↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殴り賢者はバレている  作者: 七風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
140/185

「うん……! ありがとう、乙羽」

 午後19時。


 ティンカーベルの公式チャンネルで、配信が始まった。


 待機画面が切り替わり、見慣れた会議室と3人の姿が映し出される。


「みんなぁ、こんばんはぁ!」


 乙羽がいつもの調子で手を振った。


「こんばんは! 今日も来てくれてありがとう!」


 琴が笑顔で挨拶し、柳も元気よく声を上げる。


「おっす! みんな、今日は集まってくれてありがとな!」


 その瞬間、コメント欄が一気に流れ始めた。


『きたああああ!』


『こんばんはー!』


『重大発表って何!?』


『気になりすぎて仕事が手につかなかったぞ!』


『今日は絶対に最後まで見る!』


『グッズか!? 新しい企画か!?』


『まさかの重大発表で緊張してきたw』


 配信開始直後から、視聴者たちの関心は告知された重大発表に集中していた。


 普段の配信なら、まずは挨拶を交わし、今日の予定やダンジョン攻略について話すところだ。


 しかし、今日は違う。


 視聴者たちは、3人がいつ本題を切り出すのかと待ち構えていた。


「ふふっ。みんな、重大発表が気になっているみたいだね」


 琴がコメント欄を確認しながら笑った。


「そりゃ気になるだろ! あんな告知をしておいて、何もなかったら怒られるぞ!」


 柳が冗談めかして言う。


「んぅー? 何もないわけじゃないよぉ?」


 乙羽が首を傾げた。


『何かあるのは確定!』


『乙羽ちゃん、今すぐ教えて!』


『焦らさないでくれー!』


『重大発表って言うくらいだから相当な話なんだろうな』


 コメント欄の流れが、さらに速くなる。


 乙羽は楽しそうに画面を眺めていたが、琴がそっと話を進めた。


「それじゃあ、そろそろ本題に入ろうか」


「おう!」


「はぁい」


 3人が揃ってカメラを見る。


 琴が少し姿勢を正した。


「今日は、ティンカーベルの今後の活動について、大切なお知らせがあります」


『きた!』


『ついに来たぞ!』


『正座した』


『重大発表タイム!』


「実はね、今日からティンカーベルは4人で活動することになりました」


「……え?」


 コメント欄の流れが、一瞬だけ止まったように見えた。


 次の瞬間、画面いっぱいに驚きの声が流れ始める。


『4人!?』


『ええええええ!?』


『新メンバー加入ってこと!?』


『待って、3人組じゃなくなるの!?』


『誰が入るんだ!?』


『まさか本当に新メンバーだったとは!』


『重大発表ってそういうことか!』


 柳が満足そうに頷いた。


「そう! 今日は新しい仲間を紹介するぜ!」


「それじゃあ、入ってきてください」


 琴が会議室の入口へ視線を向ける。


 扉が開いた。


 そこから姿を現したのは、半分ずつの黒 銀髪の少女だった。


「み、みんな、こんばんは!」


 少し緊張した様子で手を振る。


 その顔を見た視聴者たちが、一斉に反応した。


『えええええ!?』


『霧ヶ峰梓!?』


『Sランク冒険者の梓ちゃんじゃん!』


『昨日の配信の人だ!!』


『あの6時間ダンジョン攻略してた梓ちゃん!?』


『まさかティンカーベルに入るのか!?』


『本当に新メンバーだったあああ!』


 梓はコメント欄の反応を見て、思わず目を丸くした。


「わっ……すごい。こんなに驚いてもらえるなんて……」


「そりゃ驚くだろ!」


 柳が笑う。


「告知には重大発表としか書いてなかったんだからな!」


「それはそうだけど……」


 梓は少し照れたように笑った。


 琴が改めてカメラへ向き直る。


「紹介するね。こちらが、新しくティンカーベルに加わった霧ヶ峰梓さんです」


「改めまして、霧ヶ峰梓です。これからティンカーベルの一員として活動することになりました。みんな、よろしくね!」


 梓はしっかりと頭を下げた。


 すると、コメント欄に祝福の言葉が次々と流れ始める。


『梓ちゃん、加入おめでとう!』


『ようこそティンカーベルへ!』


『4人目きたあああ!』


『昨日の配信を見てから、もしかしてと思ってた!』


『これから4人での攻略が見られるのか!』


『Sランク冒険者が加入するの、すごすぎるだろ!』


『ティンカーベル、さらに豪華になったな!』


『梓ちゃんの拳でダンジョン攻略する姿、また見たい!』


 そして、スーパーチャットの通知音が鳴った。


『みかん箱:梓ちゃん、加入おめでとうございます!(1,000円)』


『夜ふかし猫:新メンバー加入おめでとう! これからの活動が楽しみです!(3,000円)』


『冒険者見習い:梓さん、ようこそティンカーベルへ!(5,000円)』


『青いペンギン:4人でのダンジョン攻略、期待してます!(2,000円)』


『しろくま:梓ちゃん加入おめでとう! ずっと応援します!(10,000円)』


『ダンジョン探索部:新体制のティンカーベル、始動おめでとう!(10,000円)』


 通知が次々と重なり、画面の端がスーパーチャットの表示で埋まっていく。


「わぁ……! みんな、ありがとう!」


 梓は驚きながらも、丁寧に頭を下げた。


「こんなに歓迎してもらえるなんて思っていなかったわ。本当にありがとう!」


「梓ちゃん、よかったねぇ」


 乙羽が嬉しそうに笑う。


「うん……! ありがとう、乙羽」


 梓は乙羽のほうを見て、少しだけ表情を和らげた。


 昨日、自分のチャンネルで配信をしたときも、たくさんの視聴者が見守ってくれていた。


 けれど、今日は違う。


 自分がずっと憧れ、並び立ちたいと思っていたティンカーベルの一員として、こうして視聴者の前に立っている。


 その事実が、少しずつ実感になってきていた。


     ◇


「それで、どうして梓が加入することになったのか、少しお話ししておこうか」


 琴がそう切り出すと、コメント欄の流れがまた変わった。


『理由も気になる!』


『昨日の配信と関係あるのかな?』


『前から仲がよかったの?』


『どういう経緯で加入が決まったんだろう』


「梓ちゃんは、前から私たちの活動に興味を持ってくれていたんだよねぇ」


 乙羽が説明する。


「うん。みんなの配信を見て、いつか一緒に活動できたらいいなって思っていたの」


 梓は自分の言葉で続けた。


「でも、ただ一緒に活動したいと言うだけじゃ、納得できなかった。私はSランク冒険者だけど、ティンカーベルのみんながどれだけ強いのかも知っていたから」


 少しだけ、言葉を選ぶように間を置く。


「だから、自分なりに力を磨いて、みんなと並んで活動できるようになりたいと思ったのよ」


『梓ちゃん、かっこいい!』


『昨日の配信、そういう思いがあったんだな』


『6時間も攻略してたの、本当にすごかった』


『自分の力で認めてもらおうとしたんだね』


『これから一緒に強くなっていく姿も見たい!』


 梓はコメントを見つめ、小さく笑った。


「昨日の配信も、見てくれた人がたくさんいたみたいね。ありがとう。あれは、私なりに今できることを見てもらいたかったの」


「すごかったよぉ。梓ちゃん、ずっと頑張ってたもんねぇ」


 乙羽が頷く。


「うん。だから、私たちも一緒に活動したいと思ったんだよ」


 琴が穏やかに続けた。


「ティンカーベルは、ただ強い人を集めたいわけじゃない。お互いに信頼して、一緒に活動できる仲間でありたいと思っているんだ」


「そうだぜ! それに、梓は面白いしな!」


「ちょっと、柳! そこはもっといい言い方があるでしょう!?」


「いや、褒めてるって!」


「本当に?」


「本当だって!」


 2人のやり取りに、乙羽がくすくすと笑う。


『もう仲良しで草』


『柳ちゃん、褒め方が雑w』


『この4人の会話、絶対面白くなる』


『新体制の雑談配信も期待!』


 梓も、とうとう我慢できずに笑い出した。


「もう……。でも、そうね。これからは一緒に活動する仲間なんだから、私も遠慮せずにやらせてもらうわ!」


「うん。よろしくねぇ、梓ちゃん」


「こちらこそ、よろしく!」


 4人が揃って笑顔を見せる。


 その光景を見た視聴者たちから、さらに祝福のコメントが流れた。


『改めて加入おめでとう!』


『4人のティンカーベルを応援するぞ!』


『これからの活動が楽しみすぎる!』


『次のダンジョン配信は絶対見る!』


     ◇


 加入の発表がひと段落すると、琴が次の話題を切り出した。


「それから、もうひとつお知らせがあります」


『まだあるの!?』


『重大発表第二弾!?』


『今度は何だ!?』


 琴は少し笑ってから、カメラを見た。


「今後は、4人でダンジョン攻略を行う予定です。次回の配信では、実際に4人でダンジョンへ潜る様子をお届けしようと思っています」


「おぉー、次回は4人で攻略だよぉ!」


 乙羽が手を振る。


「梓の戦い方も、もっと見てもらえると思うぜ!」


 柳が続けた。


 梓は少し緊張したように姿勢を正す。


「私も、みんなの足を引っ張らないように頑張るわ。これからは一緒に戦う仲間として、できることを増やしていきたいと思っているの」


「梓ちゃんがいれば、できることも増えると思うよ」


 琴が微笑む。


「それぞれ得意なことが違うからね。4人でどう連携していくか、私たちも楽しみにしているんだ」


『4人攻略きた!』


『梓ちゃんの拳と琴ちゃんの剣、柳ちゃんの影、乙羽ちゃんの魔法……』


『戦い方が全然違うから連携が楽しみ』


『次回は絶対リアタイ!』


『20層まで行くのかな!?』


 コメント欄には、早くも次回の攻略を楽しみにする声が並び始めた。


 もちろん、具体的な攻略予定については、まだ詳しく説明していない。


 けれど、4人で活動するという発表だけでも、視聴者にとっては十分に大きなニュースだった。


「それじゃあ、今日はこのあたりで終わりにしようか」


 琴が締めくくる。


「みんな、梓ちゃんを温かく迎えてくれてありがとうねぇ」


 乙羽が笑顔で手を振った。


「これから4人で頑張っていくから、応援よろしくな!」


 柳も元気よく手を振る。


「これからよろしくお願いします!」


 梓も最後に頭を下げた。


 配信が終了する直前まで、コメント欄には祝福の言葉が流れ続けていた。


『梓ちゃん加入おめでとう!』


『新生ティンカーベル、応援してます!』


『次回のダンジョン攻略が待ちきれない!』


『4人での活動、楽しみにしてます!』


 そして、午後19時45分。


 ティンカーベルの加入記念配信は、温かな祝福に包まれながら終了した。


     ◇


 配信終了後。


 会議室には、少しだけほっとした空気が流れていた。


「いやー、すごかったな!」


 柳が椅子の背もたれに体を預ける。


「思ってた以上にスパチャが来ていたね」


 琴は配信の記録を確認しながら頷いた。


「梓ちゃん、緊張したぁ?」


「……少しね。でも、みんなが歓迎してくれたから、途中からは楽しかったわ」


 梓は素直に答えた。


「これから、4人で活動するんだねぇ」


 乙羽が嬉しそうに言った。


「うん。これからよろしくね、みんな」


 梓が3人を見渡す。


「こちらこそ!」


 琴が答え、柳も笑顔で頷いた。


「おう! まずは次のダンジョン攻略だな!」


「そうだね。準備を整えて、4人での初攻略に臨もう」


 琴の言葉に、全員が頷く。


 梓の加入は、これで正式に発表された。


 ティンカーベルは3人から4人へ。


 新たな仲間を迎えた彼女たちの活動は、ここからさらに広がっていく。


 そして次回。


 4人になったティンカーベルが、ダンジョン15層から攻略を再開する。


 目指すは20層。


 新体制での本格的なダンジョン攻略が、いよいよ始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。