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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第三章 静かなる聖地、それは光

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湖上へ向かう恋人たちと転移の刻

「レオンハルト、ずっと私を見てるけど、どうしたの……?」


 私、クレアは、昼食を食べた後に、テーブルの向かい側にいるレオンハルトからの視線に戸惑って聞いた。


「やっと二人っきりになれたんだから、一目惚れした相手の事ならこれくらい見つめるだろう」


 顔が近いから囁き声でもよく聞こえる。


 お芝居の続きだって言うことはわかるけど……。


 こんなに近くで見られると、本当にドキドキしてしまう。


 本当に顔が赤くなる。


 アイゼルもこうして私の事をよく見ていて、慣れたつもりでも意識するとドキドキする。


 知らない人だと余計にドキドキする気がする……。


 両手で頬を覆って隠していると、店員さんが私を見て微笑んでいた。


 レオンハルトに恋した女の子に見えたみたいで、微笑ましく映っているらしい。


 よく観察すると、他の客からも好意的に見られているようで、湖の上のボートに乗るために一目惚れされてるって演技としては悪くないんだと思う。


 かなり、合格?


 なんとなく居た堪れないけど……。


 ミアが一緒にいてくれないと困る。


 この状況を、アイゼルに見られてたらどうしよう。


「さあ、次はボートに乗りに行こうか」


 レオンハルトが言う。

 私を見ている目が変わらない。


 私はドキドキしながらレオンハルトの手を取って歩き出した。


◆◇◆


 クレアちゃんとレオンハルトがボート乗り場へ歩いて行くのが見えた。


 もうちょっとでも近づいたら、飛んで行こうと思ったが、レオンハルトはギリギリで近づかなかった。

 

 ちゃんと演技ではあるんだ。


 それはわかっているけど……。


 クレアちゃんの動きが可愛すぎた。


 一目惚れされてじっと見つめられて戸惑っている動きが、ここからもよく見えた。


 僕が同じようにクレアちゃんを見つめても、あんなふうにはならない。


 ならなくても、僕といる時のクレアちゃんの方が可愛い。


 ただ、僕の見ることの出来ないクレアちゃんを見てるのが許せないだけだ。



 クレアちゃんたち2人が向かうボート乗り場には、ギリアムとミアがもうついていて、湖の上に漕ぎ出していた。


 ちゃんと恋人同士に見えたのか? 他の理由で怪しまれなかったのかは分からないが、乗れることは分かった。


 推進方式のボートの櫂はギリアムが漕いでいた。


 聖都ヴァティウスに来る途中でミアが馬車の手綱を引いていた事を思い出す。


 櫂は流石に小柄なミアでは扱えないだろう。


 ただ、ギリアムの重さが櫂を扱い辛くするが、クレアとボートに乗る場合はミアが漕ぐのだろうと思った。


 クレアちゃんが櫂を漕いで湖の上を進む姿は想像できない。

 ただ、漕ぎたがるような気がする。


 一瞬、レオンハルトに櫂を借りて一生懸命に漕いでいるクレアちゃんの姿が浮かんだ。


 ボート乗り場の桟橋に着いたクレアちゃんとレオンハルトが、恋するもの同士に見えずの乗れなければいいのにと思った。


◆◇◆


 私、クレアとレオンハルトはボート乗り場の桟橋に着いた。


「危ない」


 と、言って私を自分の腕の抱き寄せて、やっぱりじっと見つめている。


「レオンハルト隊長、この方が朝から噂になっている人ですか」


 教会側の騎士が言う。


 レオンハルトは帝国側の騎士の隊長だけど、教会側の騎士からも隊長と呼ばれているらしい。


 この桟橋には教会側の騎士たちが多いけど、帝国側の騎士も全くいないわけじゃなく、なんらかの役目はあるのだろうが、教会側が監督したいって意思も感じる。


 レオンハルトは話しかけてきた教会側に騎士を睨んだ。


「彼女に失礼な事は言うな」


 凄みのある顔で隊長に睨まれてすくみ上がっている。


 私も驚いた。


 さっきまで私を見ていた甘い顔と全然違うから……。


 隊長を任せられるような騎士は、これだけ迫力があるものなのね……。


「マーシャル、大丈夫だ。すぐにボートを用意させる」


 レオンハルトはすぐに私に向き直って甘い顔に戻るが、その切り替えの速さも怖い。


 私は一瞬演技をためらった。

 怯えた様な表情が顔に張り付いてしまう。


 私の顔を見て、レオンハルトがボートを急かした。


『怖がられてボートに一緒に乗ってもらえなかったらどうする?』


 そんな脅し文句をレオンハルトの無言の背中から感じる。


 恐れた騎士がボートをすぐに手配してきて、私たちは無事にボートに乗れた。


 湖上の上をレオンハルトが櫂を漕いで進む。


 しばらく行くと私はレオンハルトに話しかけた。


「あなたが睨んだだけでボートに乗れるなら一目惚れしたなんて演技は必要なかったじゃない!」


「演技があったからこそ、すぐにボートが用意されたんだ。俺が本気だって伝わってたから、アイツらだって怖がったんだろう」


 それはそうなんだろうけど。


 私の演技の成果も見てみたかった気がする。

 

 まあいいけど……。


 私はチラッと後ろを振り返る。

 桟橋からまだほんの少ししか離れていない。


 ここでアリシアの事を聞くのは、まだまずいだろう。


 レオンハルトを見ると、私が何を言いたいのか伝わったみたいで、首を僅かに横に振る。


 こっちをじっと見ている騎士もいるし、まだ演技が必要だったみたい。


 私はレオンハルトをまた甘く見つめて、レオンハルトも私を甘く見つめた。


 演技はまだ終わってなかった。


◆◇◆


 僕、アイゼルは、クレアとレオンハルトがボートに無事乗れたことにがっかりした。


 乗れなければ困ったけど、乗れるか乗れないかは遠くで見てるだけの僕の気持ちで決まるわけじゃないんだ。


 クレアちゃんとレオンハルトが二人でボートに乗るなんて嫌だ。


 二人っきりの時間を短くするためにも僕が転移魔法で二人のボートに乗り込む必要があるんだけど、まだ桟橋に近すぎる。


 湖の中心あたりに二人が来るのを待つしかない。


 桟橋にはダリルとコリンがいた。


 彼らもボートに乗り予定だったが、ボート乗り場で断られているようだった。


 僕とギリアムで乗る予定を、ギリアムとミアにして良かった。


 ギリアムとミアのボートはすでに湖の中心部あたりにあり、クレアとレオンハルトのボートを待っているようだった。


 二人のボートが中心部に近づいたら、ギリアムとミアが騒いで注目を集める。


 僕がその間に、クレアちゃんのいるボートに転移する。


 僕は集中した。


 ボートの位置からずれて乗れなかったら池に落ちる。


 そんな間抜けな事になるわけにはいかない。


 クレアちゃんとレオンハルトの事は気になるけど、今は考えない。


 転移する場所に集中する。

 

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