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第11話 偽聖女の烙印

『ほら、前から欲しがってただろ』

 僕はリナに花籠を渡した。

『これって‥‥』

 受け取ったリナは目を輝かせている。

『軽い!』

『気に入った?』

『もちろん!』

 リナは両手で籠を持ってクルリと回った。

『籠が軽いからもっとたくさん花束を入れられる!』

『それだと、重くなって、元も子もなくなるんだが‥‥』

『大丈夫、私、頑張るから‥‥お返しに‥‥お兄ちゃん、何がいい?』

『‥‥別に‥‥いいよ』

『そんなこと言わないで、ねえ、お兄ちゃん』

「‥‥‥‥ん」

「お兄ちゃん‥‥起きて」

「‥‥‥‥リナ?」

 今まで笑っていたはずのリナの顔が、怯えている表情に変わった。

「‥‥なんだか、外が騒がしい‥‥」

「!」

 僕は慌てて窓に近寄る。

 カーテンの隙間から外を覗いた。

 夜明けが近くなったせいか、僅かに光が室内に入ってきた。


挿絵(By みてみん)


「‥‥な‥‥」

 屋敷の柵の周辺が、夥しい数の兵士で囲まれている。彼らの持つ槍の光が、チカチカと輝いていた。

 門の前、屋敷の入り口付近には、白銀の鎧に青い外套の騎士‥‥リナを迎えにきたときに見た、聖騎士だ。

 その手前にいる黒いローブの人物は見た事がないが、高位の魔法使いだろう。


「‥‥くそ‥‥アルヴィンさんがいないときに‥‥」

 入れ違いになったようだ。

 いればきっと説明してくれる。一旦は捕まるかもしれないが、アルヴィンさんが無実を証明してくれれば、すぐに解放されるに違いない。

 今は逃げるしかない。

“勇者の屋敷に立てこもりし、悪の者達に告ぐ!”

「悪の‥‥者?」

 それは黒衣の男が声を出しているようだったが、窓が震える程に大きい。魔法によって拡声されてでもいるのかもしれない。

“私は聖王国魔導士長のザイラス、王の勅命、そして神の思し召しにより、王に危害を加えた偽聖女、並びにその協力者である兄ライルを、聖王国に仇なす大逆の罪人として、ここに断罪する! 偽聖女セヴェリーナは、聖女の名を騙って王宮に入り込み、畏れ多くも国王陛下の御身に刃を向け奉った。その罪、万死に値する! 兄ライルは、その罪人を匿い、あろうことか勇者殿の御屋敷にまで穢れを持ち込んだ。その罪もまた同じである! 聖王国の法と神の御名において、両名に申し渡す。‥‥投降は認めぬ。弁明も認めぬ”

「‥‥なんだって!」

 襲われたのはリナの方だ。リナが罪を擦り付けられている。それに、リナは刃物なんて使っていない。ひどい言いがかりだ。

“生死は問わぬ。神の裁きは、すでに下されている!”

「‥‥‥‥」

 兵士と聖騎士達は喚声をあげた。


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