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第六話:いじめはあかん!

「――そや。いまおもうたんやけどさ」


鉄砲水で大惨事を引き起こしたあと、うちはまた森の中を歩いていた。

ふと、ガイドブックの魔法スロットにぎっしり詰まった、あのカードが目に留まる。


「初期からあった『マジックブリット(魔弾)』って、一体どれくらいの威力あんのやろ? レベル1やし、さっきの『ウォーター』よりは大人しいハズ……。ちょっと試し撃ちしてみよ」


そこらへんに生えている、やたらとガタイの良い大きな木をターゲットにロックオン。

今度はさっきの反省を活かして、魔力を込めすぎんように……込めすぎんように……。


「よし、解放や!」


カードをシュッと指先で挟んで掲げる。


――ドゴォォォォォン!!!


激しい衝撃波と共に、目の前が真っ白になった。

すさまじい爆風に三角帽子を必死に押さえながら、うちは煙の向こうを見た。


「……うわぁ。大木に、向こう側が丸見えの大穴が空いてもうた。っていうか、こんな大きな木、最初からここに生えてたっけ……?」


直径数メートルはあろうかという巨木が、真ん中を綺麗にくり抜かれてグラグラと揺れている。レベル1の魔弾って、普通はパチンコ玉みたいな光の弾が飛んでいくもんちゃうん!? うちのSSS級魔力、ほんま加減が分からんわ!


パキパキと音を立てて木が倒れ伏すと同時に、脳内に例の音が響いた。


ピコーン!

『アイテム:トレントの丸太×3、トレントの魔石×1、リゴーの実×5、カミンの実×5、ナシーの実×3を格納しました』


「おおっ、アイテムカードがゲットされとる! ……って、これ普通の木ぃちゃうくてモンスター(トレント)やったんか! 道理でなんか、さっきから視線感じると思ったわ!」


丸太はともかく、リンゴとかミカンっぽい美味しそうな果物が手に入ったのは大収穫や。

「これでマツタケ以外のビタミンが摂れる!」とホクホクしながら果物カードを眺めていると――。


「きゅぃぃぃーーーんっ! ぅ、うにゃぁぁぁん!」


どこからか、悲鳴に似た、か細い鳴き声が聞こえてきた。


「なんやろ、今の声。……こっちか?」


うちは『探索スキルLv1』を意識しながら、声のする方へ草むらをかき分けて進む。

少し開けた場所にそっと顔を出すと、そこでは信じられない光景が繰り広げられていた。


「ワン! ガルルルル!」


獰猛な唸り声を上げているのは、さっきの大洪水でカードの山に変えてやった『フォレストウルフ』たち。しかも3匹もいる。

そいつらが、牙を剥き出しにして、地面にうずくまる小さな生き物を囲んで威嚇していた。


「あ、あんな小さい子を大勢で囲んで……あかん、あかんでー!」


ウルフたちの中央でガタガタと震えていたのは、真っ白な毛並みをした、小さな子狐。

でも、よーく見ると、お尻のところにちっちゃい尻尾が三つ、扇風機みたいにパタパタと小刻みに揺れている。


「何アレ、めちゃくちゃ可愛いやん……! やなくて、完全にいじめられとる! 3対1とか卑怯極まりないわ!」


見た目は幼女、中身は正義感あふれる(エセ)関西人女子高生。

あんな可愛い生き物がワンコたちのおやつにされるのを、黙って見てられるわけがない。


「おいそこのワンコども! うちの可愛い(予定の)キツネちゃんから、今すぐ離れんかーーい!」


うちは草むらから飛び出すと、懐から『マジックブリット』のカードをバシッと引き抜いた。

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