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第14話 誰もが憧れる剣

 何分か‥‥何時間かただひたすら走り続ける。そのうちに足が動かなくなった。

 僕は前のめりになって倒れた。

 体が重い。

「‥‥リナ」

 僕が倒れたすぐ隣に、リナも腰を落として、音もなく横になった。

「‥‥‥‥な!」

 リナの背中には、三本の矢が刺さっていた。

「‥‥ごめん‥‥お兄ちゃん‥‥私‥‥」

「大丈夫だ‥‥今‥‥医者に‥‥」

「‥‥‥‥」

 僕はリナを背負った。

 炭焼き小屋まではすぐそこだ。

 もしかしたら手当の道具があるかもしれない。

「‥‥‥‥はあ‥‥はあ‥‥」

 歩く度に草に赤色が滴り落ちる。

 脇腹が燃えるような感覚に変わる。

 痛みは不思議と感じない。

「‥‥リナ、家に帰ったら‥‥プレゼントがあるんだ、何だと思う?」

 聖女にはならないとしたら‥‥あれは使うはず。

「前から‥‥欲しがってた‥‥花籠‥‥」

 何とか貯金して、やっと買った。

 リナの喜んだ顔が見れるなら、多少の節約なんて苦でもない。

「‥‥‥‥み、見えた」

 小屋が見えた。

 一歩‥‥また一歩‥‥足を踏み出していく。

 そこに誰かが立っていた。

「‥‥アルヴィン‥‥さん?」

「‥‥‥‥」

 アルヴィンさんは、僕の方にゆっくりと近づいてくる。

「‥‥逃げて‥‥来ました」

「‥‥‥‥」

「どうか‥‥リナの潔白を‥‥」

「‥‥無意味だな」

 アルヴィンさんは抑揚のない声で言い、リナをちらっと見た。

「?」

「‥‥なぜなら、お前達はここで死ぬからだ。聖女を装い、王を襲った不届き者と、それを指示した兄として‥‥」

「‥‥な‥‥何を‥‥」

「全てが仕組まれたことだ。その中には私も含まれる」

「‥‥‥‥」

「嘘だ‥‥」

「勇者は人々の為に戦う‥‥その通り。だが、その多数の人々の為に、個人を犠牲にしなければならない時がある」

「‥‥‥‥」

「ゴドフリート三世は賢王でなければならない。そして教会は人々の心の支えでなければならない‥‥なので、お前達に余計なことを言いふらされるのは困るのだ」

「‥‥‥ぐ‥‥‥は」

 立ち上がろうとしたけど‥‥体が言うことを聞かない。

 仰向けになっている僕を、上から見下ろしている。

 どんな氷よりも冷たい瞳で。

「お前達は王国に切り捨てられた‥‥どう足掻こうとも無理で‥‥無意味だ」

 聖剣を抜いた。

 誰もが憧れる勇者の剣‥‥それが僕に突き立てられる。

「何だろうが‥‥僕は!‥‥絶対に‥‥許さない!」

「‥‥‥‥」

 視界は狭く、小さくなって‥‥そして闇の中へと消えていった。

挿絵(By みてみん)

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