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殴り賢者はバレている  作者: 七風


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「みんなぁ、こんばんはぁ。久しぶりだねぇ」

 土曜日の午後7時。


 ティンカーベルの公式チャンネルで、10日ぶりとなるダンジョン攻略配信が始まった。


 画面に映っているのは、見慣れた3人と、小さな妖精のリーゼロッテ、そして大きな狼のフェンちゃん。


 今回は5人での攻略だ。


『きたああああ!』


『待ってたぞティンカーベル!』


『十層攻略以来じゃん!』


『今日はどこまで潜るんだ?』


『先生もフェンちゃんもいる!』


『この5人なら安心して見られるな』


「みんなぁ、こんばんはぁ。久しぶりだねぇ」


 乙羽がいつもの調子で手を振った。


「おう! 待たせたな!」


「こんばんは。今日はダンジョン攻略の配信だよ」


 琴が挨拶を済ませると、柳がさっそく身を乗り出した。


「今回は11層から再開だ! 前回は10層のボスを倒したところで終わったからな。今日はその先を攻略していくぜ!」


『11層きた!』


『ついに先へ進むのか』


 コメントを眺めていた乙羽が、のんびりと答える。


「修行してきたよぉ。いろいろ練習してきたから、今日はその成果も見せられるといいねぇ」


『修行!?』


『やっぱり鍛えてたのか!』


『新技ある?』


『10日も空いた理由、修行だったのか』


『これは期待していいやつ?』


 『ダンジョン観測班:久しぶりの攻略配信、楽しみにしてました!(1,000円)』


 『魔法好きの学生:新しい魔法が見られるかもしれないと思うと楽しみです!(500円)』


「ありがとうございます。今日は実際の戦闘を通して、以前との違いも見てもらえると思いますよ」


 リーゼロッテが補足した。


 彼女はいつものように乙羽の肩の近くに浮かんでいるが、ただ配信を見守っているわけではない。周囲の魔力反応を探り、進むべき道を確認しながら、必要なら自分も戦闘に加わるつもりだった。


 フェンちゃんも、すでにやる気満々だ。


「それじゃあ、行こうかぁ」


 乙羽が声をかけると、フェンちゃんが力強く吠えた。


     ◇


 11層。


 転移した先には、岩場と草地が入り混じる広大なフィールドが広がっていた。


 遠くには低い丘が連なり、その向こうには森が見える。足元には大小の岩が転がり、ところどころに背の高い草が群生していた。


 10層までのダンジョンとは違い、視界の開けた場所が多い。とはいえ、見通しがいいからといって安全とは限らなかった。


「まずは周囲を確認しましょう。道はこの先の岩場を抜けて、森の外縁を回るルートです」


 リーゼロッテが進行方向を示した。


「敵は?」


 琴が尋ねる。


「前方に複数。右手の岩陰にも反応があります。少し進めば、両方と遭遇するでしょうね」


「じゃあ、右から来るやつはあたしが相手するぜ」


 柳が足元の影を広げた。


「正面は私たちでやろうか」


 琴が乙羽を見る。


「うん。フェンちゃんもお願いねぇ」


 フェンちゃんが地面を蹴った。


 最初に現れたのは、灰色の毛並みをした狼型のモンスターだった。正面の草地から5体、右手の岩陰からさらに4体。離れた場所にも動く影があり、こちらの様子をうかがっている。


「おぉ、最初から結構いるねぇ」


「全部が一度に来るわけではなさそうです。まずは目の前の相手から片づけましょう」


 リーゼロッテの言葉に、乙羽が頷いた。


 狼型のモンスターが一斉に駆け出す。


 フェンちゃんが先頭の2体へ突進した。


 巨体がぶつかった瞬間、狼たちは横へ弾き飛ばされる。フェンちゃんはそのまま勢いを殺さず、もう1体の進路を塞いだ。


「おぉ、フェンちゃん速い!」


 柳は岩陰から回り込んできた狼の足元に影を伸ばす。


 影が地面から立ち上がり、2体の足を絡め取った。


「ほら、こっちだ!」


 身動きの取れなくなった狼へ、柳が踏み込む。短い攻防の末、2体が倒れた。


 一方、正面では琴が手をかざしていた。


 彼女の周囲に、実体を持つ剣が次々と現れる。


 最初は3本。


 続いて、さらに3本。


 合計6本の剣が、琴の周囲に浮かんだ。


『剣が増えてる!?』


『前は3本くらいじゃなかった?』


『実体のある剣を6本も同時に操ってるのか』


 『剣コレクター:琴ちゃんの剣、前より増えてる! 今回も楽しみ!(1,000円)』


「いきます!」


 琴の声とともに、剣が動いた。


 2本が正面の狼を牽制し、別の2本が横から回り込もうとする個体を迎え撃つ。残る2本は琴の近くに留まり、隙を見せた敵へ素早く斬りかかった。


 剣は敵の爪や牙とぶつかり、金属音に似た音を響かせる。


 光の刃でも、魔力を飛ばしただけの攻撃でもない。確かな重さを持った剣が、実際に敵を斬りつけていた。


「おぉ、琴ちゃん。前よりたくさん出せるようになったんだねぇ」


「うん。まだ慣らしているところだけどね」


 琴は落ち着いた声で答えた。


 その間に、乙羽も魔法を発動させる。


 手の前に生まれた炎が、細長い弾丸のような形にまとまった。


「えいっ」


 炎が飛ぶ。


 狼の胴体に命中すると、鈍い衝撃とともに敵が地面を転がった。炎は命中した場所で消え、周囲の草に燃え移ることもなかった。


 狼はそのまま動かなくなる。


『今の火魔法?』


『爆発しなかったな』


『でも一撃で倒したぞ』


『周りの草が燃えてないのすごくね?』


 『火魔法研究中:今の攻撃、見た目より威力がありそうですね!(500円)』


 乙羽はコメントに気づいて、少し首を傾げた。


「んぅ? 前だったら、もっと周りまで燃えちゃってたかもねぇ」


「実際、以前より制御が安定していますね」


 リーゼロッテが言った。


「威力を落としたわけではありませんよ。必要なところへ、必要な分だけ魔力を通せるようになったのです」


「そっかぁ。前より調整しやすくなったんだよねぇ」


 乙羽は納得したように頷いた。


 説明している間にも、岩陰から新たな狼が飛び出してきた。


 今度は3体がフェンちゃんを避け、乙羽の側面へ回り込もうとする。


 乙羽は慌てず、片手を地面へ向けた。


 足元の土が盛り上がり、狼たちの進路を遮る。そこへ風が流れ込み、進路を変えた狼をまとめて押し戻した。


 派手な爆発はない。


 だが、3体は一斉に体勢を崩し、待ち構えていた琴の剣に斬り伏せられた。


『地属性と風属性?』


『連携がきれいだな』


『地面もほとんど壊れてない』


『前なら岩ごと吹っ飛ばしてそう』


 『風見鶏:地形を壊さずに敵だけ止めてるの、地味にすごい!(300円)』


「ふふっ。今回はちゃんと加減できているようですね」


 リーゼロッテが楽しそうに言った。


「先生、それ褒めてるのぉ?」


「もちろんです。地形を壊さずに敵を倒せるなら、そのほうが探索にも素材回収にも都合がいいでしょう?」


「それはそうだねぇ」


 乙羽は笑って頷いた。


 やがて、最初の群れはすべて片づいた。


 しかし、11層の攻略はまだ始まったばかりだ。


 倒した狼の素材を回収し、周辺を確認してから先へ進む。岩場を抜けた先には小さな谷があり、その向こうには森へ続く道が見えていた。


「このあたり、まだ反応がありますね」


 リーゼロッテが告げる。


「さっきの狼だけじゃないのか?」


「ええ。谷の向こうに別の群れがいます。それから、森の手前にも何体か。こちらへ近づいているようです」


「なるほど。まだまだいるってことね」


 琴が剣を構え直した。


 谷へ下りる道は狭く、両側には岩壁が迫っている。正面から大勢に押し寄せられると、動きづらくなりそうだった。


「柳、右側から来る敵を止められる?」


「任せろ!」


 柳は影を岩壁に沿わせた。


 影が伸び、谷の出口へ向かう敵の足元を捉える。狼型のモンスターが次々とつまずき、後続の動きまで乱れた。


 そこへ乙羽が水の魔法を放つ。


 水流は谷底を走り、敵の足元だけを濡らした。続けて風が吹き抜け、体勢を崩した狼たちをまとめて押し戻す。


 倒れた敵へ、琴の剣が次々と襲いかかった。


 剣は敵を斬りつけるたびに動きを変え、互いにぶつからないよう軌道を調整している。琴自身も前へ出て、剣の届かない位置にいる敵には自分の武器で対処していた。


 やがて、谷の出口が静かになった。


「よし、通れるな!」


 柳が影を引き戻す。


「うん。じゃあ、先に進もうかぁ」


 乙羽たちは谷を抜け、森の外縁へと向かった。


 森の中には、狼とは違うモンスターもいた。


 木の幹に擬態した小型の魔物や、枝の間を飛び回る鳥型の魔物。道から少し外れた場所には、薬草に似た植物も生えている。


「先生、あの植物は採取できるのぉ?」


「ええ。薬の材料になりますよ。ただし、似た植物の中には触れるとかぶれるものもありますから、私が確認したものだけ採りましょう」


「はぁい」


 乙羽は植物を傷つけないよう、根元の土を少しだけ掘り起こした。


 その間、フェンちゃんは周囲を歩き回り、近づいてきた鳥型の魔物を追い払っていた。1体が急降下してくると、フェンちゃんは身をひねり、勢いよく体当たりする。


 鳥型の魔物は地面へ落ち、琴の剣がその動きを止めた。


「フェンちゃん、ありがとぉ」


 乙羽が声をかけると、フェンちゃんは尻尾を大きく振った。


 森の外縁を進む間にも、何度か敵との遭遇があった。


 小型の魔物が草むらから飛び出し、鳥型の魔物が上空から襲ってくる。さらに奥では、岩をまとった四足歩行の魔物が道を塞いでいた。


 そのたびに、5人は連携して対処した。


 柳が影で敵の動きを乱し、琴が剣を操って攻撃する。フェンちゃんが突進して敵の隊列を崩し、乙羽が魔法で仕留める。


 リーゼロッテは敵の位置を知らせるだけでなく、危険な攻撃が飛んでくれば魔法で弾き返した。倒れた魔物の体も、魔法でふわりと浮かせて一か所へ集めていく。


「先生、また浮かせてる!」


「素材を回収するのに便利でしょう?」


「うん。これなら運ぶのが楽だねぇ」


 『空飛ぶ荷物係:先生、敵を倒すだけじゃなく回収まで手伝ってるw(500円)』


 乙羽たちは集められた魔物の素材を確認し、使える部分を魔法袋へ収納していった。


 森の奥へ踏み込みすぎないよう、道を確認しながら進む。


 11層の探索だけでも、思っていた以上に時間がかかった。


 それでも、道中で遭遇した敵はすべて撃退できている。5人の動きも、戦闘を重ねるごとに自然になっていた。


 そして、森を抜けた先に、次の階層へ続く転移陣が見つかった。


「これが次への入口ですね」


 リーゼロッテが確認する。


「じゃあ、11層はこれで終わりかなぁ?」


「ええ。周辺に大きな反応はありません。先へ進んでよさそうです」


 乙羽は仲間たちを見回した。


「みんな、疲れてない?」


「まだ大丈夫だぜ!」


「私も問題ないよ。素材も十分に回収できたね」


 琴も頷く。


「では、次の階層へ進みましょう」


 リーゼロッテの声に合わせ、5人は転移陣へ足を踏み入れた。


     ◇


 12層。


 今度は、岩山と広い砂地が続く荒野だった。


 遠くには崩れかけた岩の塔がいくつも見え、砂地には風で削られた溝が走っている。ところどころに岩の陰があり、その向こうから何かが動く気配がした。


「ここは見通しがいいけど、隠れる場所も多そうだねぇ」


「そうですね。砂地の下に潜んでいる反応もあります。足元には注意してください」


 リーゼロッテが告げる。


 その直後、砂が盛り上がった。


 地中から現れたのは、甲殻に覆われた大きな虫型の魔物だった。1体だけではない。少し離れた場所でも砂が動き、次々と同じような魔物が姿を現す。


「おぉ、地面から出てきた!」


 柳が後ろへ跳ぶ。


「数は多いけど、まとまっているね」


 琴は剣を構えた。


 虫型の魔物は硬い甲殻を鳴らしながら、こちらへ迫ってくる。正面から攻撃しても、簡単には倒れそうにない。


「乙羽、どうする?」


「んぅー……まずは動きを止めようかなぁ」


 乙羽は両手を前へ向けた。


 砂地の一部が持ち上がり、虫型の魔物の脚を包み込む。動きを止めたところへ、冷気が広がった。


 地面に薄い氷が走り、魔物の脚がまとめて凍りつく。


 そのまま乙羽が指先を動かすと、氷が甲殻の隙間へ入り込み、関節の動きを封じた。


 派手な爆発はなかった。


 しかし、複数の魔物が一斉に動けなくなっている。


『今、氷使った!?』


『え、乙羽ちゃん氷属性もあるの?』


『待って待って、前は地水火雷風じゃなかった!?』


『おい属性増えてんぞ!』


『どこまで進化すんだよ!』


 コメント欄が一気に騒がしくなった。


 『氷結推し:氷属性まで使えるようになってる!? 修行の成果すごい!(1,000円)』


 『属性カウント係:地・水・火・雷・風に氷……6属性目じゃん!(500円)』


 乙羽は画面をちらりと見て、少し困ったように笑う。


「んぅー、氷も使えるようになったんだよぉ」


『さらっと言うなw』


『6属性なんですが!?』


『修行で何があったんだよ!』


「氷は水とは別の属性です。性質も扱い方も異なりますからね」


 リーゼロッテが簡潔に説明した。


「乙羽は今回、その扱いにも慣れてきたようですね」


「うん。まだ練習中だけどねぇ」


 乙羽はそう答えながら、凍りついた魔物へ視線を戻した。


 琴の剣が動き出す。


 今度は8本。


 実体のある剣が左右に分かれ、動けない魔物の甲殻の隙間を狙って斬りつけた。硬い殻を正面から砕くのではなく、関節や腹部の柔らかい部分へ攻撃を集中させる。


 数体が倒れたところで、剣の動きが一瞬止まった。


「……少し、時間がかかるね」


 琴が呟く。


 召喚した剣は実体を持つが、永続するものではない。時間が経てば消えてしまうため、無駄に維持し続けるわけにはいかなかった。


 琴は必要な剣だけを残し、残りを消す。


 その直後、背後から別の虫型の魔物が飛びかかってきた。


「後ろだ!」


 柳が叫ぶ。


 だが、魔物が琴に届く前に、フェンちゃんが横から突っ込んだ。


 巨体がぶつかり、魔物は砂地を転がっていく。


「助かったよ、フェンちゃん!」


 琴が礼を言う。


 柳は影を伸ばし、転がった魔物をその場に縫い止めた。


「こいつはあたしが止める! 琴、いけるか?」


「うん!」


 琴は残していた剣を動かし、魔物を仕留めた。


 一方、乙羽は別の群れへ向き直る。


 今度は水と風を組み合わせ、砂を巻き上げずに敵の進路を変えた。続けて火属性の魔法を撃ち込み、動きの乱れた魔物を順番に倒していく。


 攻撃のたびに大きな爆発が起こるわけではない。


 それでも、魔法が命中した魔物は確実に倒れていた。


『威力はあるのに周囲が荒れてないな』


『砂漠みたいな場所だと、余計な砂煙が出ないの助かるな』


『制御がうまくなってるのがわかる』


 『砂漠の観察者:攻撃のあとも視界が悪くならないの、探索では大事ですね!(500円)』


「ええ。以前より、魔力を無駄なく使えていますね」


 リーゼロッテが頷いた。


「威力を抑える必要がある場面と、そうでない場面。その使い分けができるようになったのでしょう」


「なるほどねぇ」


 琴は戦いながら、乙羽の魔法を横目で確認していた。


 以前なら、敵を倒したあとに地面が大きくえぐれていたり、周囲の岩まで砕けていたりすることがあった。


 今は違う。


 必要な敵を倒し、必要な場所だけを変化させる。


 その違いは、実際に一緒に戦っている仲間だからこそ、よくわかった。


     ◇


 砂地を抜けた先には、崩れた岩の塔が並ぶ一帯があった。


 塔の周辺には、甲殻の大きな魔物だけでなく、小型の虫や飛行する魔物も集まっている。地面には細い穴がいくつも開き、岩の上からは鋭い鳴き声が響いていた。


「このあたりは巣になっているようですね」


 リーゼロッテが周囲を見渡した。


「奥へ進むなら、周辺の敵を片づけながら行きましょう。急いで突っ切ると、後ろから追いかけられる可能性があります」


「了解!」


 柳が影を広げる。


 最初に飛び出してきた小型の虫たちは、影に足を取られて地面へ落ちた。フェンちゃんが駆け抜け、群れの中央を体当たりで散らす。


 その隙に琴の剣が動き、落ちた虫を次々と仕留めた。


 乙羽は飛行する魔物へ向けて風を放つ。風は敵の羽ばたきを乱し、低い位置へ押し下げた。


「先生、右側にも来ています!」


「確認していますよ」


 リーゼロッテは杖を軽く振った。


 右手の岩陰から飛び出してきた魔物たちが、見えない力に押さえ込まれたように空中で止まる。


 そのまま、魔物たちはふわりと浮き上がり、乙羽たちの前へ運ばれてきた。


「はい、こちらもお願いしますね」


「先生、運んできたぁ!」


「倒すところは皆さんに任せますからね」


「はぁい」


 乙羽は笑いながら、浮かんできた魔物へ火と風を組み合わせた魔法を放った。


 炎が敵の周囲を一瞬だけ包み込む。


 風が炎の広がる範囲を制御し、魔物だけを焼き切る。周囲の岩には、焦げ跡すらほとんど残らなかった。


『先生、普通にすごいことしてない?』


『敵を浮かせて運搬してるw』


『先生が本気出したら一瞬で終わりそう』


『でもトドメは乙羽ちゃんに任せてるのか』


 『先生の魔法を見たい:敵を浮かせて運んでくるの、さらっとやってるけどすごい!(1,000円)』


「そのほうが、皆さんの練習になりますからね」


 リーゼロッテは、コメントを見てあっさりと答えた。


「私が全部倒してしまったら、せっかくの修行になりませんでしょう?」


『なるほどなぁ』


『最強の先生が育成に徹してるわけか』


『でも必要なら普通に戦えるんだな』


 リーゼロッテは、それ以上説明せずに周囲の索敵へ戻った。


 彼女が敵を運んでくるおかげで、乙羽たちは無駄に探し回ることなく戦闘を続けられる。危険な攻撃があれば先生が防ぎ、道に迷いそうになれば進路を示してくれる。


 その一方で、実際に敵を倒すのは3人とフェンちゃんだ。


 岩の塔が並ぶ区域を抜けるまで、何度も小規模な戦闘が続いた。


 倒した魔物の素材を回収し、巣の周辺にある鉱石も採取する。祐樹がいれば喜びそうな素材も見つかったが、今回はティンカーベルだけの配信だ。乙羽たちは使い道を先生に確認しながら、必要なものを魔法袋へ収納していった。


「この鉱石は、魔法具の材料にもなりますよ」


「じゃあ、持って帰ろうねぇ」


「はい。持ち帰れる量には限りがありますから、価値の高いものを優先しましょう」


 リーゼロッテの助言を受け、琴が採取した素材を整理する。


 その後も、岩場の奥に潜んでいた魔物や、谷間を巡回していた群れを撃退した。


 敵の数は少なくない。


 ただ、5人の連携が取れているため、大きな混乱にはならなかった。


 やがて、岩の塔の向こうに転移陣が見つかった。


「これで12層も突破ですね」


 リーゼロッテが告げる。


「思ったより時間がかかったねぇ」


「探索もしていましたからね。でも、無駄な戦闘は少なかったと思いますよ」


 琴が周囲を見渡す。


 砂地には足跡が残り、岩の塔の一部には戦闘の跡があった。それでも、周囲の地形を大きく壊すことなく、必要な範囲だけを通り抜けてきた。


「じゃあ、次へ行こうかぁ」


 乙羽の声に、全員が頷いた。


     ◇


 13層。


 今度は、背の高い草が一面に広がる草原だった。


 ところどころに木立があり、遠くには小さな湖が見える。草原の向こうには丘が連なり、その間を縫うように細い道が伸びていた。


「景色が変わったねぇ」


「階層ごとに環境も違うようですね」


 琴が答える。


「反応は?」


「前方の草地に複数。湖の周辺にもいます。こちらへ近づいているものもありますね」


 リーゼロッテの言葉どおり、草むらの向こうから複数の影が現れた。


 今度の敵は、角のある鹿に似た魔物だった。群れで行動しているらしく、少し離れた場所にも同じ姿が見える。


「突進してくるタイプかなぁ?」


「ええ。角に注意してください。まともに受けると、かなりの衝撃になりますよ」


「じゃあ、止めるのはあたしに任せろ!」


 柳が影を伸ばした。


 鹿型の魔物が突進してくる瞬間、影が地面から立ち上がり、先頭の数体の足を絡め取る。勢いを失った魔物たちが横へ崩れ、後続の群れも進路を乱した。


 そこへフェンちゃんが走り込む。


 正面からぶつかるのではなく、群れの側面へ回り込んで体当たりを仕掛けた。先頭の魔物が押し戻され、群れがばらける。


「琴、今だよ!」


「わかった!」


 琴の周囲に剣が現れた。


 今度は10本。


 剣は一斉に飛び出すのではなく、2本ずつに分かれて動いた。敵の進路を塞ぐ剣、角を受け止める剣、隙を見て斬り込む剣。それぞれが役割を分担し、琴自身も状況を見ながら操作している。


『10本!?』


『琴ちゃん、そんなに増やせるようになったのか!』


『これ全部、実体のある剣なんだよな?』


『敵の角を剣で受け止めてるぞ』


 『十本の剣:琴ちゃん、前よりずっと多くの剣を操ってる! かっこいい!(1,000円)』


「琴ちゃんの剣、10本も出せるんだねぇ」


 乙羽が感心したように言った。


「うん。でも、ずっと出していられるわけじゃないから、必要なところに使うようにしているよ」


 琴は答えながら、敵の角を受け止めた剣を動かす。


 剣が正面から受け止め、金属音のような衝撃音が響いた。別の剣が横から斬りつけ、魔物の動きを止める。


 琴は必要な剣だけを維持し、動きが終わったものから順番に消していった。


「さすがに10本同時だと、集中力を使うね」


「無理はしないでねぇ」


「うん。必要なときに使い分けるよ」


 琴は笑って答えた。


 そのころ、乙羽は群れの後方にいる魔物へ向き直っていた。


 突進してくる相手をすべて正面から倒す必要はない。乙羽は風で群れの進路を少しずつずらし、地面を軽く盛り上げて足場を変える。


 それだけで、魔物たちの突進はばらばらになった。


 最後に、乙羽は火属性の魔法を放つ。


 炎は敵の体を包み込むが、周囲の草原へ広がることはなかった。魔物だけを焼き切り、炎はすぐに消える。


『今のも火魔法か』


『草が燃えてないのがすごい』


『攻撃は派手なのに、周りへの被害が少ないな』


『修行の成果ってこういうことか』


 『火力も制御も:威力を落とさず周囲への被害を抑えてるのがいいですね!(1,000円)』


「そうですね。魔法の威力を落とすのではなく、効果の及ぶ範囲を調整できています」


 リーゼロッテが短く説明した。


「必要なら大きな魔法も使えますが、いつも大きくする必要はありませんからね」


「うん。場所によって使い分けるんだよぉ」


 乙羽は自然な調子で頷いた。


 戦闘が終わると、5人は周辺の草地を調べた。


 鹿型の魔物が通った跡には、薬草に似た植物がまとまって生えている場所があった。湖の近くには、魔力を含んだ石も落ちている。


 リーゼロッテが危険のないものを選び、乙羽たちは採取していった。


 その間にも、湖の反対側から別の群れが近づいてきた。


「まだ来るんだねぇ」


「この階層は群れで動く魔物が多いようですね。湖の周辺を通るなら、もう少し戦闘があるでしょう」


「じゃあ、先にそっちも片づけようか」


 琴の提案に、全員が頷いた。


 湖の周辺では、鹿型の魔物だけでなく、細長い爬虫類のような魔物も現れた。水辺に潜んでいた個体が飛び出し、足元へ噛みつこうとしてくる。


 柳が影で動きを止め、フェンちゃんが横から弾き飛ばす。琴の剣がその隙を突き、乙羽は水の魔法で水辺の敵を岸へ押し戻した。


 さらに、草むらの奥から飛び出してきた魔物には、風と地の複合魔法を使った。


 地面がわずかに盛り上がり、風が敵の体を押し上げる。


 魔物は足場を失って転がり、待ち構えていた柳の影に捕らえられた。


「よし、これで最後かな!」


 柳が声を上げる。


「周辺の反応は減りましたね。先へ進めそうです」


 リーゼロッテが確認した。


 湖を回り込んだ先には、丘へ続く道があった。道の途中には小型の魔物が何度か現れたが、先ほどまでの群れほど数は多くない。


 5人はそれらを倒しながら丘を越え、13層の転移陣へとたどり着いた。


「13層も突破だねぇ」


「ええ。ただ、ここまででそれなりに時間を使っています。14層以降も同じように探索するなら、帰還時刻には注意しましょう」


 リーゼロッテが告げる。


「わかった。無理に急ぐより、時間を見ながら進もう」


 琴が頷いた。


 乙羽もスマートフォンを確認する。


 配信開始から、まだ1時間ほど。


 時間には余裕があるが、階層を進むごとに探索範囲も広がっている。敵を倒すだけなら早くても、素材の回収や道の確認には時間が必要だった。


「じゃあ、次の階層へ行こうかぁ」


 乙羽の言葉に、5人は転移陣へ進んだ。


     ◇


 14層。


 そこは、巨大な樹木が立ち並ぶ森林地帯だった。


 太い幹が空へ伸び、枝葉が頭上を覆っている。地面には木の根が複雑に張り巡らされ、場所によっては人が通れる道も限られていた。


「ここは、見通しが悪いですね」


 琴が周囲を確認する。


「ええ。木の上にも反応があります。地上だけを警戒していると、不意打ちを受けるかもしれません」


 リーゼロッテが注意を促した。


 その直後、頭上から何かが落ちてきた。


 小型の猿に似た魔物が、枝を伝って飛びかかってくる。


 フェンちゃんが素早く身をひねり、着地した魔物へ体当たりした。別の個体が木の上から石を投げてくるが、琴の剣がその軌道へ割り込み、石を弾き飛ばす。


「上にもいるんだねぇ」


「木の上の敵は、私が引きつけるよ」


 琴は剣を数本だけ残し、木の枝の間へ飛ばした。


 剣は枝を傷つけないように軌道を変えながら、魔物の動きを牽制する。敵が枝から飛び降りたところを、柳が影で捕らえた。


「はい、こっち!」


 柳が影を引く。


 魔物が地面へ引きずり下ろされ、乙羽の魔法が命中した。


 今度は、風と雷の複合魔法だった。


 風が魔物の動きを押さえ、その狭い範囲に雷が走る。周囲の木々に雷が広がることはなく、狙った敵だけが倒れた。


『風と雷の組み合わせか!』


『木が全然燃えてないし、焦げてもない』


『森の中でこれだけ制御できるのすごいな』


 『森の中の魔法:周りの木を傷つけずに雷を当ててるの、制御が上手くなってますね!(500円)』


「森では火を使うより、こういう魔法のほうが扱いやすい場面もありますね」


 リーゼロッテが言った。


「もちろん、火が必要な場面もあります。状況に合わせて選ぶことが大切ですよ」


「うん。周りを壊したくないときは、別の方法を考えるんだよぉ」


 乙羽はそう答え、次の敵へ目を向けた。


 森の中では、何度も小規模な戦闘が起きた。


 木の根元に潜む魔物、枝の上から飛びかかる魔物、地面を掘って移動する魔物。敵の種類が変わるたび、5人は立ち回りを変えていく。


 リーゼロッテは高い位置から周囲を確認し、敵の位置を知らせた。危険な攻撃があれば魔法で防ぎ、倒した魔物の体を浮かせて道の脇へ集める。


「先生、あっちの木の上にもいるよぉ」


「確認しました。左側の枝に2体、さらに奥に1体ですね」


 リーゼロッテは指先を動かした。


 木の枝に潜んでいた魔物たちが、次々と空中へ持ち上げられる。


「はい、こちらに来ましたよ」


「先生、また運んできた!」


 乙羽は笑いながら、地面に土の壁を作った。


 空中に浮いた魔物たちは、壁にぶつかることなく、その手前で動きを止める。


 そこへ琴の剣が迫り、柳の影が逃げ道を塞いだ。


 最後に乙羽が風を送り、敵の体勢を崩す。


 3人の攻撃が重なり、魔物たちは次々と地面へ落ちた。


『先生が敵を集めて、3人が倒す流れができてるな』


『この連携、かなり効率いい』


『先生、敵を浮かせたまま運べるの便利すぎるw』


 『先生の采配:自分で全部倒せるのに、3人が戦いやすい形にしてるのがいい!(1,000円)』


「戦いやすい形に整えているだけですよ」


 リーゼロッテはそう答えた。


「皆さんが自分で倒せる相手なら、任せたほうが経験になりますからね」


 その言葉どおり、先生は敵を倒すよりも、3人が戦いやすい状況を作ることを優先していた。


 ただし、森の奥で大きな魔物が現れたときには、少しだけ様子が違った。


 太い幹の陰から姿を現したのは、木の根をまとった熊型の魔物だった。体は大きく、腕には硬い樹皮のような装甲がついている。


 熊型の魔物が咆哮し、地面を揺らしながら突進してきた。


「おお、でかいな!」


 柳が声を上げる。


「正面から受けないで!」


 琴が注意する。


 フェンちゃんが横へ飛び、熊型の魔物の進路を外した。だが、魔物はすぐに体勢を立て直し、今度は乙羽へ向かって腕を振り下ろす。


 乙羽は地面を盛り上げて攻撃を受け止めた。


 土の壁が砕ける。


 それでも、乙羽は慌てなかった。


 壁が崩れる前に、風を使って自分の体を横へ逃がす。熊型の魔物が空振りしたところへ、琴の剣が腕の関節を狙って斬り込んだ。


 柳は影を地面に広げ、魔物の後ろ脚を拘束する。


「今だよ、乙羽!」


「うん!」


 乙羽は手をかざし、火と風を組み合わせた魔法を放った。


 炎は細くまとまり、熊型の魔物の胸元へ集中する。


 轟音が響いた。


 魔物の体が大きく揺れ、そのまま地面へ倒れ込む。


 周囲の木々には、ほとんど被害がなかった。


 地面には衝撃の跡が残っているが、森全体を吹き飛ばすような破壊には至っていない。


『今の、かなり威力あったよな?』


『木がほとんど無事なのが不思議だ』


『大技なのに範囲が狭い』


『必要なところだけに威力を集中させてるのか』


 『威力と制御:今の一撃、かなり重そうなのに森が無事なのがすごい!(1,000円)』


「ええ。大きな魔法を使うこと自体は難しくありません。ただ、威力と範囲を別々に考えて制御するのは、簡単なことではないのです」


 リーゼロッテが説明した。


「乙羽は、その調整が以前より上手になっていますね」


「えへへ。まだ練習中だけどねぇ」


 乙羽は少し照れたように笑った。


 熊型の魔物からは、樹皮に似た素材と魔力を含んだ石が見つかった。リーゼロッテが使える素材を選別し、魔法で浮かせて集める。


 その後も森の奥を進み、複数の小さな群れを撃退した。


 14層は、敵を倒すだけでなく、移動にも気を使う階層だった。木の根を避け、枝の間からの攻撃に注意しながら、進める道を選んでいく。


 それでも、全員が役割を理解していたため、探索は順調に進んだ。


 森を抜けた先に転移陣が見つかったとき、配信開始から1時間半ほどが経過していた。


「14層、突破だねぇ」


「はい。次は15層です。ここからは敵の強さも少し上がる可能性があります。油断しないようにしましょう」


 リーゼロッテの言葉に、全員が頷いた。


     ◇


 15層。


 転移した先に広がっていたのは、岩山と深い谷が連なる地形だった。


 遠くには切り立った崖があり、その間を細い道が通っている。ところどころに洞窟の入口が見え、谷底からは低い唸り声のような音が響いていた。


「ここは、落ちないように気をつけないとねぇ」


「そうですね。足場が狭い場所もありますから、フェンちゃんも無理に走らないようにしましょう」


 リーゼロッテが声をかけると、フェンちゃんは理解したように一度鳴いた。


 道を進むと、最初に現れたのは岩のような皮膚を持つトカゲ型の魔物だった。


 1体だけではない。


 崖の上から3体、洞窟の入口からさらに4体。離れた岩場にも複数の影が動いている。


「ここも群れが多いねぇ」


「地形を利用して攻撃してくる相手のようです。上から落石を起こす個体もいるので、崖の上も警戒してください」


 リーゼロッテが注意を促した。


 その直後、頭上から岩が落ちてきた。


「危ない!」


 琴が叫ぶ。


 乙羽は風を起こし、落石の軌道を横へそらした。岩は道の端へ落ち、崖下へ転がっていく。


 同時に、柳が影を伸ばして崖の上の魔物を捕らえた。


「隠れてても無駄だぜ!」


 影に引かれた魔物が崖の縁へ滑り出てくる。


 そこへリーゼロッテが魔法を使い、魔物の体を空中で支えた。


「落とすと素材が傷みそうですからね」


「先生、そこまで考えてるのぉ?」


「回収するなら、きれいな状態のほうがいいでしょう?」


 リーゼロッテは平然と答え、魔物を道の広い場所まで運んだ。


「はい。こちらもお願いします」


「はぁい」


 乙羽が魔法を放つ。


 今度は水と氷の複合魔法だった。


 水が魔物の足元へ広がり、次の瞬間、その一部が氷へ変わる。足を滑らせた魔物の動きが止まり、琴の剣が関節を狙って斬り込んだ。


 氷は必要な場所だけに留まり、道全体を凍らせることはなかった。


『水と氷を同時に使った?』


『複合魔法ってこういう使い方もできるんだな』


『敵だけ止めて道は残してるのか』


『氷属性、便利だなぁ』


 『氷魔法の使い方:水から氷に変えて足元だけ止めるの、実戦的でいいですね!(500円)』


「まだ練習中だけど、こういう使い方もできるんだよぉ」


 乙羽は答えた。


 その後も、崖道を進むたびに魔物が現れた。


 洞窟の中には小型のトカゲ型の魔物が群れており、岩場の陰には大きな個体が潜んでいる。狭い場所では琴の剣が進路を制限し、柳の影が逃げ道を塞いだ。


 フェンちゃんは広い場所で突進し、敵の隊列を崩す。


 乙羽は敵の位置や周囲の地形に合わせて、魔法の種類と威力を調整していた。


 必要なときには複合魔法でまとめて敵を倒す。


 素材を回収したい場所では、岩や洞窟を壊さないように攻撃を抑える。


 崖の上から複数の魔物が襲ってきたときには、風で敵を押し戻し、地面を隆起させて足場を変えた。


 そのうえで、琴と柳が動きやすい位置へ敵を誘導する。


 先生も、危険な攻撃を防いだり、敵を空中に浮かせて運んだりしながら、3人が戦う機会を作っていた。


 戦闘は一方的に進んでいるように見える。


 しかし、5人はただ敵を倒しているだけではなかった。


 狭い道を選び、崖の上を確認し、洞窟の中を調べ、使える素材を集めていく。敵の数が多い場所では一度に突っ込まず、群れを分けて対処した。


 15層の探索は、思っていた以上に広範囲に及んだ。


 そして、谷を抜けた先に、次の階層へ続く転移陣が見つかった。


「ここが15層の出口ですね」


 リーゼロッテが確認する。


「次へ進む?」


 柳が尋ねた。


 乙羽はスマートフォンで時刻を確認し、それから琴と柳を見た。


「んぅー……今日はここまでにしようかぁ。けっこう探索したし、素材もたくさん集まったもんねぇ」


「そうだね。配信時間も考えると、ここで切り上げるのがよさそう」


 琴も頷いた。


「賛成! まだ先は長いし、焦って進む必要もないだろ」


 柳が明るく答える。


 リーゼロッテも異論はないようだった。


「ええ。15層までの攻略としては十分な成果です。帰還時刻にも余裕がありますし、今日はここで終了しましょう」


 フェンちゃんが、満足そうに尻尾を振った。


 乙羽はカメラに向かって手を振る。


「というわけで、今日は15層まで攻略できたよぉ。みんな、見てくれてありがとうねぇ」


『お疲れさま!』


『氷属性びっくりした!』


『乙羽ちゃんの魔法制御が上手くなってたな』


『琴ちゃんの剣10本もすごかった!』


『柳ちゃんもフェンちゃんも大活躍だった』


『先生が敵を運んでくるの面白すぎるw』


『次回も楽しみにしてる!』


 『15層到達おめでとう:久しぶりの配信、見応えありました!(2,000円)』


 『ティンカーベル応援団:みんな強くなってる! 次回の攻略も楽しみにしています!(1,000円)』


「次回も、続きを攻略する予定です。今日集めた素材も確認して、次に備えますね」


 琴が締めくくった。


「それじゃあ、またねぇ」


 乙羽が笑顔で手を振り、配信は終了した。


 配信時間は3時間。


 ティンカーベルは11層から15層まで、5つの階層を探索し、複数の群れと戦いながら素材を集め、無事に攻略を終えた。


 視聴者たちは、配信終了後もコメント欄やSNSで盛り上がっていた。


『待てよ。あれだけ探索して戦闘も何度もあったのに、3時間で5層攻略したのか?』


『普通に考えたら速いよな』


『いや、乙羽ちゃんたちの戦闘が速いだけじゃなく、先生の索敵と案内も効いてるんだろうな』


『しかも地形を壊さずに素材回収までしてる』


『次の配信、どこまで行くんだ……?』


 新しい魔法、増えた召喚剣、そして以前よりも精密になった乙羽の魔力制御。


 今回の配信で明らかになった成長は、どれも視聴者の期待を高めるものだった。


 ただし、ティンカーベルのダンジョン攻略は、まだ15層で終わったばかり。


 その先には、さらに深い階層が待っている。


 次の配信で、彼女たちがどんな戦いを見せるのか。


 視聴者たちは、早くも続きを楽しみにしているのだった。

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