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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第三章 静かなる聖地、それは光

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色を取り戻した村で、彼女は何も知らない

 聖都ヴァティウスに行く前に立ち寄った小さな農村。


 フェルム村というらしい。


 私、クレアが原作を読んでいた時に、この村の名前は出たかしら?


 聖都ヴァティウスの近くの村として情報が出ていた気もするし、何も書かれていなかったような気がする。


 とにかく、原作では出番がない村だった。


「アイゼル、美味しそう!」


 そんな役割のない村にも、大通りには小さいけれどお店が並んでいた。


 巡礼者たちはあまり来ない村だから、村人ようのお菓子なんだろう。


 すごく素朴で可愛い。


「はちみつクッキーだって、蜂蜜酒もある!」


 子供向けかと思ったけど、お酒もあるってことは、大人もよく利用するのね。


 フードを被ったアイゼルが嫌そうな顔をしてる。


 私が酔っ払った時のことを未だ気にしているらしい。


 ミアも厳しいし、当分はお酒は飲ませて貰えないかもしれない。


 アイゼルは、二日前のお酒のことは覚えてるけど、昨日のことは覚えていないみたい。


 様子がおかしかったのに、今朝は戻っていたし、この村についてからはますます私にくっついてくる。


 ただでさえアイゼルは目立つのに行動が目立ちすぎる。


「こんな小さな村じゃ何やっても目立つんだから、コソコソしてる方が怪しまれる」


「そうかもしれないけど……」


 一理ある気がしてしまった。


「じゃあ、手をつないで歩きましょう、アイゼル。自然の中で手をつないでいると、子供の頃に会った貴族の館の庭園見たいね。この農村くらい広かった気がする」


 ふとアイゼルが悲しい顔をしている。


 まだ、アイゼルの様子は変だ……。


 私をみんなの為に守るとか言っていた……。


 アイゼルは私のことを今までもずっと守っていてくれたけど——誰のためだったの?


 アイゼルが結婚してから六年間も私を無視してたのは、私を守るためだった。


 でも、それが誰のためかっていうと、私のためだったの?


 私は守られるよりもアイゼルと一緒が良かった。


 じゃあ、私を守ることはアイゼルのためだったの?


 アイゼルだって私を好きで無視してたんじゃないし……。


 でも、私もアイゼルも望んでなかったけど、守られていたからどちらの為にもなって、今こうして幸せなのかもしれない。


 みんなの為に私を守るってどう言うことなのか?


 本当にそれがみんなの為なのかな……?


 もしかしたら、みんなにとっては私は邪魔な存在なのかも……。


 アイゼルがどういう意味でいってるのかわからないけど、誰のためでも、アイゼルがその為に動いて、私を守ってくれるなら、

それは、アイゼルがそうしたいってだけだと思う。


 私が、そうしたいみたいに——。


◆◇◆


 ミアとダリルが、私とアイゼルの方に向かってくる。


「ギリアムが宿に荷物を載せて運んでいます」


 ミアが報告してくれた。


 ダリルは何も言わない。


 無口な方だとは思うけど、他の従者がいなければ、他の従者と同じように話してアイゼルに報告している。


 何故かボーっとしてる。


 私を見つめる目が、ちょうど昨日のランタン屋さんでのアイゼルみたい……。


「ダリル……」

「ダリル! 農家に帰りに荷馬車に乗せるこの村の特産品を探しに行きますよ」


 私の言葉を遮ってミアがダリルを引っ張って行く。


「クレア様、申し訳ありません。私はダリルと用事を済ませてきます」


 私とアイゼルはミアに教えられた宿に向かう。


 村に一つだけの宿は私たち五人が泊まるとほぼ満員になる。


 一番大きな部屋に行く。


 ギリアムが私とアイゼルの荷物を置いてくれていた。


 残りの三人は、他の客がいないから一部屋づつ借りられた。


 ギリアムは私を見ると少しボーッとした。


 さっきのダリルと、昨日のアイゼルに似た症状だ。


「どうかしたの?」


「いえ……」


 ギリアムはアイゼルをチラッと見た。


 アイゼルは特に反応していないけど……。


「先ほどダリルと一緒に、ミアからクレア様と出会った時の状況を聞いたのです」


「そうなの? ミアは一人で街を歩いているところを、私が声をかけたのよ。小さな村から、私の住んでいた地方の街まで歩いて来たと言っていたけど……。ミアの村もこんな場所なのかしら?」


 ミアは懐かしくなって話題にしたのね。


 ミアは私に付き合って、六年間も辺境にいたのよね……。


 そのまえは実家にも帰っていたから、村に家族がいると思うんだけど……。


 今の私とアイゼルの件が片付いて、辺境に戻る時は、ミアに里帰りをさせないと……。


「ミアは白いモヤの中を歩いていたら、クレア様に手を引かれて光があふれたと言っています。そこから世界に色が着いて見え始めたと」


「なんだって!?」


 ギリアムの言葉にアイゼルが驚いている。


「知ってるの、アイゼル? 白いモヤが見える病気なんてあるの……?」

 

「……いや。……今の話だと、クレアちゃんが、白いモヤの正体を知っているんじゃないのか……?」


「私は知らないわ。この間、辺境の城砦でミアから聞いたばかりだもの。白いモヤってなんなのかしら? そういう珍しい病気の症状があるのかもって思ったけど……アイゼルも知らないのね」


 アイゼルは顎に手を当てて、横を向いて少し考えた。


「病気なのか……似た状態になる人なら知っているけど……」


 アイゼルがギリアムを見ている。


 今度は何か二人に共通のことがらができたような気がする。


「ミアはそのことがあったから『クレア様は特別』と思い続けてたようですね」


 ギリアムとミアが私が特別だった言い出して、私の自信のなさを助けてくれたんだった。


 今、アイゼルと一緒にいて楽しいと思えるの二人のおかげかしれない。


 二人が私を信じてくれなかったら、ずっと自信がないままアイゼルの横にいられなかったかも。


 アイゼルを取り巻く陰謀を自分の手で変えて、アイゼルと幸せになりたいって思えたのは二人のおかげだ……。


 ミアの故郷の村の話だと思ったけど、私の話でもあった。


 コンコン


 ノックの音と共に私が戦う相手が見えて来た。


 ミアとダリルが特産品の買い付けを済ませて戻ってきた。


 ミアは、私を自分の体験談で“特別な人”にしてしまっていたよう。


 でも、ダリルからは、さっきまでのボーッとした様子は消えている。


 聖都ヴァティウスに行ったダリルはどんな報告をしてくれるのか……。


 この物語の黒幕はルシアン。


 だけど、アイゼルを取り巻く陰謀の一番の核心部分は教会が握っている。


 教会の総本山が聖都ヴァティウスで、そこでは何が起こっているのか……?


 緊張が身体を駆け巡った。


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