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第十七話:うちの知ってるギルドと違う


重厚な木の扉をガラガラと押し開けたうちは、心の中で完全に身構えていた。


床には食べ散らかした骨や酒が転がり、壁には手配書がベタベタ。

そして「あァ? なんだぁテメェ、迷子の幼女が来るところじゃねえぞ!」と凄んでくる、モヒカン頭のおっさんや盗賊面のごっついハゲの冒険者が、昼間から安い酒を煽っている――。


「さあ、どっからでも絡んできぃ!」と、エセ関西人の血を滾らせて一歩踏み出した。


「――いらっしゃいませ。冒険者ギルド・王都中央支部へようこそ!」


「……へ?」


鼓膜に届いたのは、ドスの利いたダミ声なんかじゃなかった。

鈴の鳴るような、あるいは高級ホテルのフロントのような、洗練された爽やかな声。


うちは思わず足を止め、パチパチと瞬きをした。


そこに広がっていたのは、小綺麗でピカピカに磨かれた大理石の床と、落ち着いたウッド調の内装。

入り口には、キチッと体にフィットしたスーツっぽい制服を着た、ジェントルマンなドアボーイっぽいお兄さんが、120点満点のビジネススマイルで一礼していた。


「本日はどのようなご用件でしょうか、お嬢様?」

「あ、えっと……ぼ、ぼうけんしゃの、とうろく、に……」


あまりのハイソな雰囲気に気圧され、思わず声がロリっ子幼児モードになってまう。


「左様でございますか。では、あちらの受付カウンターへどうぞ。頭の上のかわいいお連れ様も、どうぞご一緒にお入りください」

「あ、おおきに……」


お兄さんに促されて中へ進むと、さらに脳内ツッコミが追いつかなくなった。


ずらりと並んだ受付カウンターの向こうには、全員お揃いの清楚な制服を着た、これまた美人な受付嬢のお姉さんたちがズラリ。

奥の方には、荒くれ者が殴り合う酒場……ではなく、間接照明がめちゃくちゃオシャレな、バーカウンター風のカクテルスペースまで併設されている。


カウンターでグラスを傾けている人たちを見ると、確かに革鎧を着た戦士風の人や、マントを羽織った旅装の魔法使い風の人はおる。おるんやけど……。


「みんな、めちゃくちゃ身だしなみ綺麗やん……。衣服のシミひとつないし、装備もピカピカや……」


うちは周囲をキョロキョロと見回しながら、声を潜めて脳内で激しく突っ込んだ。


(いやいや、おかしいやろ! うちの知ってるテンプレとちゃう! あれ!? モヒカンな人とか、悪代官の手下が似合うごっついハゲの冒険者とかは!? 昼間からエール片手に『新入り、ちょっと面貸せやぁ!』って凄んでくる教育係(笑)のおっちゃん達はどこにおんねん!)


どうやらイシル王国の王都中央支部は、冒険者ギルドの中でもエリートが集まる、超ホワイトで高規格な場所やったらしい。

周りの冒険者たちも、育ちの良さそうなシュッとした美男美女ばかり。当然、誰も「あァ?」なんて下品な声はあげへん。


「はぁ……。どっかの国は奴隷の腕輪でギスギスしてるっていうのに、この国はギルドまでリゾート仕様か。ほんま西側に進路取って大正解やったわぁ……」


カルチャーショックを受けつつも、居心地の良さにホッと胸をなでおろす。


「よし、ゴン。受付のお姉さんのところ行って、サクッと登録して貰おな!」

「きゅ〜う!」


うちはお詫びのローブの裾をちょこんと整えると、一番優しそうな笑顔を浮かべている受付嬢のお姉さんに向かって、トコトコと歩み寄っていった。

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