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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第三章 静かなる聖地、それは光

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本物の皇弟アレイウス

 私、クレアとアイゼル、レオンハルトは聖地からそのまま連行されて、大聖堂の大司教の前に連れてこられていた。


 大司教は大きな管轄区を持つ教会の役職で、彼はきっと聖都ヴァティウスを任されている人だと思う。


 教会には大司教の上は枢機卿がいて精霊の代理人の教皇が一人いる設定がある。


 ただ、私が呼んだ原作には教皇は出てこなかった。


 年老いた教皇は聖地ヴァティウスで滅多に人前に現れないという一文があったと思う。


 だから教皇はここにはいるけど会えずに、会える中では大司教が聖都ヴァティウスでの一番偉い人だと思う。


 あとは、大司教より偉い枢機卿というのは数人いる役職だけど、大司教よりもっと数が少なく、教皇のいる聖都ヴァティウスに常駐しているという事はないと思う。


 枢機卿も原作には登場していない……いや、登場していたかもしれない!


 原作で、はっきりと活躍していた人物ではないけれど、黒幕のルシアンと教会を繋ぐ人物として、枢機卿がいた!


 名前や詳しいことも思い出せないけど、枢機卿の名前なら隠されることもなく教会内にあると思う。

 名前が思い出せたら原作の内容も思い出していけるかもしれない……。


 そんな風に上の空になっていたら、グッとアイゼルに引き寄せされる。


「大司教の部屋だよ」


 アイゼルに任せてボーッと歩いていたら、いつの間にか着いていた。


 簡素な執務室の前に聖都ヴァティウスを統治する大司教がいた。


 ヨボヨボのおじいちゃんを想像していたから、思ったよりずっと若い。


 四、五十代という見た目の男性は、特に感情のない、けれどおだやかな目で私たちを見ている。


 教会には管轄区はたくさんあるが、やはり聖都となると特別だ。


 教皇がいる場所だけど、現在は教皇はほぼ機能していない。


 そんな場所を任せられるくらい、有能なのだ。

 おだやかな仮面に下にどんな計略を持っているのか分からない。


 私は身体に寒気が走るのを感じて、咄嗟にアイゼルに抱きつく手をギュッと強めた


 けれど、よく考えてみれば大司教の前でアイゼに抱きつくなんて、よくないことじゃないのかしら?


 今更言っても遅いかもしれないけど。


 アイゼルが私の腰をガッチリ掴んで離さないし……。


「レオンハルト殿、聖都と聖地を守るために帝国より派遣された騎士であるあなたが、なぜ、このような時に聖地にいたのですか?」


 おだやかだが棘のある言い方だった。


「大司教レオナール殿、見ての通りです。聖地は光によって救われたのです。これは聖地を救うために皇帝陛下が遣わされた最大の守りなのです」


 なんかレオンハルトがすごいこと言ってる。


 私と今日一日過ごした人と同一人物?


  私に一目惚れしたって事にして、今朝からレオンハルトは半日一緒に過ごしたけど……。


 強引で豪快な感じだったけど、恋人同士に見えるように目立つための行動をしていたのなら、かなり計算されていたと思う。


 だから、大司教レオナールへの、堂々とした物言いも不思議じゃない。


 レオンハルトは朝から、今の大司教レオナールとの対談を見越して動いていたとも思う。


 私をアリシアからの伝言があると呼び出して、アイゼルを聖地に来るようのお引きだす。


 最初方考えていないとこんなに綺麗に繋がらない。


 アイゼルの方も、ターニアから通じて皇帝の魔石のペンダントが渡されて何かの使命を感じていたようだから。

 レオンハルトと出会って、ペンダントを使うのは聖地だと確信したんだと思う。


 だから、二人ともにとっては、今、大司教に会っているには朝から想定していた事なんだと思う。


「枯渇していた魔力が甦った事は確かですが、皇帝陛下の意向とはどういう事ですか? 教会の聖地で行動を起こす前には、私の許可が必要でした」

 

 大司教レオナールが言う。


 確かに、聖地の魔力を回復させるにしても、無許可でっていうのはまずい気がする。


「帝国内での魔力の流れの管理は帝国の管理下にあります。聖地は確かに教会の管理下にありますが、許可が必要だったのですか?」


 私とレオンハルトが恋人同士のふりをしていたのは、教会が聖地へ行くためのボートに制限をかけているらしいって話からだったけど、明確な制限の条件が教会から明かされていたわけじゃない。


 だから、大袈裟な振る舞いになってしまっていたところもあるんだし……。


 思い出すと自分の演技が恥ずかしい。


 赤くなった私にアイゼルが気づいて、レオンハルトを睨む。


 今はそんな時じゃないんだけど……。


 帝国内の魔力の整備が帝国の仕事で、明確な聖地の立ち入りの禁止の御触れが出ていないなら、教会が文句を言える事などないけど……。


「兄上の魔石を使う事が初めてだったので、聖地を遠くから見て魔力の流れを確認するだけのつもりが、聖地の魔力と皇帝の魔石の魔力に引っ張られて、制御不能になってしまったのです。戻って大司教の許可を取るつもりが、その暇もなく魔力を解放してしまった」


 アイゼルがレオンハルトと大司教レオナールの会話に割り込んだ。


 私が気づいた時には変装を解いて、ノリノリで魔石を使っていたはずだけど……。


「貴方は、皇帝の魔石を使えるという事は、皇族のそれもかなり、血筋の近い方ですね」


 大司教レオナールがアイゼルを見つめる。


 聖都ヴァティウスの大司教にもなれば、皇帝や皇族に会った事だってあるだろう。


 子供の頃から教会の暗殺を恐れて隠されていたアイゼルは皇帝の弟だけど、辺境の城砦で誰とも会わずにいた。


「僕はずっと帝都の宮殿に住んでいたんですが、病弱で外に出る機会があまりありませんでしたからね」


 んん!??


 アイゼルが堂々と嘘をついた。


「ええ、俺が聖都ヴァティウスに派遣される前に中央門番隊の副団長だった頃に、宮殿で何度もお見かけしています」


 レオンハルトもアイゼルの嘘に同調する。

 

「では、あなたが皇帝陛下の弟君の亡くなっていない双子の片方であるアレイウス様ですか……!?」


 ああ、双子の弟になりすました!


「病気でずっと宮殿の奥に引きこもっていましたからね。知られていなくて当然んです。今回が初めての兄からのお使いで、こんな大役を任されて緊張していたんです。だから、教会に報告もせずに魔力を使うなどという大失敗をしてしまいました」


 申し訳なさそうにアイゼルが目を伏せた。


 教会に無駄に警戒させずに下手に出るのはいいと思うけど……。


 いくら双子で、アイゼルこそが本当のアレイウスとは言え。


 勝手に双子の弟になりすまして、大丈夫!?


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