第9話 燃える家
ボルド達三人がライルの家の扉を破って入ったのは、二人が裏口から逃げて数分後のことだった。
入ってすぐに、三人は武器を構える。予想には反して中には誰もいなかった。
「‥‥んだよ、いなかったじゃないか」
ジェイドは弓をおろした。
「ライルの妹が逃げるとしたらここしかない。妹はここに来た、ライルは妹を連れて逃げたんだ」
話しながらボルドは裏口を見つけた。
「つまり私達はライル君に置いてかれたってわけね」
フィオナは二人を睨んだ。
「依頼は失敗したってこと?‥‥金貨百枚よ!」
「焦るなって、まだ遠くへは行っていない。すぐに追いつくさ」
肩に触れようとしたジェイドの手を、フィオナは叩いた。
「その通りだ。ライルの足では逃げようがない。まして妹もいる」
ボルドは裏口を開く。
林が続いており、薄っすらと道が見える。
「追いかけるぞ」
先に向かったボルドの後ろを、ジェイドとフィオナが続く。
「全く、何で私がこんなことを‥‥」
「金の為だろ?‥‥フィオナ‥‥おたくも大変だねえ。美容の為に大金が必要なんだから。その為に花屋のあんちゃんから、金を巻き上げようって言いだしたのは大したもんだ」
「それはあんたも同じでしょ! 何人、女を買えば気がすむんだか」
「へへ」
ジェイドは肩をすくめる。
「無駄口を叩くな」
ボルドに言われたが、
「そういうあんたが一番、金集めに必死じゃん? まあ、Aランクパーティーの長っていったら、そりゃ凄いけどさ」
「ふん」
ボルドは鼻で笑った。
「俺達なんかより、王宮のやつらはずっと守銭奴だ。何しろ、金でランクを売ってるんだからな」
「違いない」
フィオナは立ち止まって振り向いた。
「どした?」
「坊やをさっくりヤって終わりだと思ったのに‥‥こんな時間に、こんな藪をこぐはめになるなんて!」
「夜更かしは美容の敵だね」
「もう頭にきた!」
フィオナは杖を掲げる。下ろした先はライルの家を向いていた。
「我願う、願うは炎、願うは‥‥」
「お、おい!」
制止する間もなく、火の玉がライルの家に向かっていった。
小さな家は、炎に包まれ、煙に映った火の紅い光が、星空へと立ち上っていく。
「あー、すっきりした!」
「‥‥怖い女‥‥」
「何か言った?」
「いやいや、丸焦げにされるのはごめんだってことさ」
ボルドはそんなやりとりを黙ってみていたが、すぐにまた歩きだした。
今はライルの妹を捕まえる事。そしてその金でパーティーをAランクにして、自らの名前を王国で不動のものにする事。
それ以外は、全て些末な事でしかなかった。




