第3話 古い木の花籠
「またよろしくお願いします」
僕は二人にお礼の言葉を言って、ギルドから出た。
「‥‥‥‥」
見上げれば、星が瞬いている。
金貨が二枚の予定だったが、手のひらにのっているのは銅貨が三枚だけ。
もうすぐリナの十六歳の誕生日。去年は何もあげられなかったが、今年ぐらいは兄として何かしてあげたいという、ささやかな野望がある。
そういうわけでランクアップ貯金以外に、誕生日貯金を少しずつ貯めている最中だ。
ランクアップは‥‥また今度で、銅貨二枚を生活に、一枚を誕生日貯金にまわすことにする。
なんでそんなに少ないの?‥‥と、リナが心配するといけないので、途中で買い食いして散財してしまったことにしよう。
今をいくらバカにされても構わない。
いつか必ず立派な冒険者になって、アルヴィンさんの隣に立つんだ。
そうしたら、必ずリナも僕を誇ってくれるから。
「ただいま」
僕が家の戸を開くと、リナが慌てて走ってきた。
「お兄ちゃん! 遅かったじゃない! 何かあったんじゃないかと思って心配したんだから!」
僕は父さん譲りの黒髪だがリナは母さん似の金髪だ。
リナは長い髪を後ろで結んでいる。色が白くて顔立ちも整っていて‥‥兄の贔屓目を差し引いてもかなりの美人だ。
「ああ‥‥その‥‥ギルドの仕事は終わったんだけど‥‥おかげでお腹が空いて、つい買い食いしちゃって」
僕は二枚の銅貨を見せた。
「え?‥‥報酬‥‥これだけ?」
「ごめん!」
僕は素直に謝った。
「しょーがないなー、お兄ちゃんは‥‥」
納得してくれたのか、リナは笑った。
「あ、それで今日はね、お花が全部売れたのよ」
「そりゃ凄い」
「明日、早起きして仕入れにいかないと‥‥マーガレット、あるかな‥‥あと、スミレと‥‥」
リナは楽しそうだ。そんなリナの顔を見てると僕も嬉しくなってくる。
僕は横目で、リナが街に花売りに行くときに持っている手持ちの籠を見る。
木で出来ていて、かなり重そうだし、あちこち割れている所もある。
だから誕生日には軽くて持ち運びしやすい籠をあげようと思う。
「今度姫さまがこの地区にいらっしゃるんだって」
「へえ、何をしに来るんだろうね」
「分かんないけど、きっとお祭りみたいになると思う。その時、一緒に行こうよ」
「‥‥んー‥‥仕事がなかったらね」
「一日ぐらいいいじゃない」
多少休んだところで、全く平気なぐらい稼げるようにならなければならない。
リナの顔を見ながら、僕は心の中で強く思っていた。




