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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第四章 誰も知らない物語

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誰にも言えない計画

 そこには今は誰もいなかった。


 かつてあった小さな村は、大魔導師の死とともに人の住めない場所に変わった。


 数百年の時を生きる大魔道士の元で、村人たちは短い生と死を繰り返していた。


 ——最後に生まれたのが私だった。


  十歳の時に、大魔導師が死ぬと村は少しづつ荒れて行った。


 不気味なガスが吹き出して、吸い込んだ人が亡くなった。


 魔物が村に侵入するようになり、最初は追い払えていたものの、徐々に強い魔物が現れ出した。


 頼りにしていた一番強い若者が魔物の手に倒れた。


 命に別条はなかったが、ここで魔物に怯えながら暮らすのは不可能だと全員が悟った。


 ——ルシアンがいてくれたら。


 大人たちの口から名前が上がる。


 昔この村に住んでいた大魔導師の弟子に名前だった。


 ずっと前に出て行ってしまって、一度も帰って来ない。


 もうこの村の住人じゃない人物だ。


 期待するだけ無駄だと思った。


 “ルシアンなら必ず取りに戻りと思ったんだが”


 だが、彼は戻らなかった。


 山の奥底にある村から別の街へは、困難な場所が多く、最低限の荷物しか持ち出せない。


 “ルシアンなら必ず戻しにくる”品物はそのまま村に残された。


 私はそれが何なのか興味が湧いた。


 けれど、私もそれから村ににもどる事はなかっt。


◆◇◆


 私、クレアは大聖堂の中を歩いていた。


 アイゼルが皇弟アレイウスになりすまして、湖に浮かぶ聖地の魔力枯渇の問題を一時的に解決した。


 それによって、ここ聖都ヴァティウスの大司教を味方につける事が出来たみたい。

 教会内に敵はいるけれど、教会全体が敵だという構図は終わった。


 原作を知っていると、聖都ヴァティウスを味方につけてしまうのはやりすぎだけど、教会内の一部にでも敵が残っているなら、原作とまだ同じだった。



 昨日は、大聖堂に泊まって、アイゼルと夕方から夜にかけての景色を眺めた。


 湖の上に浮かぶ聖地の光が綺麗で、夜に漕ぎ出しているボートの明かりも幻想的だった。


 綺麗で幸せだったけど、絶対にアイゼルからは逃れられない事を再確認した。


 隣の部屋から転移魔法で一瞬で私の部屋に来るし、やろうと思えば、湖に浮かぶボートの一つに転移することもできる。


 どうやって逃げたらいいんだろう?


 アイゼルに抱きついて逃げる方法を考えていたなんて、アイゼルが知ったら怒りそうだ。


 怒って当然なんだけど、アイゼルが心を読む魔法を使えなくて良かったわ。


 ふふっと、私がそんなことを考えて笑っていたのに、アイゼルは、


「クレアちゃんが幸せそうだと嬉しい」


 って言って、もっと強く抱きしめてキスした。


 なんて幸せな時間なんだろうと思った。


 教会が味方になって、赤ちゃんが出来る事をしたいって言ったアイゼルに、私はまだダメって断った。


 抱きしめたとキスされたりするのに、いつもと違うアイゼルの欲望を感じてドキドキしてしまう。


 ここで、アイゼルから離れるのなら、してもいい気がしたけど、したら、もっと離れられなくなりそうで迷った。


 多分、今夜もこの大聖堂に泊まって、明日には聖都ヴァティウスを出発すると思う。

 その時までに、アイゼルからの逃げる方法を考える。


 そして、最後の夜にどうするかも考える——。


 私は、考えごとをしながら大聖堂を歩き回った。


 大聖堂の中は、巡礼者が祈りを捧げて、観光客が私のように歩きまわっていた。


 歩き回っても、大聖堂の中は安全で、探している危険な場所はなかった。


 私は、アイゼルから逃げる為に、私を監視しているという、仮面の男エドに協力して貰おうと考えている。


 でも、本当にエドが私を監視しているのかどうかはわからない。


 一人でアイゼルから逃げられたとしても、その先で危険な目にあっても誰も助けてくれなかったら困る。


 だから、ちゃんとエドが私を監視しているかは確かめないと。


 そして、監視しているのが分かったら、アイゼルから逃げる方法を一緒に考えて欲しいな。


 ついこの間、ちょっとだけ会っただけの人なのに、私はエドに親しみを感じている。


 私に冷たかったお母様の隠された面を教えてくれた人だから。


 教えてくれる必要なんてないのに、私が思い詰めているのを知って教えてくれたんだもの。


 絶対に悪い人じゃない。


 だから、また私が危険に晒されたら、助けに来てくれると思う。


 監視しているなら、すぐに駆けつけてくれる。


 大聖堂の裏に来た。


 柵もなにもない、湖から崖のように切り立っている、聖都ヴァティウスの島の端っこ。


 私はゴクリと唾を飲み込む。


 ここから飛び降りたら、とっても危険。


 ……さすがに、飛び降りるつもりはない。


 崖の岩を伝って降りていくと洞窟があって、その中に珍しい植物がたくさん生息しているらしい。


 危ないから、あまり人は寄り付かないけど、ここも立派な観光地らしい。


 心配してついてきたエドを、洞窟の先の行き止まりまで誘い出せば、話ができると思う。


 崖に、わずかにヒトが通ったであろう跡が見える。


 わたしはそこに足をかけた——。


「クレア様!」


 腕を掴まれた。


「何をしているんですか! お一人で、こんな場所に行くなど危険すぎます!」


 ギリアムだった。


「……いつからついて来ていたの?」


「クレア様が大聖堂をうろうろされている間中、ずっとです」


 気づかなかったわ。


「変わった植物を見てみたいと思ったの。ダメなの?」


「この場所は1人では危険です。俺が一緒に行きます」


 危険な目に遭いたいのに……。


 引っ込みがつかないので洞窟に降りる。


 先にギリアムが崖の岩を掴んで降りて、私はギリアムの腕の中に包まれるように降りる。


 足場は思った以上に広くて登りやすいし、手もちょうどいい場所に置き場所があるから、思った以上の難なく降りられた。


 ただ、ギリアムが崖に吹き付ける強い風が私にかかるのを避けてくれたから、だいぶ楽だったと思う。


 洞窟派それほど広くないけど、色々な植物があるようだった。


 ギリアムが無言で私の後を着いてきてくれるけど、特に興味がないから手持ちぶさたで奥まで進む。


「見たい植物は見れましたか?」


 ギリアムに聞かれたけど、特に見たい植物なんてなかった。


「あ、光るこけはきれいだったわね」


「そうですね」


 ギリアムが笑う。


 無難に会話出来て、裏があるなんて気づかれてないよね。


◆◇◆


 僕、アイゼルは大聖堂の資料室にいた。


 何か、手掛かりになるもの手当たり次第読んだ。


 特に気になるものはなかった。


 その時——


「アレイウス様、教皇がお呼びです」


 聞き間違いかと思った。


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