第5話 戸口の馬車
「では今日は失礼します!」
冒険者ギルドの中、パーティーの仕事が終わったので、僕はテーブルに座っているボルドさん達に頭をさげた。
「あれ、花屋の兄ちゃん、もう帰るのかい?」
「ええ、今日は‥‥用事があるので」
「へへ、野暮用か?」
ジェイドさんが小指を立てる。
「い、いえ、そういうわけでは‥‥」
「そうよね、ライル君は真面目だものね」
フィオナさんのその言葉に助けられながら、僕はボルドさんから今日の報酬をもらう。
「今日の手間賃だ」
パーティーに支払われた額に比べれば、僕がもらうのは微々たる額だけど、それでもコツコツ貯めた甲斐があって、目標を達成した。
僕は一目散に道具屋に向かう。
そこで一番、軽くて丈夫そうな籠を買った。
これならリナの仕事も楽になるに違いない。
多分、気に入ってくれるはず。
急いで家に戻る。
早歩きから、いつの間にか駆け足になっていた。
遠くに家が見え始めたとき。
「‥‥ん?」
戸口の前に、馬や馬車がとまっているのが見えた。
「‥‥‥‥なんだ?」
そんな馬車を横目に僕はドアを開けた。
「お兄ちゃん!」
ドアを開けるとリナが顔をあげた。狭い室内には何人も人がいたが、知っているのは街のトマス司祭だけだった。
真ん中の人は神官だろうか。純白の長衣に金の刺繍‥‥聖王国の教会の紋章がついている。その人は穏やかな顔で僕を見ている。それと修道女が二人。灰色の修道服と白い頭巾。若い女性だ。そしてそのまわりに立っているのは聖騎士。白銀の鎧に、青い外套。兜の面頬を下ろしていて顔は見えない。
「おお、あなたが、お兄さんですか?」
身分の高そうな神官が声をかけてきた。
「私は聖王国の神官長、ハーヴェイと申します。此度は急な訪問、まことに申し訳ありません」
神官長は恭しく頭を下げてきた。
トマス司祭は頷く。
「ライル君、ハーヴェイ神官長は、リナちゃんに用事があって来たんだ」
「‥‥リナに?」
僕はリナの顔を見た。
困っているのか、驚いているのか‥‥判断のつかない複雑な表情をしている。




