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# 『この世界で魔法を使えるのは俺だけだったが、守りたいのはたった一人の笑顔だった』 ## 第11話「聖女会議」

# 『この世界で魔法を使えるのは俺だけだったが、守りたいのはたった一人の笑顔だった』


## 第11話「聖女会議」


 王都中央。


 白亜の王城。


---


 カイとリリアは巨大な会議室へ案内されていた。


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「絶対ろくなことにならない」


 カイが呟く。


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「同感」


 リリアも珍しく即答した。


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 二人は顔を見合わせる。


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 少しだけ笑った。


---


 だが。


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 扉が開いた瞬間。


---


 空気が変わる。


---


 長い机。


 並ぶ貴族。


 騎士団長。


 魔導師たち。


---


 全員が。


---


 カイを見ていた。


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 歓迎ではない。


---


 警戒。


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 恐怖。


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 敵意。


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 そんな視線だった。


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「カイ・セレス」


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 王国宰相が口を開く。


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「お前を危険人物として認定する」


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「早いな」


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 カイは椅子に座る。


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「自己紹介より先か」


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 会議室がざわつく。


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 だが宰相は続けた。


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「王都で見せた力」


「存在そのものが脅威だ」


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「なるほど」


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「反論はあるか?」


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 カイは少し考えた。


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 そして。


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「あるな」


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 全員が注目する。


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「俺、王都救ったよな?」


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 沈黙。


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 誰も答えない。


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「魔物倒したよな?」


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 さらに沈黙。


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「なら危険人物じゃなくて英雄じゃね?」


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 騎士団の何人かが吹き出しそうになる。


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 宰相の額に青筋が浮く。


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「問題は力の規模だ!」


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「そっちか」


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 カイは納得した。


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 そのとき。


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 奥の席から声が響く。


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「静かに」


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 全員が立ち上がる。


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 会議室の最奥。


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 一人の女性。


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 白銀の髪。


 金色の瞳。


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 まるで神話のような美しさ。


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 リリアの顔色が変わる。


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「……先生」


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 カイが振り向く。


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「知り合い?」


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 リリアは小さくうなずく。


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「私の育ての親」


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 女性は静かに立ち上がる。


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「久しぶりですね、リリア」


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 優しい声。


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 しかしその瞳には悲しみもあった。


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「アリア様……」


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 リリアの恩師。


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 かつて聖女候補たちを育てていた人物だった。


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 アリアはカイを見る。


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 まっすぐに。


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 まるで心の奥まで見透かすように。


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「あなたがカイ・セレスですか」


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「たぶん」


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「たぶん?」


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「俺もまだよく分かってない」


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 会議室が少しざわめく。


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 アリアだけが微笑んだ。


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「正直ですね」


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 そして。


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 次の言葉で空気が凍る。


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「あなたは魔王ではありません」


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 全員が立ち上がる。


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「なっ!?」


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「アリア様!」


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「何を!」


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 騒然となる会議室。


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 だがアリアは静かだった。


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「魔王の後継者ですらない」


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 カイの眉が動く。


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「どういう意味だ?」


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 アリアは答える。


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「千年前」


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 会議室が静まる。


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「世界を書き換えようとした存在がいた」


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「魔王か」


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「違います」


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 沈黙。


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「世界を救おうとした人です」


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 全員の顔色が変わる。


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 禁忌。


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 誰も口にしない真実。


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「その人物は世界を壊そうとしたのではない」


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「世界を自由にしようとした」


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 リリアが息を呑む。


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「そんな……」


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 教えられてきた歴史と違う。


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 全部。


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 違う。


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「封印されたのは悪だからではない」


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 アリアの瞳が揺れる。


---


「真実を知ったからです」


---


 カイの胸の奥で何かが反応する。


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 知らない記憶。


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 知らない感情。


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 そして。


---


 知らない声。


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『ようやく近づいたな』


---


 頭の中に響く。


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 あの声だ。


---


 カイだけに聞こえる。


---


『真実へ』


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 胸が熱くなる。


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 苦しい。


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 でも。


---


 なぜか懐かしい。


---


 そのとき。


---


 アリアがリリアを見る。


---


「リリア」


---


 優しい声。


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「あなたに伝えていなかったことがあります」


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 リリアの表情が固まる。


---


 嫌な予感。


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 心臓が強く鳴る。


---


「あなたは孤児ではありません」


---


 世界が止まった。


---


「……え?」


---


 リリアの声が震える。


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「お父さんとお母さんは?」


---


 アリアは静かに答える。


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「生きています」


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 沈黙。


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 数秒。


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 誰も動けない。


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 そして。


---


 リリアの瞳から涙が溢れた。


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「……うそ」


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 何年も。


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 死んだと思っていた。


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 会いたいと思っていた。


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 諦めようとしていた。


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 その家族が。


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 生きている。


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「どこにいるの……?」


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 震える声。


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 アリアは苦しそうに答えた。


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「世界樹です」


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 会議室が再びざわつく。


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 世界樹。


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 世界で最も危険な禁域。


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 誰も近づけない場所。


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「あなたの両親は」


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 アリアは言う。


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「世界を守るため、そこに封印されています」


---


 カイの目が細くなる。


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「つまり」


---


 立ち上がる。


---


「助けに行けばいいんだな」


---


 会議室全員が固まる。


---


 そして。


---


 リリアが泣きながら笑った。


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 この人は本当に変わらない。


---


 どんな真実を聞いても。


---


 まず助ける方法を考える。


---


 だから。


---


 好きになったんだ。


---


 まだ言えないけれど。


---


 その気持ちはもう止まらなかった。


---


## 第11話・終わり


### 次回


## 第12話「世界樹への道」


リリアの両親を救うため、二人は世界最大の禁域へ向かう。


しかしその途中――


新たなヒロイン(エルフの剣士)が現れる。


そして彼女もまた、カイに救われることになる。


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