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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第三章 静かなる聖地、それは光

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聖都で起きている、物語にない異変

「聖都ヴァティウスの内部はどうだったんだ」


 ギリアムがダリルに聞く。


 アイゼルも一番気にしていること。


「最初に気になったのはホムンクルスの多さです」


「え! 聖都ヴァティウスはホムンクルスが多いの!?」


 私は思わず声を上げてしまう。


「……すみません。クレア様……。ホムンクルスが多いというのは俺とコリンの主観です。巡礼宿や宿場町でホムンクルスを見かけなかったので、聖都のホムンクルスの数が多く感じたのです」


 ダリルが正直に答えてくれる。


 辺境では自然の中の魔力自体が少なく教会の力が弱い。


 ホムンクルス自体が珍しいんだった。


 辺境に住むダリルとコリンにとってはホムンクルスは珍しいものだから、多いと感じたからと言って、本当に多いとは限らない。


 私は田舎だったけど、辺境と違って自然の魔力がある場所の出身で教会にホムンクルスがいるところは見ている。


 それでも、二、三人で、聖都の事情とは違うと思う。


「聖都ヴァティウスでは、司祭一人に一人ホムンクルスがつくとも聞きますが、噂であって、実態とはかけ離れているかもしれませんね」


 ギリアムがいう。


 要するに、実態が掴めないってことか……。


 トーマス司祭に聞くとか、聖都ヴァティウスの内部事情に詳しい人に聞くのが、ホムンクルスの数の変化を知るのは一番いいのかな。


 今は、巡礼宿のホムンクルスが見当たらず人手が足りなかったて事実と、宿場町にもいなかったって事実があるだけ。


 聖都ヴァティウスでホムンクルスが足りないから、近隣から連れて行かれたんだと思っていたけど……。


 魔力が足りなくてホムンクルスが作れないって事情なのか、人手が必要でホムンクルスが足りなくなったのかって、事情によっても違ってくる。


 私は、魔力が足りなくなっていることを心配していたけど……。


 人手が必要な事情があったとしたら……?


 何のためなのか?


 アイゼルの命を狙う陰謀に関係するとしたら……。


 どちらも大変なことだ……。


 漠然と自分だけが感じるなんとなくの不安だった時より、みんなと話し合うほうが、不安の輪郭が見えてきて怖くなる。


「この辺りは全体的に魔力が減っている、ホムンクルスを近隣から集めないと聖都ヴァティウスでの数が維持出来なかったんだろう」


 アイゼルが口を開く。


「魔力量が減っているの……?」


「クレアちゃんには魔力のことはわからないか」


 なんか馬鹿にされてる……。


「俺もコリンも魔力の量の詳しいことはわかりませんよ」


 ダリルがムッとする私を遮るように言った。


「周囲の魔力量まで測れるのはよほどの魔術師や、マーシャルのように魔力そのものを生業にしてるものだけですよ」


 ギリアムも続ける。


 魔石の魔力で動くオートマタの技師のマーシャルは有力な司教の魔力の形を調べてくれたり、魔力への関心が高い。


 地域の魔力量くらい気を配っているだろう。


 アイゼルはそもそも魔力の量が桁違いの多いし……。


 この特殊なものたちしか周囲の魔力量を感知できない状況が、魔力量が減ってる事の裏付けだ。


 昔は大量に空気中を漂っていた魔力は年々減っている。


 誰もが魔法を使えた時代は教会が精霊への信仰と魔力を管理できた。


 でも、空気中の魔力が減るとだんだん人々から魔力が失われていった。


 魔石という魔力が込められた石で人が使う魔法の代用が出来るようになる。


 帝国が拡大していった理由で、教会と帝国の対立の確信だ。


 魔力を使える人は少なくなり、最近ではルークのような完全に魔力がない人も珍しくない。


 私は魔力はあるけど、魔法を使ったり魔力を感じたりって能力はないし。


「ギリアムとダリルは魔法は使えないの?」


 ミアが使えない事は知ってるけど。


「子供の頃は使っていたけど、もう何年も使っていませんね。俺たち程度の魔力なら、魔石を使った方が強力で安定しますから」


「普段から使い慣れていないと魔力を使う集中力が安定しないので、よほどの能力がないと使わなくなるんですよ。特に辺境は自然に調達できる魔力量が少ないですから」


 ダリルとギリアムが教えてくれる。


 辺境と同じく、私の田舎でも魔法を使うものは少なかった。


 ファンタジーの世界なのに、設定のわりに魔法が使えない。


 原作のヒロインで主人公のマーシャルがオートマタの技師ということで、魔力は使えるけど自分で魔法を使えないし。


 魔石で魔法を代用する、魔法が衰退していく世界として書かれてる。


 原作は一応はハッピーエンドで終わっているけど、魔力の減少していく世界な事には変わりないんだよね……。


 すぐに魔力がなくなるわけじゃないけど、少しだけ不穏な様子があった。


 それが、今、原作のメインストーリーが始まる二年前なのに、聖都ヴァティウスでは魔力が減っている?


 どういうことなんだろう……。


 原作の裏でも、書かれていないけど同じ現象があって解決して原作のストーリーに向かう。


 または、原作を離れた事象として起こっている……。


 原作と関係なく起こっている場合、もしかしたら転生者の私の所為かもしれない……。


 すでに、原作ヒーローの妻になっているし、ルークって存在を生んで原作ヒロインとくっつけてしまっているし……。


 『隠された皇子とメイドの愛』


 あの本が浮かぶ。

 

 舞台は——“鉱山の豊富な山岳地帯にある、辺境伯の別荘”


 これは原作には出てこない場所……。


 ただし、原作者がインタビューで言及した場所だった。


 作者は続編のことを匂わせていたけど……。


 そこから、思い出せない。


 原作をまだ完全に思い出せていないけど、前世の記憶が曖昧なのは、死が近づいているからだ。


 この続編がどうなったのか、ただの原作者の希望で終わっているのか、刊行されているのか。


 私は知る前に亡くなってる……。


「……捕まったフェルゼンの教会の三人組はどうしてる?」


 アイゼルがダリルに聞く。


「取り調べられてはいるみたいですが……。教会内に調べられては困るものがいるようで一筋縄ではいかないようです」


「今はその三人組に聖都ヴァティウスの注目が集まっているのか……。探し物をするのにはちょうど良さそうだな……」


 アイゼルは何か考えてる。


 私もまた違う事を深く考えている。


 考えても、聖都ヴァティウスの様子を見ない事にはなにも決められない。


 そう思った時に、アイゼルが言った。


「夜のうちに聖都ヴァティウスについたほうが警備は手薄になりそうだな……」


 そう言ってアイゼルが聖都ヴァティウスにいますぐ向かう事を決める。


 新しい情報がなければ、堂々めぐりだった。


 早く聖都ヴァティウスの様子をみて本当の事が知りたい——。

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