第15話 ユルサナイ
闇がある。
それを見つめているのか。それとも自分という存在が闇なのだろうか。闇と思っているだけで、それはただの空間かもしれない。
時間は瞬間的にここに在るのか、それとも無限の時間の果てに在るのか。
何も分からない。
だが分からなくても全く問題ではない。
どうでもいい事だ。
思うことはただ一つ。
“ユルサナイ”
その思念だけが、強く、噴き出し続けている。
僕は‥‥死んだんだろう。
多分、ここは死後の世界だ。
剣に刺し貫かれて‥‥あの状態で生きていることなどありえない。
刺したのは勇者アルヴィン。
王が犯した間違いを無かったことにする為に。
そんなことってあるか?
僕らはただ普通に生活していただけだ。
僕も‥‥リナも‥‥。
声をあげようとしたけど、そのやり方が分からない。
近くにリナはいないのか‥‥。
背負っているとき、僕の体を掴んでいたリナの手から力が抜けていったのを感じた。
だけど僕は認めたくなかった。
話しかけて‥‥それで現実が変わることはない‥‥そんなことは知っていたけど。
僕らが何をした?
勇者になりたい‥‥。
聖女になれるかもしれない‥‥。
そんなささやかな夢も持っちゃいけないって言うのか?
王国の為に、王国に切り捨てられた。
“ユルサナイ”
ボルドのパーティー、
ひとの良い顔をして僕達を売ったトマス司祭。
いや、トマス司祭個人じゃない。
聖女の顕現を理由に、王が気に入った女性を召し上げる、その教会の全て。
女神の微笑みで、王‥‥自分の父親に、市中の女性を差しだすセレスティア王女。
リナを襲った聖王国の王、ゴドフリート三世。
そして勇者アルヴィン‥‥勇者は王国の守護神‥‥彼が守護しているのは、この憎むべき国そのもの。
そうだ‥‥彼ら個人じゃない。
この聖王国の全てが、憎むべき対象だ。
“ユルサナイ”
許すものか!
僕とリナを絶望に落とし、未来を奪った!
その全てを壊し尽くし!
灰燼に変えてやる!
今は無の状態かもしれない。
だが、果てしなき時間の果て‥‥転生して違う人間になろうとも、必ずや同じ地獄に叩き落してやる!
それが叶わないとしても、僕はここで未来の果てまで世界を呪い続ける。




