冒険者と一緒 1
翌日、俺とリズヴァーンが案内役となって、冒険者と領地を回った。
俺の中では【ファンタジー=冒険者】って考えがあるから、昨日からちょっとテンションが高い。
以前『日本に冒険者っているのかな?川◯ヒロシしか思い浮かばない』ってスマホで調べたことあるけど、思った以上にいた。
その中に珍獣ハンターの女優がいるのに、川◯ヒロシはいないんだ、なんで思ったのは今では遠い思い出だ。
異世界に転生しても、ここは乙女ゲームの世界だし、冒険ギルドとか商業ギルドもないから、冒険者もいないと思ってたけど、【この大陸にいない】だけだったみたい。
アキチカ達の話によると、ギルドが無いので逆に驚いたとか。
リズヴァーンも興味深げに話を聞いている。
やっぱり男なら冒険譚はワクワクするよね。
特にうちの国は海無し県じゃなく、海無し国だから、海の魔物の話とかは興味津々だ。
「でも、俺達もまだそこまであちらこちらには行った事無いんだけどね。
一応ギルドの規則として、パーティーを組んで2年以上、諸島の依頼を一定数受けて、キチンと達成したパーティーは、他の大陸へ行く権利をもらえるんだ」
「勿論、礼儀とかもキチンとしてないとダメだけどな」
ドワーフのスルティドが言うと、ミヤミヤムーが意地の悪い笑顔を浮かべて続ける。
「ドワーフは酒を飲み過ぎないって条件もあるけどね」
あー、ドワーフだとそうだろうね、など納得する俺の横で、リズヴァーンが不思議そうに尋ねる。
「それはどう言った意味なのですか?」
「ドワーフ、酒飲み。
飲み過ぎると喧嘩する。
暴れる。
絡むと迷惑」
眉間にシワを寄せたクラリが答える。
スックも同じように嫌そうな顔をして頷いている。
「あー、深酒しないと良いんだけどね、結構酒癖の悪い奴が多いんだよね。
そんでもって、何故かドワーフはエルフに絡みがちなんだよ」
アキチカの説明に、モルターセが首を振る。
「ワシはそんなことないぞ。
ただ俺の種族は武器をぶん回して戦うのが主流だからな、細身のエルフに偏見を持つ奴も一定数居るのは否定はせん」
「種族としての筋肉の質も付き方も違うんだから、仕方ないのにな。
それにしてもあんたもなかなか良い筋肉しているよな」
マッスル…じゃない、アッスルムがリズヴァーンの上腕二頭筋をポンポンと叩きながら言う。
言われて嬉しいだろうに、それを隠そうと無表情を取り繕うけど、口の端がニョニョしているのが、ちょっと可愛いと思う。
普段無口なリズヴァーンが、自分からも問いかけたり、微かな笑顔を見せたりしているのは、飾らない冒険者の空気が合っているのか、それともリズヴァーンの根っこが【貴族の裏ありまくり駆け引き会話】より、【肉体で語り合おう】って方が合っているからかな。
脳筋とは言わないけど、口より拳の方が似合うしね。
そんなこんなで思った以上に楽しく語らいながら、領地を見て回り、話の流れからか、昼からは冒険者も交えて狩りをする事になった。
これにはおじさんとおばさんも参加だ。
皆身体動かすの好きだからねぇ。
俺?
俺は勿論見学ですよ。
うちの国の狩は、基本的に猟犬で追い立てて、武器や魔法で仕留めたり、罠を使ったりだ。
近辺に出る動物なんて、大きくて猪くらいだから、魔法でも簡単に仕留められる。
魔獣の討伐になると、サイズが大きいから、魔法だけで仕留めるのは難しく、魔法で弱らせて、剣でとどめをさすって感じかな。
今日はこの大陸の魔獣を狩ってみたいとのリクエストなので、魔獣の生息地へ向かう。
と言っても、町や村の近辺には出ないから、森の奥へ行くだけなんだけどね。
動物より頭がいいから、人間の住処の近くには寄ってこない。
なのに何故学園の近くの森には居るのかって、それが【ご都合主義の賜物】ってやつですわな。
森の浅い辺りによく出るのは、ウォルキャット(猫に擬態した肉食の獣で土魔法を使う)や、ポイズンラビ(爪に毒を持っている雑食ウサギ)など、中型の魔獣が主だ。
この世界の魔獣と獣の違いは、毒や魔法で攻撃してきたり、人を喰う獣を魔獣と呼んでいる。
人喰い熊や人喰い虎なんか、この世界だと魔獣扱いだね。
冒険者6人とリズヴァーン一家3人、猟師が5人と俺の15人プラス猟犬2匹で森に入る。
おじさんとおばさんがペアで、猟師が一人、リズヴァーンと猟師がペア、残り3人の猟師は俺に付いてくれている。
あれ?俺って足手まといっ子?
先ずはおじさん達がいつもの様に、猟犬が追い立てたポイズンラビを仕留めた。
リズヴァーンも同じく一匹仕留める。
俺の身の回りは猟師さんが見張っててくれるので、俺は冒険者達の狩を見物することにした。
邪魔をしない様に、距離を開けて隠れて見る。
冒険者達の狩は、先ず双子が木に登り、クラリがサーチで獲物を探し、ハンドサインでスックに場所を教える。
その場所に矢を放ち、獲物をおびき出し、そのまま矢でメンバーのいる場所へ誘導する。
アッスルムの大楯で突っ込んでくる獲物の勢いを殺し、左右からアキチカとミヤミヤムーが剣で攻撃、息絶えたのを確認して、スルティドが血抜きをしてマジックバックへ収納、そんな流れだった。
2時間ほど狩をして屋敷へ戻り、解体作業をした。
スプラッタは苦手なので、俺は見学せずに、汗を流し着替えを済ませ、お茶を飲む。
結構歩いたから小腹が空いたので、サンドイッチを作ってもらい、美味しくいただく。
いつもなら、狩って来た獲物の一部は、今日の夕食になる。
食べる分だけ取り分けて、残りは猟師達が自分達の獲物を売りに行くついでに、卸すそうだ。
今日は、冒険者の狩った獲物を夕食に提供してくれると言うので、全てを肉屋へ持って行ってもらう。
猟師の獲物の代金は勿論猟師のもの、おじさん達の獲物の代金は町の運営資金に回るそうだ。
でも今日はその代金を冒険者へ渡す事にしたけど、冒険者が受け取りを拒否して、ちょっとごたついた。
『屋敷へ泊めてもらっているんだから、その宿泊代に獲物を渡すんだから、金は受け取らぬ』
『いやいや、まだ旅は続くのだろうから、先立つものは持てるだけ持つべきだ』
などなどとね。
最終的には冒険者が折れたけど。




