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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第三章 静かなる聖地、それは光

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結界を越えた先で

 僕、アイゼルは大聖堂の奥の関係者しか立ち入れない場所に向かう。


 教会にある、司祭や司教たちの魔力の形をまとめた記録があるはず——と言うのはあまりにも漠然としている。


 たさ、魔力の形は出身地などにより傾向はあるが人それぞれが違う。


 見分けられるものも少ないが、記録としては保存しておくだろう。


 教会の総本山の聖都ヴァティウスに無いはずがない。


 どこかに関係者のみが入れる資料室が必ずあるはずだ。


 今は内部のゴタゴタで教会内の統率が取れていないはずだから、何も手掛かりのない宝探しを始めるにはちょうどいい。


 もしも、思った以上に警備がしっかりしていたら、まだ仕切り直せる状態にはある。


 大聖堂の奥は見る限りは、警備が手薄だった。


 とは言え、魔力の警備網が張り巡らされているだろう。


 僕は目を瞑ると魔力の目で大聖堂の奥を見る。


 意外なことに魔力の網はほとんどなかった。


 奥に繋がる入り口さえ通ってしまえば後は自由に動き回れる。


 魔力の網を維持するにはかなりの魔力がいる。


 入り口さえ強力に防いでいれば後の防御がいらなと言うのは効率的ではある。


 大聖堂全体にも強力な結界が貼られていて、門番の守る門からしか入って来れない。


 二重の守りがあれば十分と言う考えなのだろう。


 実際に、余程の魔術師でなければここまで来れない。


 この世界で魔力を持っていれば、よほどの魔術師として名前を知られているのが普通で、奥に侵入者があれば大体の人物は絞れる。


 知られていないのは——隠された皇子である、僕だけだ……!


 僕が右手で空中に真っ直ぐに触れると、魔力の結界が可視化されて青色に光る。


 僕の横のダリルが息を呑む。


「これが結界だ。触れないようにここで待っていてくれ」


「了解です、アイゼル様……」


 ダリルが少し心配そうに言う。


 僕はそのまま右手を結界の外側まで押し出す。


 右手は、結界の青い色を乱さないように反対の方まで通る。


 ダリルは、目に見えている事象のおかしさに驚いている


 そのまま、透けるわけでも揺れるわけでもなく、結界は乱されることなく、僕だけが向こう側にいた。



 膨大な魔力を持ちながら隠れるしかなかった僕は、派手な攻撃魔法を実践することは難しかったが、結界を破ったり隠れる事は誰にも負けないくらい知り尽くしている。


「お気をつけて、アイゼル様」


 ダリルの声を背中に受けて僕は大聖堂の奥へ急いだ。


 ——僕が去った後のダリルに近づくものがいた……。


◆◇◆


 大聖堂の奥にはまばらにだが人がいた。


 夜の大聖堂で修道士や司祭が静かに仕事をしている。


 見つからないように進む。


 人の動きと流れが、その場所の働きと機能を教えてくれる。


 資料室には古く貴重な魔導書も置いてあるらしく、強い魔力が流れてくる。


 これだけ強い魔力を放つ魔導書なら狙うものもいるだろうが、二重の結界を張って安心したのか、全くの無防備の置いてあるようだ。


 人の動きと魔導書の魔力から、資料室はすぐに分かった。


 大量の本が並べられた資料室は本格的な大図書館のようで、教会の歴史と、秘密の多さに感心してしまう。


 資料室まで早くついただけに、その後の捜索が大変そうだった。


 制御した魔力で探すことには限界がある。


 探索の魔法を広く使えば探している魔力の形の資料は見つかるだろうが、魔力を大きく使えば僕が見つかる可能性も高まる。


 せっかくここまで来たのに、八方塞がりだった。


◆◇◆


「アイゼル様は大聖堂の奥に入られたか」


 俺、ダリルは、背後からレオンハルトに声をかけられる。


 ビクッと肩が震えた。


 流石に王都の中央門番隊の副隊長だけあって、気配が全くなかった。


 しかも、レオンハルトはルークと名乗っていたアイゼル様の正体を見破っている。


 さっき門を入ってすぐに出会って会話した内容から、そうだろうとは、俺もアイゼル様も確信しているが……今、ここで俺の声をかけてきた意味はなんだ?

『明日なら、お話出来ます。市場の宿に泊まっているので、何かあればお訪ね下さい」と伝えてあるのに。


「アイゼル様は魔力に相当の自信があるようだな」


 この大聖堂の結界の前でアイゼル様と名前を呼ぶことに抵抗を感じる。


 ここはアイゼル様にとっての敵地も同じだ。


 教会に正体がバレる危険にヒヤリとする。


 レオンハルトはアイゼル様の味方だと思ったが……。


「心配するな。教会は結界を信用しているから、結界に触れなければ話を聞かれたり監視されたりする事はない」


 レオンハルトの言葉に俺はホッとする。


「……それだけ、この結界が強力なんだが……。あっさり抜けていってしまったな……」


 レオンハルトの声に畏怖に近い驚きが混じる。


「流石は、皇帝陛下の弟だ……」


 アイゼル様を讃える様子に、俺は誇らしくなる。


 しかし、レオンハルトはその為に来たのだろうか?


「だが、アイゼル様がいくら凄いと言っても聖都ヴァティウスの歴史にそう簡単には勝てないだろう」


「……! まさか、レオンハルト殿はアイゼル様が失敗すると考えているのか……!?」


「……アイゼル様は俺の想像以上に慎重な方のようだから、教会の連中に見つかるような事はないだろう。ただ、目的のものを手に入れることは出来ないだろうな……」


「それは……」


 今回、必ず入手出来るとはアイゼル様も思っていないだろうが……。


 レオンハルトの言い方のには、次も入手出来ないと言うニュアンスが含まれている。


「まあ、俺が協力すれば、今にでも手に入れる事ができるだろう」


 そう言うとレオンハルトは結界の中に足を踏み入れた。


「教会の内部にこれで侵入者がいる事が伝わった。でも、俺は教会に王都から派遣されている騎士で、大聖堂の奥まで入る事が許可されている。一瞬だけ騒ぎになって、収まる事を何度か繰り返してる。教会側ももう慣れてしまってるんだよなぁ」


 レオンハルトが呆れて言う。


「俺が結界を通って騒ぎを起こす一瞬の間なら、大聖堂内部で少しだけ魔力を使っても気づかれない……」


 レオンハルトは言うが……。


 もう既にレオンハルトは結界をくぐっている。


 今の一瞬がアイゼル様に伝わったのならいいが……。


「大丈夫だ、ダリル。アイゼル様は俺が来ることを予想していたはずだ。トーマス司祭の所からは大聖堂の奥へ行ける。これだけの情報で俺がくるのかどうか、どれくらい信用できて有能なのか試したんだ……!」


 レオンハルトはアイゼル様に、その行動で信頼できることを示したのか。


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