「ガチャ天井が出来るくらいの収益を期待したいところですね」
「それで、競技会の話なのだけど」
アリスは一度話を区切り、集まったメンバーを見渡した。
「まず、私たち11席分で、できる限り多くの競技に参加してもらうつもりだ」
「11席分ってことは、梓も含めてだな!」
龍太が確認する。
「そういうこと。ただ、正直に言うと、12位以下の生徒が全然育っていない状況なんだ」
「12席って、レベル20手前くらいだったはずだな」
龍太が思い出すように言った。
「そうなんだ。もちろん、競技によって必要な能力は違うから、レベルだけで決まるわけではないけれどね。それでも、上位陣との実力差はかなり大きい」
アリスは少し難しい顔をした。
「だからといって、私たちだけで全部の競技に出ればいいという話でもない。確実に勝てる競技は絶対に勝ちたいけれど、学園全体として結果を残すことも大切だからね」
「そうだなぁ~。実際の競技の動画とかを見ないと何とも言えないけど、みんななら勝てるはずぅ」
乙羽はのんびりと頷いた。
「ところで、支援魔法ってありなのかなぁ?」
「基本的には、外部から参加選手にかける支援魔法はダメだね」
政宗が答えた。
「ドーピングのような扱いになるからね。もちろん、支援魔法を使う本人が競技に参加する場合なら認められる競技もあるけど、外部から選手を強化するのは原則として認められていないんだ」
「なるほど。競技の最中に、仲間が後ろから強化してあげるのはダメってことね」
アリスが補足する。
「そういうことだね。みんな、それぞれ自分のスキルや魔法を使って競技に参加する。外部からの支援まで認めてしまうと、競技によっては公平性を保てなくなるから」
「ふむふむ。じゃあ、乙羽が出れば大体勝てるんじゃねぇか?」
柳が乙羽を見た。
「んぅ~? どうだろうねぇ」
「柳、それを言ったら、私たちだって他校の生徒とはレベル差があるんじゃない?」
琴がすぐに指摘した。
「私たちが出場すれば勝てる競技は多いかもしれないけど、それだけで全部が決まるわけじゃないでしょう。競技ごとにルールも違うし、相性だってあるんだから」
「まぁ、そうなるよね!」
瑠奈が頷いた。
「他校の選手も、いいところレベル30くらいなんじゃない? もちろん、全部がそうとは限らないけどさ!」
「実際、去年の時点では、特出した選手はまだ育っていなかったんだ」
祐樹が説明を引き継いだ。
「僕たちも1年生だったから、去年は競技会を見学するだけだったしね。学園全体としても、目立った選手は少なかった」
「去年は都道府県で20位くらいだったね」
政宗が続ける。
「でも、今年は違う! 僕たちはこの1年で努力してきたからね。少なくとも、去年と同じ結果で終わるつもりはないよ」
その言葉には、確かな自信があった。
実際、タイムジェイルでの修行を経て、十席の実力は大きく向上している。競技の内容を見極める必要はあるものの、昨年とはまったく違う戦いができるはずだった。
「もちろん、確定メンバーの下位序列をのけ者にして、私たちだけで勝つという話ではありませんよ」
ヒカルが落ち着いた声で言った。
「私たちが勝てる競技だけに出場して、ほかの生徒には機会を与えない。それでは学校全体の成長にはつながりませんから」
「ええ。そのとおりです」
リーゼロッテも頷いた。
「せっかく参加する大会なのです。このメンバーにも活躍してもらいますが、ここにいない生徒にも見せ場は必要です。卒業後のランク査定もあるのでしょう?」
「そうなるな!」
龍太が大きく頷いた。
「俺たちがこの学校に通ってるのも、そのあたりが大きいからな。卒業後のCランク確定に装備の支援、それに配信活動の支援もある。冒険者として活動するなら、かなり大きなメリットだぜ」
「そうだね。実力がある生徒にとっても、学校側の支援は無視できないからね」
政宗も同意した。
学園にとって、競技会は単なる順位争いではない。
生徒たちが実力を示し、卒業後の冒険者活動につなげるための重要な機会でもある。
上位陣だけが活躍して終わるのではなく、できるだけ多くの生徒が自分の能力を発揮できるようにする。それも、今回の大会に向けた大切な方針だった。
「ところで、もうひとつ気になることがあるんだけど」
祐樹が乙羽たちに目を向けた。
「ティンカーベルは、すでにかなりの知名度があるよね。配信の収益も、結構な額になっているんじゃない?」
「んぅ~?」
乙羽は少し考えた。
「どうなんだろうねぇ。お金の管理は学校に任せてるから、私はあんまり気にしてないんだよねぇ」
「それでいいのか……?」
柳が呆れたように言う。
「だって、必要なものは学校が用意してくれるしぃ」
「まあ、確かにそうだけどさ」
「それより、グッズまだかなぁ~」
乙羽は、ふと思い出したように呟いた。
「売上がどのくらいになるかは気にしてないけど、グッズはほしいよねぇ~」
「そっちか!」
柳がすかさず突っ込んだ。
「いや、でも気持ちはわかるよ。自分たちのグッズって、ちょっと見てみたいもんね」
瑠奈も楽しそうに頷く。
「アクスタとか、ぬいぐるみとか! ティンカーベルのグッズが出たら、絶対かわいいと思う!」
「フェンちゃんのグッズもほしいね」
琴が付け加えた。
「先生のグッズも出るのかなぁ?」
乙羽がリーゼロッテを見上げる。
「私のグッズですか? 需要があるのでしょうか」
「あると思うよぉ。先生、人気だもん」
「ふむ……。それなら、ガチャ天井が出来るくらいの収益を期待したいところですね」
「先生、またゲームの話になってるぞ!」
龍太が笑った。
会議室に、和やかな笑い声が広がる。
もっとも、競技会の準備そのものは、まだこれからだ。
どの競技に誰が出場するのか。どの生徒に経験を積ませるのか。そして、学園全体としてどこまで勝利を目指すのか。
考えるべきことは多い。
それでも、今年の学園には昨年とは違う戦力が揃っている。
十席の成長を土台にしながら、ほかの生徒たちにも活躍の機会を与える。
それが、アリスたちの目指す競技会だった。




