告解
※精神的緊張=ストレスです。
物語の特性上なるべく現代用語を使わないで書こうとしたら、わかりずらい表現になってしまいました。
(本当はグッジョブとかナイスとか使いたい〜)
わかりにくいところがあれば指摘頂けると補足していきますm(*_ _)m
マーサに連れられて来たのは時々来ていた教会だった。
両親には心を落ち着かせるのに神に祈りを捧げると言って出てきた。
彼奴らも神ノーダムを持ち出されれば頷くしかないもんね。
最近はあまり教会に来てなかったな。
以前は教会に来ると落ち着いていたのに、だんだん助祭や巫女の私を見る目や態度に苛立ちを感じるようになって足が向かなくなっていた。
「これから告解室に入ります。
絶対に嘘を言わず正直に話して下さい。」
マーサが真剣な瞳で私を見つめて言ってきた。
私は頷きマーサと繋いでいる手をギュッと握ったらそれよりも強い力で握り返してくれた。
マーサも緊張してるーー
告解室に2人で入り司祭様を待った。
告解室は告解する者と聞く者の間に仕切りがあり座ったらちょうど大人の顔の高さに30cmの小窓がある。
仕切りの向こうで扉が開く音がして誰かが入ってきて小窓か開かれた。
「貴女の罪を告白し神ノーダムに許しを乞いなさい」
「私の仕えるお嬢様が恐れ多くも神前裁判の夢をご覧になられました。そしてーー」
「お待ちなさい!」
司祭様は焦ったようにマーサの言葉を止めた。
一旦部屋を出られ私達の方の扉を開けた司祭様のお顔は物凄い形相で、悲鳴を飲み込んだ自分を褒めたい。
70才くらいおじいちゃんが白い短髪を逆立て目をギラギラさせてこっちを見てくるんだもん!
恐怖以外ない!!
「ここでお聞きする訳にはいきません。
こちらへ来てください。」
私とマーサは建物の奥へ連れていかれ分厚い扉のある部屋に入った。
「夢を見たのはカルセドニー様ですね。
全てお話下さい。」
マーサを見るとマーサは私に頷いて話すように促した。
私は姉の婚約者と恋仲になり姉の婚約破棄の原因となった事やその果てに殺された事、両親や私の婚約者の計画に気づいたマーサも殺され、マーサが神前裁判を申請した話をした。
神前裁判の内容の話をしようとした所で司祭様が止めた。
「もしその話が本当ならわたしのような未熟な者が、神に許された神前裁判の内容を聞く訳にはまいりません。」
あのー、マーサは夢の話って言ったよね。
それでも駄目なの?
神前裁判は神聖なものだって習ったけどここまで反応されるとは思わなかった。
マーサはカバンから手紙を出して司祭様に渡す。
「神前裁判の詳細をお嬢様からお聞きして書いてまいりました。
よしなにお使いください。」
この展開を予想して手紙を書いてきたの?!
凄いよ、マーサ!
司祭様は震える手で受け取った。
「では教会から連絡があるまで自邸からあまり外へ出ないようにして下さい。」
「ですが明日、お嬢様はタリグ侯爵子息との婚約を整えるためにタリグ侯爵家にいかねばなりません。」
「精神的緊張で倒れた娘にそんな負担をかけると?」
司祭様に私がぶっ倒れた話もしたので驚いていた。
「·····」
私とマーサの無言で察してくれたのか、司祭様は哀れみの目で私を見た。
「わたしの方でもハシャス伯爵様に手紙を書きます。
カルセドニー様には暫く安静が必要だと。
それでも駄目なら枢機卿に相談すると言いなさい。
それとこの話は誰にもしてはいけません。
悪夢を見たとだけ言って誤魔化して下さい。」
実際悪夢のような未来だったから嘘じゃないな。
私達は邸に帰り父親に司祭様の手紙を見せた。
父親は手紙を読んでいくうちに険しい表情になり読み終えると大きくため息をつく。
死ぬ前の私はそれだけで叫び出したくなっていたが、今はなんとも思わない。
「どうしてこんな脆弱な娘になったんだ。」
「申し訳ありません。」
マーサが反論せずとにかく頭を低くしてやり過ごせと言っていたので、私はしおらしく謝った。
父親は私が癇癪をおこすと思っていたようで一瞬目を見開いたが、またため息をついた。
「司祭様からのお言葉だ。逆らうことはできん。
明日のタリグ侯爵子息との顔合わせは延期する。
早く体調を整えなさい。」
「はい、わかりました。」
私が部屋を出ようとした所で父親が独り言のように小さく呟いた。
「役立たずがーー」
私は冷めた目で見てから扉を閉めた。
以前はあれほど体中に渦巻いていたどす黒いものが消え、代わりに冷たい氷の塊が覆っている。
だから役立たずと言われても心は凪いでいた。
外で待っていたマーサに笑顔で了承されたと伝え部屋に戻る。
途中で母親とアゲートに会った。
母親もため息をついて困ったように私を見た。
「タリグ侯爵子息様との婚約は貴女の将来の為にお父様が無理して整えてくださったのよ。
何が気に入らなかったの?」
はっ!
よく言うわ。
利益があるからじゃない。
よくそんな押しつけがましく言えるもんだわ。
いっそ政略に必要だと言われた方がましよ。
「お母様、そんな風に言ってはまた病状が悪化してしまうわ。
カルセドニーだって気持ちを抑えられなくて辛いはずよ。」
それ傍から聞けば我儘を我慢できなくて病気になった、つまり仮病って言いたいんだよね。
後ろの侍女がこっちを見て嗤ってるの気づいてないの?
「申し訳ありません、折角の顔合わせなのに。
司祭様も私を見てとても心配して下さりお父様に手紙を書いて下さったの。」
その言葉に母親やアゲート、侍女はギョッとなった。
私が謝ったからじゃなくて司祭様が態々休養させるように手紙を書いたからだ。
俗世から一線を置く聖職者が一介の貴族令嬢の為に手紙を書く。
その異例に仮病と言ったアゲートも嗤った侍女も顔を青くした。
「カルセドニー、そんなに酷いなんて知らなかったの。大丈夫?」
「私より侍女達のほうが心配だわ。さっきまで笑っていたのに今は青い顔をしてるんだもの。
あなた達も教会に行かれては?
司祭様とお話しされるといいですよ。」
まさか私が怒りもせずに笑って嫌味を言うなんて思わなかったのだろう。
驚愕に目を見開いて震えている。
もう望み通りの反応はしないわよ。




