第22話 英雄の末路
「う‥‥うわあああああ!」
剣を放り投げて、尻餅をつく。
「ゆ‥‥許してくれ‥‥俺は‥‥金が欲しかった‥‥その機会があるから‥‥負けてしまったんだ」
頭を抱えてうずくまる。
“‥‥あんたって相当のクズね。それを見抜けなかった私がバカだった”
「‥‥あ?」
ドゥーガンは薄目を開けて顔をあげた。
「‥‥‥‥あ‥‥が」
背中に何かが突き刺さった。
「ば‥‥俺は‥‥こんな‥‥英雄‥‥だ」
言葉は口から噴き出した血が遮った。
前のめりに倒れ、そしてそこでドゥーガンの命の灯は消えた。
☆☆☆
「【水鏡】は、そんな使い方もあるんだな」
本来は亡者の姿は生者には見えない。
「‥‥卑怯なやり方だったな」
血だまりの上に倒れているドゥーガンを見下ろし、俺は正直な感想を口にする。
=正々堂々と戦ってどうする。お前の取り柄は、死なぬことだけだ=
「‥‥言ってくれる。‥‥ところで、こいつは亡者にならないのか?」
=無理だな。邪念が多すぎる=
ウィニフレッドはネルに顔を向けた。
ネルは死んだ元相棒を黙って見下ろしている。
“清々しい程の小者でクズだった。こんな男とずっと組んでいたなんて‥‥自分のバカさ加減に呆れてしまう”
そう言いながらもネルは笑っている。
“ざまあみろ! あははは!”
その顔は心底、嬉しそうだ。
ネルの体から光の粒が舞い上がり、段々と薄くなっていく。
“思い残すことはない”
「そうか」
俺はネルに手を伸ばす。
触れることはできないはずだが、それでも何か心に触れたような気がした。
何かが俺の中に流れ込んでくる。
これがネルのスキル‥‥【身体強化】だ。
“ありがとう”
それだけ言い残して、ネルは消え去った。
「‥‥‥‥」
後に残ったのはありふれた人間の世界だ。
まるで頭上の碧い月が、彼女を吸い取ってしまったかのようだった。




