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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第三章 静かなる聖地、それは光

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色を取り戻した夜

 店の中に入ろうとしてアイゼルに抱きしめられる。


 感情が抑えきれないようにキスされて、強くもみくちゃにされる。


「アイゼル!?」


 やっと離してもらえた。


「ランタンのお店、見ていい?」


 私が聞くとアイゼルは笑って答える。


「いいよ」


 少しだけ、寂しそうにも見えた。


 なんなんだろう?


 お店の中は外よりも可愛かった。


 ランタンだけでなく小さなアクセサリーも売っていた。


 装飾部分に魔石が入っていて魔力で光るようになっている。


 夜道を照らすほどではないけど、あれば便利かもしれない。


 何より可愛い。


 私はペンダントを見ていた。


 色々なデザインのものがあるけど、デザインが同じでも微妙に違っている。


 手作りなのかな。


 小さなランタン型のペンダントトップが可愛いと思う。


 私は同じデザインのものを見比べる。


「アイゼルはどれがいいと思う?」


 聞くとアイゼルがボーっとしている。


 やっぱり何かおかしい。


 この店に入る直前に何かあった?


 私は適当に選んで、買うとすぐにネックレスをつけた。


「彼氏に買って貰えなかったのか」


 と店主に言われる。


 いつものアイゼルなら買ってつけてくれたと思うのに。


 ネックレスのランタンの中の魔石が光る。


「魔力なしでもなければ自分で光からせるか消すか思うだけで変えられる。魔石は魔力を込めたら何度でも使えるよ」


 店主が教えてくれた。


 ぼーっとしてるアイゼルを引っ張って店の外に連れ出す。


「クレアちゃん、ペンダントが光ってる。買ったのか……。ごめん、ぼーっとしていて」


 そういいながも心ここに在らずって感じだ。


 私はアイゼルのマントの中に自分から入ってギュッと腕にしがみついた。


 何があったのかわからないけど、このボーッとしたアイゼルを連れて、ちゃんと宿に帰らなくちゃ!


 ただ、すっかりアイゼルに頼りっきていたから帰り道が怪しい。


 大通りにでれば道に沿って歩くだけだけど。


 裏通りにはどうやって入って来たのか?


 吟遊詩人の歌声が聞こえる酒場の近くだった気がするけど……。


 その吟遊詩人のいる酒場の光に目を向けると、ふいに影が横切った。


 仮面をつけた男の影が……。


「エド……」


 私が口に出した時、アイゼルの身体が動いた。


「エドだって……」


 アイゼルは少しだけ周囲を見回した。


 いつものアイゼルに戻ったようだけど。


「……逃げられたか……」


 アイゼルが私の腰を抱いて曲がったところは、仮面の男が消えた通りだった。


 進むと大通りにでて、宿が見えてくる。


 エドは私が困っていたから、道を教えてくれたの?


 私はアイゼルにしがみつく。


「エドは……」


 なんて言おうとしたのか、言葉が出てこない。


「監視していて当然だったんだな……」


 アイゼルが独り言のように言った。


◆◇◆


 宿の部屋に戻ると食事が用意されていた。


 ミアとギリアムが宿の食堂兼酒場から持ってきたのだ。


 二人に休んで欲しくてアイゼルと出かけたのに、私達がいなければかえって仕事をしてしまうようだ。


 私たちは、休ませる為に監視してなければいけなかったみたい。


 でも……。


「私は今夜はずっとアイゼルといたいの」


 私の言葉にミアが食事の後にギリアムを連れてすぐに隣の部屋に行く。


「クレアちゃん、ミアとギリアムが二人きりになるのを心配してたのに……」


「アイゼルは私と一緒がいいって言ってたでしょう?」


 アイゼルは少し考える。


「そうだね、今もずっと一緒にいたいよ」


 なんだか歯切れが悪い……。


「あのランタン屋さんでなにかあったの?」


「……」


 アイゼルは沈黙する。


 やっぱり、あのランタン屋さんで何かあったんだ……。


 アイゼル何ゆっくり口を開く。


「ランタンの光よりクレアちゃんの方が輝いて見えて、僕が独占してちゃいけないと思ったんだよ」


「何それ」


「僕の為じゃなくて、みんなのために君を守らないと」


 それは……。


「私のことを嫌いになったのと同じよ」


 アイゼルが私を抱き締める。


「まだ、僕にもわからないことばかりなんだ。これは、僕の気持ちとは別だよ。今、クレアちゃんがギリアムと一緒がいいって言っても絶対に許さないし」


「ギリアムと一緒がいい!」


 私は言ってみた。


 冗談だってわかってるアイゼル派ただ笑うだけだった。


「私は、本当に怒ってるのに」


 抗議するとますますアイゼルに抱きしめられるだけだった。


 ガチャガチャ


 ランタンのペンダントが、アイゼルの服の下のものと合わさって音がする。


 アイゼルもペンダントをしてるは知っていたけど……。


「アイゼル……。辺境の城砦ではペンダントなんてしてなかったでしょう?」


「ああ、これか」


 アイゼルがペンダントを取るだす。


 それは皇帝がターニアに持たせた、自分の子の証になるペンダント。


 皇族以外が触ると熱くて持ち運べない。


 街一つ破壊できるほどの魔力の塊の魔石がついている。


「だ、ダメじゃない! ターニアの出自を示す証を持ってきちゃ!」


 私は慌てるけど、アイゼルは落ち着いてる。


「ターニアは城砦にいる間は出自を知ってる者がいるから大丈夫だ。むしろ、出自を隠せた方が安全だ」


「そ、そうかもしれないけど……」


「僕とターニア以外は触れないんだから、僕が持ち歩くのが一番いい」


 理屈としてはそうだけど……。


 街一つ破壊できる魔石のペンダント……。


「アイゼルは使えるのよね」


 魔石の熱には皇族の男女は耐えられて持てても、使えるのは皇族の男性のみなんだとか……。


「たぶん。使うことはないだろうけど」


「!?」


 怖いことを言う。


 こんな怖いことができるアイゼルが、私に気後れして、守るなんて言っちゃうのはありえない。


 一体どんな勘違いをしているんだろう?


◆◇◆


 私、ギリアムはミアと隣の部屋にいる。

 

 ミアは部屋に入ってすぐに眠ってしまう。


 クレア様のために起きていたが、長旅で疲れたんだろう。


 アイゼル様の様子がおかしいことにはすぐ気づいた。


 だからクレア様が一緒にいてくれることが今は一番いいことなのだろう。


 長い間のすれ違いがあったのに二人はそれを感じさせないほど仲がいい。


 ミアも察して、すぐにこっちの部屋に来た。


 ただ、少し気になることも言っていた。


 この部屋に入ってすぐだ。


『やっぱり、クレア様は特別な人です』


 前に私とミアで、クレア様を慰めるときに使っていた言葉だ。


 何かがおかしい。


 私がクレア様を特別だと感じる理由とは別に、彼女にはクレア様が特別だと感じる理由があった。


 ……。


 ミアは、アイゼル様に何があったのかを知っているのか?


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