諸島連合から来た冒険者
ガチ寝をしていた俺をマリアンヌが起こしに来たのは、夕食の時間だった。
着替えてダイニングへ向かうと、見知らぬ男性達がいた。
もしかして、と思った通り、国境近くに居た人達だった。
「ではカエザルオン諸島連合からいらした方々なのですか?」
食べながらの会話はマナーが良くないので、食事の時は軽い紹介だけで終わった。
詳しくは食事の後サロンでくつろぎながら話を聞く。
もっとも俺が寝ている間に、おじさん達は詳しく聞いていたようだけど。
「ああそのようだ。
南の国を見て回った後、大陸を一周するために東に向かったそうだ。
東の国の国境で攻撃されて西に逃げ、こちら側の国境砦へ辿り着いたが、また攻撃されるといけないと、様子を見ていたそうだよ」
トーマおじさんが説明してくれ、確認するように相手を見ると、頷き話を引き継ぐ。
「初めまして、カエザルオン諸島連合の【悠久の海】で剣士、ユムユムの民のミヤミヤムーです」
お?もしかしてファンタジーに付き物の冒険者パーティーですか?
「アーチャーのスックです。
風魔法も使います」
おお?その見た目の感じ、もしやエルフ?
「クラリ、水魔法とダガー使う。
サーチ魔法も使える」
そして双子?
「タンクのアッスルムだ。
誇り高きカムラッカの戦士だ」
わーお、筋肉モリモリ!
「ワシはモルターセのスルティド、武器の手入れと荷運びが主だが、斧で戦いもする」
このおじさん絶対にドワーフ!
「俺が一応リーダーの秋親で、武器は一応剣かな?
情報収集をするのが役目にもなるんだけど、今回は下手こきましたよ」
この国(いや大陸)には冒険者や冒険者ギルドは無い。
国を外敵(侵略や魔獣)から守るのは軍や兵、領地なら派遣されてくる警備兵や領地を預かる領主が雇う私兵が安全を守る。
ファンタジーによくある傭兵が居ないのは、国か領主または貴族に雇われるから。
国や自分、領地を守るのに信用がないと安心して任せられないから、きちんと身元も調べて正式に契約するから、フリーなイメージの傭兵は存在自体がない。
それに狩人が動物も魔獣も狩るし、軍や兵が討伐もするので、冒険者の出る幕が無い。
だからこの世界には居ないと思っていたけど、他の国には居るんだね。
しかもその冒険者が、この国ではお目にかかったことのない亜人さん達だなんて、テンション上がるよ。
例えエルフが男性でも。
話を聞くと、幾つかのパーティーが船に乗ってこの大陸にやって来て、パーティー毎に東回り、西回り、うちの国を突っ切り北上するルートと分かれてこの大陸を回り、情報収集と交易のチャンスを見つけに来たそうだ。
諸島連合は島々で特徴があり、特産品も多く有るそうなのだけど、島々だけで取引するより、他の大陸へ販売ルートを確保し、外貨を稼ごうと言う試みらしい。
戦争が終わってまだ数十年だから、国を安定させる資金を他所から稼ぐって考えかな。
冒険者の殆どが、戦後生まれの者達で、出身の島や種族の隔たりなくパーティーを組み、復興の手伝いをしたり、漁や狩りをしたり、島から島へ荷運びをしたりしている。
そんな若者達のうち、仕事の取り組みを見て、このパーティーならと選ばれた人達が、今回未知の大陸へ渡っているそうだ。
そして国元を離れるパーティーは、男性だけのパーティー限定なんだって。
長旅になるから、女性にはキツイし、そんな長旅にうら若い女性が居たら、周りの若い男性達もある意味キツイだろう。
手を出しちゃいけないのに、船と言う密所で、手が届く範囲で女性が寝起きしたり、風呂に入ったりするんだよ?
個人的には食事風景もある意味エロい……いや、なんでもない、話を戻そう。
冒険者達は勿論他の大陸や、大和の国へも出向いているらしい。
未知の大陸へ向かうなんて、まさに冒険譚だよね。
「東の国は閉鎖的だから、うかつに近寄ると危ないと言うのは、南の国で聞いていたんだけと、まさかいきなり矢を放たれるとは思わなかったよね」
のほほんと言うアキチカに、ミヤミヤムーが突っ込む。
「だからやめようって言ったのに、アキチカが大丈夫って言ったんだよね」
「そうだよ、現地の人がやめた方が良いって言うなら、やめなきゃだよ」
スックのセリフに頷くクラリ。
「だが、ワシらは東から回れって言われたんだから、行かないわけにもいかんだろ?」
スルティドが援護をする。
6人の中で一番年上みたいだから、纏め役みたいなものなのかな?
「東の国は気の荒い者が多いから、迂闊に近寄らない方が良いのは本当のことだ。
彼の言う通り、現地の民の言うことは信じるべきだったな」
トーマおじさんの言葉にミヤミヤムーが「だよねー」と笑う。
「だが無事でなによりだ」
続いた言葉にアキチカが礼を言う。
「ありがとうございます。
戦うわけにもいかず、逃げて来たんですけど、森を抜けたと思ったら、立派な砦が有るから、またいきなり仕掛けられたらどうしょうかと…。
敵対する気は無いと青布振ったんだけどね」
「??」
何を言っているのかわからず、首を傾げる俺達。
「え?戦意が無い時って、青旗振らない?」
「いや、そんなことはしないな」
おじさんの言葉に「マジか」と言いながら説明してくれた。
どうやら島から島へ手っ取り早い連絡方法で、手旗信号もどきがあるらしい。
その中で一番簡単な意思疎通が、旗の色だそうだ。
赤ー近寄るな、逃げろ
黄ー状況確認、助けてください
白ー病蔓延
黒ーモンスター大量発生
青ー戦意は無い、降伏します
緑ー平和です
他にも細々とあるらしいけど、大雑把にこんな感じだそうだ。
灯台みたいな感じの【旗振り櫓】が各港に有って、船が近づいたら旗を振り、島の状態を伝える。
そして船からも決まった旗を振る。
例えば流行病で助けてほしいなら、白と黄色、クラスター防止なら、白と赤の旗を振る。
また、旗振り櫓は、敵襲などを島内の民に伝える役目もあるそうで、それは音で伝えるとかなんとか。
「そんな重要なことを他国の民に話して良いのか?」
おじさんが聞くと、
「いえ、監視の目が有りますから、島へ近づく前にバレますよと伝えるのも仕事のうちなんですよ。
船から島へ上陸する為に振る旗は四つですから。
その四つを正しく振らないと攻撃されますよ。
うちは復興がまだ終わってないから、他国とあまり揉め事を起こしたく無いんです。
だから、こっそり忍び込もうにも、海は見晴らしいいのでバレバレだから、お互い無駄な争いはやめるためにも、ある程度の情報は公開する…ですよ。
情報は秘匿するより、一部公開する方が上手くいく事が多いとは頭領の言葉なんですけどね」
なる程である。
おじさん達も頷いている。
興味深い話はまだまだ尽きないようだけど、双子が眠そうにしているのに気付いたマギーおばさんの気遣いにより、今日はここでお開きとなった。




