「せっかくだし、始める前に何か報酬でも決めないか?」
比嘉楽斗は、楽しそうに笑いながら梓を見た。
「せっかくだし、始める前に何か報酬でも決めないか?」
「報酬?」
梓は興味を引かれたように首を傾げた。
「ああ。勝負するからには、何か目標があったほうが面白いだろ? 勝ったほうの願いを、負けたほうが一つ聞くってのはどうだ?」
「へぇ、面白そうね」
梓は少し考えてから、楽しげに笑った。
「いいわよ。それなら、お互いに本気で戦う理由にもなるものね」
「よし、決まりだな! じゃあ、俺が勝ったら梓の願いを一つ聞いてもらう。反対に、梓が勝ったら俺が願いを聞く。それでいいか?」
「ええ、異論はないわ」
二人は、互いに納得した様子で頷いた。
それを見ていた乙羽が、興味深そうに口を挟む。
「んぅ~? どんなお願いをするのぉ?」
「それは勝ってからのお楽しみよ」
梓はそう答え、改めて楽斗へと視線を向けた。
「ところで、楽斗は今、学校に通っているの?」
「ん? 沖縄校の二年だけど?」
あっさりと返ってきた答えに、梓は小さく頷いた。
「なるほど。それなら、ちょうどいいわね」
「おっ、もう願いが決まったのか?」
「ええ。私が全国大会で参加する競技は、PT戦のバトルロイヤルなの」
「PT戦のバトルロイヤルか。複数のパーティーで戦う競技だな」
「そう。せっかく全国大会に出るんだから、強い相手と戦いたいと思っているのよ」
梓は楽しそうに続けた。
「私だけじゃなくて、ティンカーベルのみんなも参加する予定なの。だから、できれば本気で戦い合える相手がたくさんいてほしいのよね」
「なるほどな。強敵がいたほうが大会も盛り上がるってことか」
「そういうこと。そこで、私が勝ったらお願いしたいことがあるの」
梓は、楽斗をまっすぐに見つめた。
「沖縄校にいる強い生徒を、私たちに紹介してほしいのよ。全国大会でティンカーベルと競い合えるような、実力のあるパーティーをね」
「俺の学校の生徒を?」
「ええ。もちろん、誰でもいいというわけじゃないわ。実力があって、全国大会で本気の勝負を楽しめるような相手がいいの」
梓の表情には、純粋な期待が浮かんでいた。
自分たちの強さを見せつけたいわけではない。簡単に勝てる相手ばかりでは、せっかくの全国大会も面白くない。
どうせ参加するのなら、全力を尽くさなければ勝てないような相手と戦いたかった。
「なるほどなぁ……」
楽斗は腕を組み、少し考え込んだ。
「沖縄校にも、実力のある連中はいるぜ。全員を俺が把握しているわけじゃないが、先生たちに相談すれば候補を挙げることはできると思う」
「本当? それなら助かるわ!」
梓は嬉しそうに頷いた。
「ただし、俺が勝ったら俺の願いも聞いてもらうからな?」
「もちろんよ。約束だもの」
「よし! それなら、お互い遠慮なしでいこうぜ!」
楽斗は拳を握り、気合いを入れた。
梓も楽しそうに笑い、構えを整える。
「ええ。後悔しないように、全力で来なさい!」
「言ったな! それじゃあ、始めるぞ!」
こうして、二人の間で勝負の報酬が決まった。
勝者が願いを一つ叶えてもらう。
そして梓が勝った場合には、沖縄校の強豪たちを紹介してもらうことになる。
全国大会をより面白くするための、ちょっとした約束。
その願いを実現するためにも、まずは目の前の勝負に勝たなければならない。
周囲で見守っていた乙羽たちも、これから始まる戦いに期待を寄せていた。




