第1話 灰燼の夢と荷運び
世界は今、炎に飲まれて全てが灰燼になりつつある。
俺はその光景を見ている。
燃え盛る炎の中で逃げまどう人々、崩れ落ちてゆく建造物。
見つめる俺の瞳には一欠片の憐憫も浮かんではこない。
因果応報‥‥世界の理はただそれだけだ。
俺はただ‥‥笑い続ける。
これは‥‥全てを奪われた者たちの復讐の物語。
僕は王都で冒険者をしている。
冒険者と言っても、僕はまだ下から数えて二つ目のFランク。しかも何処かのパーティーに荷運びとして臨時で入れてもらう程度のことしか出来ず、まだ戦闘経験はほとんどない。あと一つ上がれば、正式にパーティーメンバーの一員になれるし、もっと上に上がれば自分でパーティーを作ることだってできる。
ここが踏ん張りどころだ。
「おいライル、遅れるな!」
「はい!」
大きなリュックを背負って、今日も僕はダンジョンに潜っている。
薄暗いダンジョンの中、戦士のボルドさんが魔物の群れに大剣を振って突っ込んでいく。
「なんだよ、ゴブリンしかいねえのか!」
“GIAAAA!”
ボルドさんの剣の一振りで、ゴブリンが三体、同時に吹き飛んでいく。
このパーティーはBランク。あと少しでランクアップの申請登録料が貯まるらしいので、そうなればいよいよAランク。より難しい仕事を請け負ったり、王国勅命の仕事を受けたり出来る。それよりも、この王国の勇者アルヴィンさんと、一緒に冒険することもあるらしくて、それが羨ましくて仕方がない。
「ライル! ぼうっとしてるな! 一匹、そっちに行ったぞ!」
「はい!」
僕は腰から剣を抜いて構えた。
安くて古い剣だけど、手入れはちゃんとしているので切れ味はいい。
“HIHIHIHI!”
「‥‥‥‥」
手負いのゴブリンがこっちに向かってきてる。
「はあ!」
ゴブリンが爪をたててきたけど、僕は先に剣を振った。
「!」
だけど、ゴブリンは飛び退いて避けて、すぐに飛んできた。
“GAHAHA!”
「しまった!」
引き裂かれる‥‥そう思った瞬間、
“GIA!”
矢がゴブリンの体に刺さった。
紫色の血を流しながら、ゴブリンは地面に落ちる。
そのゴブリンが火に包まれた。
「全く、花屋の兄ちゃんはなっちゃいないねえ」
ジェイドさんが弓を持ったまま笑う。
その反対側にいる髪の長い女性は魔術師のフィオナさん。
「ライル君は無理しなくていいのよ」
フィオナさんはいつも僕を気遣ってくれる人だ。
「すみません」
僕は頭をさげた。
「あと少しでここのダンジョンも終わりだから、ライル君はここで待ってた方がいいわね」
「い、いえ! 大丈夫です」
「花屋の兄ちゃん、こっから先は敵が強くなる。そこで兄ちゃんに何かあると、依頼は失敗になる。兄ちゃんの手間賃も払えなくなっちまうんだ」
「‥‥分かりました」
二人に諭されて僕は頷いた。
「じゃあね、あ、もし敵が来たら出口に向かって逃げてね」
「‥‥はい」
二人はあっという間に奥に行ってしまった。
遠くで硬いものがぶつかる音や、魔法の爆発音が流れてくる。
「‥‥‥‥」
今日もまた最後までついていけなかった。
ダンジョン攻略がこの仕事の条件。
つまり、僕は失敗したことになる。
もっと強くならないと‥‥。
僕は握った手に力を込めた。




