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第五話:『ウォーター』と、棚ぼた乱獲

「……うん、マツタケモドキは最高に美味かった。美味かったけどな……」


木の上で迎えた異世界二日目の朝。

うちはガイドブックの地図を見ながら、深く、深ーくため息をついた。


「さすがに毎食マツタケだけやと飽きるわ! 醤油! 醤油か塩をくれ! あと白米! いくら優秀なガイドブックがあっても、調味料の現地調達は無理や。とにかく人里、あるいは街に行って、まずはがっつり稼ぐのが肝要やね」


ありがたいことに、ガイドブックの地図には一番近い街へのルートがバッチリ記載されている。


「これで勝つる! ……けど、遠いな〜。歩いたら何日かかるんやこれ。早く魔力操作のレベル上げて、あの箒に乗りたいわぁ……」


文句を言いつつも、生きるために歩き出す。

鬱蒼とした森の中を進んでいると――ガサリ、と草むらが揺れた。


「ひゃいっ!? な、なんや、野生のワンコか!?」


身構えるうちの前に現れたのは、プルプルとした青くて半透明な球体。


「あ、スライムやん! 異世界序盤の定番、お約束キャラキタ!」


ちょっと感動していると、スライムが「きゅぃ?」と鳴いた(気がした)瞬間、その体からペッと水が飛んできた。


ピシャッ。


「うお、冷たっ! びっくりしたぁ、スライムって魔法使うんやな」


威力は全然大したことない。庭の水道ホースで花壇に水撒きしてる程度の、なんとも微笑ましい水鉄砲や。

ズボンに当たった水を払おうとした、その時。


ピコーン!


『魔法:ウォーターをカード化しました』


「……へ? あ、そうか!『魔法を見るとカード化して保存される』って付録のページに書いてあったな! ほんまにカード化されとる!」


ガイドブックを開くと、魔法スロットにぽつんと『ウォーター』のカードが追加されていた。


「すごいやんスライム君! 教材になってくれてありがとな! よし、忘れないうちに早速コピーして……うおっ、相変わらずめっちゃ魔力持っていかれるやんなこれ!」


ステータスが数値化されてへんから正確な残り湯(魔力)は分からんけど、ごっそり削られた感覚だけはある。頭が一瞬クラッとしたわ。

でも、手元にはちゃんと『ウォーター』のカードが2枚に増えている。


「ふふふ、増えた増えた。ほな、試しに一発使ってみよか。カード解放や、ウォーター!」


さっきスライム君がやったみたいに、ちょっと魔力を込めるつもりで、カードをスライムに向けてバッと突き出した。


その瞬間。


ゴガガガガガガガガギシャアアアアアン!!!!


「な、なんやのこれーーーーー!!! スライムがやった時と絶対違うやん!!!」


うちの手元から噴き出したのは、水鉄砲なんて可愛いもんじゃなかった。

それは、凄まじい濁流――いや、**完全に山が崩れた時の鉄砲水**やった。


地響きを立てて荒れ狂う大量の水が、目の前のスライムどころか、森の木々をバリバリとへし折りながら猛スピードで突き進んでいく。

水が引いた後には、幅3メートル以上の深々とした溝(というか新しい川)が出来上がっていた。


「なんやこれぇぇぇ……。さっきのスライムの魔法とちゃうやんか……。うち、ただ『ウォーター』って言っただけやで!?」


唖然と立ち尽くしていると、脳内で機械音が大音量で鳴り響き始めた。


ピコーン!ピコーン!ピコーン!

『レベルが上がりました。Lv1→Lv10』

『ドロップアイテムをカード化し、ホルダーに格納します』

『スキルカード:魔力操作、魔力弾Lv1×3を獲得しました』


「お、おおお……!? なんか一気にレベルが10まで上がった。それにスキルも習得したぞ? よし、この『魔力操作』と『魔力弾』も速攻で解放や!」


新スキルを頭に叩き込みつつ、何が起きたのかアイテムスロットを確認してみる。


* 『スライムの魔石×10』

* 『コボルトの魔石×3』

* 『フォレストウルフの魔石×20』

* 『フォレストウルフの皮×20』

* 『フォレストウルフの肉×20』


「……あ。なるほどな」


うちがやらかした大洪水は、森の奥にいた魔物たち(コボルトやウルフの群れ)を巻き込んで、まとめて一網打尽にしてしもたらしい。


「一撃でどんだけ倒してんねんうち……。でも、おおお! アイテムに自動で変換されとる! めっちゃ便利やん! もしかして、これ血抜きの解体作業とかせんでええの!?」


ウルフの肉や皮が、綺麗なカードになってスロットにキチッと収まっている。

手は一切汚れてへん。女子高生(見た目幼女)に優しい親切設計や。


「ウルフの肉……これ、街に持っていったら売れるんちゃう? 調味料代どころか、一気にお金持ちになれる予感がしてきたで!」


さっきまでのウツウツとした気分はどこへやら。

うちは大量の戦利品カードが詰まったガイドブックをポンポンと叩き、ホクホク顔で「鉄砲水ロード」を歩き始めた。


「スライム君、ほんまにありがとうな! おかげで街での新生活、幸先良さそうやわ!」

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