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第九話:夜道を照らす狐火はもふもふと共に


「あかん、やってしもた……!」


気がついた時には、あたりはもう真っ暗。森の木々の隙間から、ぽつぽつと星が見え始めていた。


「しまった、ゴンのもふもふ堪能しとったら、日が暮れてまう……って、いやいや! すでにとっぷり日が暮れてまってるやん! どんだけもふもふにハマっとったんや自分!」


新しく仲間になったゴンがあんまりにも可愛くて、抱っこしたまま「ふへへ、やわらかいなぁ、あったかいなぁ」とスリスリしていたら、まさかの時間泥棒に遭ってしまった。もふもふ、恐るべし。正義の塊やけど、時間管理の敵でもあるわ。


「あー、ご飯どないしよう。マツタケモドキの焼き残りはあるけど、こんなに暗いと手元も前もよう見えんし、うかつに火を起こしたら別の魔物に見つかりそうやしなぁ……」


うちはちんちくりんな体で、真っ暗な森の中で途方に暮れる。

すると、腕の中のゴンが「キャう!」と短く一鳴きした。


ぽわん、ぽわん。


ゴンの三つの尻尾の先から、淡い青緑色の小さな火の玉が浮かび上がり、私たちの周りを優しく照らし出した。


「お? おおお! なにこれ、めっちゃ綺麗やん! ゴン、これお前が出したん?」

「きゅ〜っ!」


ゴンが得意げに胸を張る。と同時に、うちの小脇に抱えられたガイドブックがピコーンと頼もしい音を立てた。


『ゴンの固有能力:【妖術・狐火】をカード化しました』

『狐火:周りを明るくできる。攻撃力はあまりないが、消費魔力が極めて少ない。※魔法スロットに格納されます』


「おーっ! 魔法スロットに『狐火』が増えとる! スライムのウォーターと同じシステムやね。って、カードの説明に書いてある『妖術』ってなんやろ?」


うちはガイドブックの解説ページを指でタップしてみる。相変わらず優秀やなこの本。


『妖術:東洋の術。陰陽師などが使う式神の術などが有名。この世界の一般的な「魔法」とは違う理屈(霊力や精神力)で発生している特殊な術技』


「へぇー、魔法とは別枠の珍しいスキルなんか。ど派手な大爆発とか鉄砲水にならん分、こういうランタン代わりの術は今のうちに一番ありがたいわ。さっそく数枚コピーして……よし、これで明かりの確保はバッチリ!」


お互いの顔が見えるくらいには明るくなった。けど、さすがにこの深い森の中で、ゴンの明かりだけで夜を明かすのは物騒極まりない。昨日は木の上で寝たけど、もっと安全な場所はないやろか。


「近くにいい感じの洞窟とかないんかな? ガイドさん、頼んます!」


ガイドブックの地図ページを開いて、現在地の周辺をピンチアウト(指で広げるやつ)してみる。すると、すぐ近くの岩壁のところに、小さなハテナマークがついた隠しスポットらしき表示を発見した。


「おおお、あったやん! ナビ開始!」


狐火を浮かべながら数分歩くと、大きな岩の壁に突き当たった。そこには、これみよがしに青々としたつたがどっさりと垂れ下がっている。

うちが手を伸ばしてその蔦をグイッと横にのけると……。


「ビンゴ! おあつらえ向きに蔦で入り口が隠されとるし、奥もそんなに深くなくていい感じやん。これなら外から見つかりにくいし、雨風も凌げるわ」


「きゅきゅっ!」とゴンも嬉しそうに中へ飛び込んでいく。


「よし、ゴン。今日はここに泊まろか! マツタケモドキ食べて、明日の作戦会議やね!」


うちは蔦のカーテンをきっちり閉めると、ゴンの狐火の温かい光に包まれながら、ようやくホッと一息つくのだった。

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