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第一話:召喚は突然に


それは、ほんまにいきなりやった。


学校の昼休み。みんなが昼食後のひと時をだべって――いやいや、優雅に過ごしていた時のこと。

なんの前触れもなく、教室の床がブワッと眩しく光りだしたんよ。


「うわ、これ知ってる! 異世界召喚ってやつだよ!」

「まじかよ! やったぜ、俺の時代キタ――!!」


……うん。なんか一部のオタク連中の、無駄に冷静かつはしゃぎ倒してるっぷりが地味に腹たつ。状況把握早すぎやろ。

そんな中、クラスの主役(笑)であるイケメンのヒカルくんが、キリッとした顔で叫んだ。


「みんな、僕から離れないで! 僕が守るから!」


そう言って、周りの女子生徒だけを庇うように抱き寄せている。相変わらずやな、あいつ。っていうか、こっちはこっちで別のベクトルで腹たつわ!


「ちょっと待てヒカル、一応うちも女子やで〜! なんでうちの周りだけモーセの十戒みたいに綺麗にスペース空いてんねん!」


叫んだものの、光はさらに強くなる。

しかも運の悪いことに、うちが座ってる机の真下だけ、ピンポイントで「焦げ茶色の怪しい魔法陣」がアホほど自己主張激しく発光し始めた。


「うおっ!? 眩しっ! っていうか何これ、うちの席だけなんか不穏な光り方してへん!? 待て待て、怖い怖い!」


パニックになったうちは、何をトチ狂ったか、目の前の机をガシッと掴んで――思いっきり窓の外へと放り投げちゃった。


「ふんぬーーーっ!! 飛んでけ異世界!!」


ガラガラガシャーン!! と、窓ガラスと机が虚空へ消えていく。

それにしたって、クラスごと召喚って設定、ベタすぎやろーーー!!



「……って、あれ?」


次に目を開けた時、視界を埋め尽くしていた白い光は消えていた。

代わりに目に飛び込んできたのは、青い空。そして、今にも崩れ落ちそうな石造りの柱。


「どっかの、崩れかけた神殿……?」


慌てて周囲を見回す。だけど、さっきまであれだけ騒がしかった教室の気配は微塵もない。ヒカルくんも、彼に群がっていた女子たちも、オタク君たちも、誰もいない。


「……誰もいない? ミカ〜? キョウコ〜? 委員長〜? どこに行ったん〜?」


しーーーん、と静まり返る古代遺跡風の場所。風の音だけが寂しく通り過ぎていく。

え、ちょっと待って。クラスごと召喚されたんちゃうの? なんでうち一人だけポツンと取り残されてるわけ?


「嘘やん、はぐれた? 召喚の段階ではぐれるとかある!?」


一人で頭を抱えて足元を見下ろした、その時だった。


「…………っていうか。うち、小さくなってへん?」


なんか、視点が妙に低い。

自分の手を顔の前に持ってきてみる。……ちっちゃい。指が短くて、まるっこい。

慌てて自分の体をペタペタと触ってみる。胸元は元から平坦やったけど(泣くところではない)、全体的にサイズ感が明らかに縮んでいる。


「いやいやいや! 服も体に合わせて綺麗に小さくなってるんは親切やけど! ローファーもぶかぶかになってへんけども!」


うちはその場にしゃがみ込み、神殿の床に溜まった雨水の水たまりを覗き込んだ。


そこにしがみつくように映っていたのは、どう見ても12〜13歳そこらの、見知らぬ幼女の姿だった。


「なんでやねん!!!!(大声)」


誰もいない崩壊神殿に、うちの魂のツッコミだけが虚しくこだました。

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