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## 第10話「王都炎上」

# 『この世界で魔法を使えるのは俺だけだったが、守りたいのはたった一人の笑顔だった』


## 第10話「王都炎上」


 王都が見えた。


 高い城壁。


 白い石で作られた街並み。


 遠くから見れば、美しい都だった。


---


 だが。


---


「……なんか変じゃないか?」


 カイが眉をひそめる。


---


 リリアも気付いていた。


---


 煙。


---


 王都のあちこちから黒煙が上がっている。


---


「急ごう!」


---


 二人は走り出した。


---


 門へ近づく。


 すると――


---


 人々が逃げていた。


---


「助けて!」


「魔物だ!」


「騎士団が負けた!」


---


 悲鳴。


 泣き声。


 混乱。


---


 平和な王都は消えていた。


---


「何が起きてる!?」


---


 カイが叫ぶ。


---


 逃げてきた男が答える。


---


「黒い魔物だ!」


---


「突然現れて……!」


---


「街の中心を破壊してる!」


---


 リリアの顔が青くなる。


---


「封印の影響……」


---


 嫌な予感が当たっていた。


---


 そのとき。


---


 ドォォォォン!!


---


 爆音。


---


 城の方角で巨大な爆発が起きる。


---


 空が赤く染まる。


---


「くそっ!」


---


 カイは走り出した。


---


「待って!」


---


 リリアも追う。


---


 街の中心へ。


---


 そして二人は見た。


---


 巨大な魔物。


---


 漆黒の鎧をまとった人型。


---


 高さは十メートル以上。


---


 騎士団が何十人も戦っている。


---


 だが。


---


 まるで歯が立っていなかった。


---


「なんだよあれ……」


---


 カイが呟く。


---


 その瞬間。


---


 魔物が腕を振る。


---


 騎士たちが吹き飛ぶ。


---


 建物が崩れる。


---


 悲鳴が響く。


---


 リリアが唇を噛む。


---


「止めなきゃ……!」


---


 しかし。


---


 次の瞬間だった。


---


「いたぞ!!」


---


 声。


---


 上空。


---


 魔導飛行船。


---


 そこから旗が翻る。


---


 王国騎士団。


---


 そして。


---


「カイ・セレスを確認!」


---


 空気が凍った。


---


 カイが目を瞬く。


---


「俺?」


---


 騎士たちがざわめく。


---


「本当にいたのか……」


---


「災厄の魔導師……」


---


「魔王の後継者……」


---


 リリアが息を呑む。


---


 いつの間にか。


---


 噂は広がっていた。


---


 名前が。


---


 恐怖と共に。


---


 広がっていた。


---


「おいおい」


---


 カイは苦笑する。


---


「有名人になった覚えないぞ」


---


 だが誰も笑わない。


---


 むしろ。


---


 恐れている。


---


 その目を見て。


---


 カイは少しだけ傷ついた。


---


(そっか)


---


(俺、怖がられてるのか)


---


 リリアがその横顔を見る。


---


 気付いてしまう。


---


 彼は平気そうにしている。


---


 でも。


---


 本当は少しだけ寂しそうだった。


---


 そのとき。


---


 巨大な魔物が動く。


---


 標的を変える。


---


 真っ直ぐ。


---


 リリアへ。


---


「危ない!」


---


 カイが飛び出した。


---


 巨大な拳。


---


 直撃コース。


---


 避けられない。


---


 その瞬間。


---


 世界が静止する。


---


 あの感覚。


---


 魔法。


---


 だが今回は違う。


---


 力が暴れる。


---


 止まらない。


---


 空間が歪む。


---


 空が割れる。


---


「まずい……!」


---


 リリアが叫ぶ。


---


 カイ自身も分かった。


---


 制御できない。


---


 力が大きくなりすぎている。


---


 すると。


---


 胸の奥から声がした。


---


『力を欲するか』


---


 あの声。


---


 封印の怪物。


---


『受け入れろ』


---


『すべてを壊す力を』


---


「断る」


---


 カイは即答した。


---


『なに?』


---


「俺は」


---


 歪む空間の中で。


---


 リリアを見る。


---


 泣きそうな顔。


---


 それでも自分を信じている瞳。


---


「守るために使いたいんだ」


---


 次の瞬間。


---


 暴走していた力が静まる。


---


 右手に集まる。


---


 圧縮。


---


 収束。


---


 そして――


---


「消えろ」


---


 白い光。


---


 巨大な魔物が一瞬で消滅した。


---


 街が静まり返る。


---


 誰も声を出せない。


---


 騎士も。


---


 住民も。


---


 全員が。


---


 カイ・セレスを見ていた。


---


 英雄を見るように。


---


 あるいは。


---


 新たな災厄を見るように。


---


 その視線の中で。


---


 リリアだけが笑った。


---


「やっぱり」


---


 カイが振り向く。


---


「ん?」


---


 リリアは少し照れながら言った。


---


「私のカイは、かっこいい」


---


 カイは固まった。


---


「……え?」


---


 今。


---


 なんて言った?


---


 リリアの顔も真っ赤だった。


---


 言ってから気付いた。


---


 とんでもないことを言ったと。


---


 そして二人同時に顔を逸らした。


---


 王都炎上。


---


 その裏で。


---


 少しだけ。


---


 二人の距離は縮まっていた。


---


## 第10話・終わり


### 次回


## 第11話「聖女会議」


王都で待っていたのは歓迎ではなかった。


リリアの秘密。


そしてカイの正体。


世界を揺るがす真実が、ついに明かされる――。


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