第十六話:お湯の発見と、いざ冒険者ギルドへ!
「おっちゃん、ほんまにこれ、うちが貰ってええのん?」
キャラバンの馬車がイシル王国の美しい王都の城門をくぐったところで、隊長のおっちゃんからずっしりと重い袋を手渡された。中を覗くと、キラキラと輝く本物の金貨が数枚。
「応さ。オークの素材が消し炭になったのは痛てぇが、俺たちの命と商品を守ってくれたんだ。当然の報酬だよ、お嬢ちゃん」
「わぁ、おおきに! 大切に使うわ!」
さっそく金貨をガイドブックのアイテムスロットに格納する。スマート決済用のお財布が潤うのは大歓迎や!
実はこの旅路の間、うちは護衛の男衆だけでなく、キャラバンに同行していた女性陣からもめちゃくちゃ感謝されていた。というのも、ある大発見をやらかしたからである。
それは二日前の夜のこと。
「あー、お風呂入りたい。さすがに水浴びるのは風邪ひくわぁ」とボヤいていたうちは、ふと思いついた。
(待てよ? 魔法カードを解放する時に、最初から『お湯』のイメージを強く込めたらどうなるんやろ?)
実験がてら、大きめの木桶に向かって頭の中で『42度の上質な露天風呂の湯』を想像しながら「ウォーター!」と唱えてみたら……。
湯気がもわもわと立ち上る、最高にいい湯加減のお湯がザパーッと溢れ出てきたのだ!
「便利や!!! これがあれば、異世界でも毎日快適お風呂ライフが送れるやんか!」
これには毎日冷たい水で体を拭いていた女性陣が大喜び。「コハルちゃん、ほんまにありがとうね!」「まさか旅の途中で温かい行水ができるなんて!」と、代わる代わる頭を撫で回されて高級なお菓子まで貰ってしまった。
「いえいえ、お役に立ててよかったです〜♪」とお淑やかな幼女を演じておいたけど、中身は「これ、将来温泉ビジネスで大儲けできるんちゃう?」と企む強欲関西人である。ゴンも一緒にお湯に浸かって、ふやけたキツネみたいになってて可愛かったなぁ。
◇
そんなこんなで、キャラバンのみんなと笑顔で別れたうちは、王都の賑やかな大通りを歩いていた。
白壁と青い水路が張り巡らされた王都は、ガイドブックに書いてあった通り、ため息が出るほど綺麗。でも、観光名所を巡る前に、まずはあそこに行かなあかん。
「――よし、着いた。ここが異世界定番の『冒険者ギルド』やね!」
見上げるほど大きな建物の入り口には、剣と盾が交差したお馴染みのマーク。
ガイドブックの『初心者の歩き方ページ』によると、ここで登録を行えば、この世界での正式な【身分証明書】が貰えるらしい。
いくら神様から一年分の生活費を貰ってるとはいえ、宿に泊まるにも門を通るにも、身分証がないと「どこの馬の骨や」「迷子の幼女か」と怪しまれてまうからな。
「……よし。中に入ったら、怖そうなおっさん達が酒飲んでて『あァ? なんだぁテメェ、こんなガキの来るところじゃねえぞ!』とか絡んでくるテンプレが待っとるんやろ? 望むところやん。うちの極太レーザー魔弾の錆にして……いやいや、手加減手加減! 平和が一番ですん!」
うちは頭の上のゴンを優しくポンポンと叩いて気合を入れ直すと、ギルドの重厚な木製の扉をガラガラと力強く押し開けた。
待ってろよ、うちの記念すべき異世界身分証明書!




