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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第三章 静かなる聖地、それは光

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人形の名前はアリス

「クレア様、私とギリアムが教会に行って見て来ますよ。アイゼル様だけじゃなくクレア様だって目立つんですからね」


 クレアの侍女のミアがそう言って、強引にギリアムをつれていってしまう。


 僕、アイゼルはとりあえずホッとする。


 ミアはクレアと一緒にずっといただけ扱い方をよく知っているな……。


 クレアは置いて行かれて少し不満そうだ。


「ミアはギリアムの扱いも知っているみたいだな」


 クレアがお菓子を持ってきてくれたギリアムが好きだったと言った後に、


『ギリアム、クレア様が言っているのはお菓子が好きだったってことですからね』


 とミアがすかさず言っていた。


 ギリアムが勘違いするとは思わないが、ハッキリと言ってくれて僕の胸がスッとした。


「……」


 クレアが僕を見ている。


「アイゼルは、ミアが好きなの?」


「は?」


 なんでこの状況で僕が疑われなきゃいけないんだ。


 ぷくっと頬を膨らませて横を向いて怒ったポーズを取っているクレア。


 クレアは自分が教会に行けなかったからって、僕に八つ当たりして遊んでる。


 ……仕方ないから付き合うしかないな。


 僕はクレアを腕に抱き寄せる。


「ミアの事はよく知らないけど、クレアちゃんを安心させてくれるのはミアなんだろう。だから、ミアの事は好きだよ」


「うーん。アイゼルはメイド好きだもんね!」


 ……。


 それは『隠された皇子とメイドの愛』のことを言ってるんだろう。


 僕の境遇がモデルになった本なだけで、僕自身のことじゃない。


「共通点があるってさっき言ってたでしょう? 辺境伯の別荘がある場所が舞台だって言う以外にはどんな事が似てるの?」


 クレアが真剣な表情で聞いてくる。


 クレアがこの本の事を気にしているのは知っていたけど……。


 この共通点を言うのは恥ずかしい気がする。


「別に対したことじゃないよ、誰でも当てはまる事だ……」


「ふーん……」


 歯切れが悪い答えになったけど、クレアはそれ以上は聞いてこなかった。


「でも、アイゼルがミアを好きで良かった。私がギリアムを好きな気持ちもわかったでしょう?」


 また、ここに戻ってくるのか……。


 クレアが僕よりギリアムを好きになることがないのは分かってるし、ギリアムがクレアを好きでも別に嫉妬する事でもない。


 それでも独占欲を隠せなくなる。


 これが、『隠された皇子とメイドいの愛』の皇子と僕の共通点だ……。


 多分誰でもある事だろう。


「ミアは私にとってお姉ちゃんみたいなものだし、アイゼルにとってもギリアムはお兄ちゃんでしょう?」


 ギリアムはお兄ちゃんみたいなもの……。


 僕にとっては、本当の兄より近い存在だ。


 実の兄の皇帝とは、僕が隠される前から別の場所に住んでいたし、たまに会うくらいだった。


 それでも、兄に会えて言葉を交わせたら嬉しかった。


 ギリアムとは全然違う。


 ギリアムは俺のために選ばれた従者だ。


 絶対に裏切らない。


 だから、クレアを巡って争うことにはならない。


 それだけに、クレアちゃんの無邪気さがギリアムを追い込んでいるような気がする……。


「僕は、クレアちゃんじゃなくて、ギリアムを心配してたのかもな……」


「なんで!?」


◆◇◆


 アイゼルが私よりギリアムを心配してるって意味が分からない!


 ギリアムがライバルだったの?


 それとも、私にお兄ちゃんって呼ばれて可哀想って意味かしら?


 意味はわからないけど、まあいいか。


 アイゼルの中で解決したなら、重要な事じゃないもの。


 重要なのは出会ってしまった、ルシアンの動向かもしれない……。


 私を襲った犯人を明らかにするための、聖都ヴァティウス行きも重要だと思う。


 でも、『隠された皇子とメイドいの愛』が一番気になる事かもしれない。


 何が気になってるのかもよく分かってないけど、胸騒ぎがする。


 アイゼルが感じたって言う共通点は気のなるけど、この胸騒ぎを何がなんだかわからないままに大きくするだけな気がした。


 ミアとギリアムが調べてくるホムンクルスのことも大事だし……。


 考えているとミアとギリアムが戻ってきた。


 思ったよりも早い。


「クレア様、教会の様子を見てきましたよ」


「どうだったの?!」


「ホムンクルスはいませんでした」


 やっぱり……。


「元々いなかったんじゃないのか?」


 アイゼルが聞く。


「教会関係者には騒がれたらまずいので聞きませんでしたが、宿の人はホムンクルスがいた事は覚えていました。いつの間にかいなくなってたそうです」


 そこまで調べるのはさすがで、私が行くより結果的に良かったのかも。


 アイゼルは報告になにか考えている。


 私も考えがやっぱりまとまらない。


 この世界の魔力の構造が思ったよりも早く変わっている?


 一番、嫌な考えが浮かんでるけど、それはdぷする事もできないから、考えか羅除外する……。


◆◇◆


 私たちは明日出発することにして宿でゆっくり休むことにした。


 アイゼルと私は昨日も十分に休んだから、疲れていない。


 私は二日酔いで今日も休んでいたし、身体は本当に十分に元気だった。


 昨日、宿場町についたばかりのミアとギリアムは、今日、休んで貰わないといけなかったのに、教会にまで行かせてしまった。


 アイゼルはギリアムと隣の部屋に戻って、ここにはミアが眠っている。


 私はミアを起こさないように自分の荷物を片付ける。

 

 巡礼宿で女の子から貰った黄色い服の人形が出てくる。


「なんですか? その人形は」


 ミアに声を掛けられる。


 眠っていなかったらしい。


「巡礼宿で女の子にもらったの。辺境の城砦に帰ったらターニアに遊んでもらおうかな」


 別れてからまだ二週間もたってないけど、ずいぶん長く離れている気がする。


 ……母親のアリシアはもっと長く離れているし、もっと心配しているだろう。


 今の状況も分からないし、親子の再会がいつになるのか、気が遠くなった。


「人形に名前はつけたんですか? クレア様」


 ミアが聞く。


「人形をくれた女の子にも聞かれたわね」


 だから、私は咄嗟にあの名前をつけてしまった。


 一番身近だった、あの名前——。


「この子の名前は、アリスっていうのよ」


 ミアが笑う。


「お母様のお名前を人形につけたんですね、クレア様」


 え……。


 私の身体が一瞬止まる。


 忘れていたけど、お母様はアリスという名前だった……。


 私は自分が転生者だと思い出してから、一度もお母様の名前を考えなかった。


 だから、気付かなかったんだ……。


 ——アリスは、私の転生前の名前——。

 

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