとんどないことは、考えれば分かることだ。
――かといって襲っても来ない。
デリヴァは、尾行を知りながらも、撒こうともせず、淡々と宿に帰投した。
「女将さん」
「あいよ?」
「もし客が来たら、どこの誰かしっかり確認しておくれ?」
デリヴァはそっと銅貨を3枚握らせた。
女将はほくそ笑んで、
「合点承知の助。」
と力こぶを見せた。
案の定、というか、半時もしない内に、女将がノックをしてきた。
「デリヴァさん、お客様です。」
「どなたかな?」
「ドメウ男爵夫人のお使いだそうで。」
「あー。」
デリヴァは天を仰いだ。
「それは邪険に出来ないね。ロビーで会おう。」
「承知しました。」
「ちょっと髪を整えたりしたい。長くは掛からないからお待ち頂けないだろうか?」
「お伝え致します。」
女将は下がった。
階下に降りると、眼光鋭い中年の痩身の男が待っていた。
「名のある治癒師の方とお見受けします。わたくし、ドメウ男爵家執事、ディーデと申します。」
「治癒師のデリヴァです。ご覧の通りエルフです。」
「はい。私は男爵夫人、ドリカ様の使いとして参りました。」
「お話を伺いましょう。」
「ありがとうございます。実は…。」
ディーデは深い息をして話し出した。




