第2話 三枚の銅貨
ボルドさんのパーティーは、あれからすぐにダンジョン攻略を完了した。
僕たちは依頼を受けた冒険者ギルドに戻ってきた。
「はい、依頼の完了を確認しました」
窓口に、ダンジョン最奥で入手した宝石‥‥のようなものを渡すと、受付の女性は書類を書いた。しばらくして報酬の入った革袋がボルドさんに渡された。
袋を持ったボルドさんが僕たちの座っているテーブルに戻ってきた。
「ボルドの大将、そろそろ貯まったんじゃないの?」
既に何杯かのお酒を飲んでいたジェイドさんは、テーブルに足を乗せながら聞いた。
「ああ、あと二、三回ってところだ」
「ひゅー! これでいよいよ俺らもAランクの仲間入りって所だな」
「‥‥ふふ、せっかちね。そういうときが一番、危ないのよ」
「全くだ」
ジェイドさんは肩をすくめる。
「まあ、パーティーの貯金もいいんだが、とりあえず、今回の報酬の個人分をもらいたいんだが?」
「そうだな」
ボルドさんは何枚かの金貨をジェイドさんとフィオナさんの前に置いた。
「お、いいね! これで、今晩はいい夢が見れそうだ」
「その夢の中に、何人の女性が出てくるのかしら?」
「じゃあ、お前も来るかい? フィオナ」
「遠慮しとく、私はちゃんとした使い道があるから」
フィオナさんは金貨をしまうとギルドから出ていった。
「あの‥‥」
僕は恐る恐る声を出した。
「ん? 何だライル?」
「あの‥‥僕の‥‥賃金は‥‥」
「‥‥お前は依頼に失敗した扱いになっている。だから報酬を分ける必要はない」
「‥‥‥‥」
僕は唇を噛んだ。
「だがライル‥‥あそこでお前を止めなければ、奥にいるゴブリンキングにやられていただろう。あれは正しい判断だった」
「そうそう、また今度挑戦すればいいのさ。まだ若いんだしさ」
ジェイドさんはハハっと笑った。
「‥‥はい」
「とは言っても、無給では次の仕事に差し支えるだろう」
ボルドさんは、テーブルの上に三枚の銅貨を置いた。
「次の仕事もお前の力が必要だ。頼むぞ」
「‥‥はい」
僕はその銅貨を拾いあげる。
銅貨三枚では、その日の食事にも足りない。
家には妹のリナがいる。
両親をたて続けに亡くして、今は二人で暮らしている。
リナも花売りで家計を支えてくれてはいるが、暮らしは厳しい。
とは言え、僕がこうして無事にダンジョンから帰ってこられたのは、ボルドさんたちのおかげなんだ。
今日はリナの所にちゃんと帰れることを喜ぼうと思う。
ジェイドさんの言う通り、これからもまだ挑戦する機会はあるんだから。




