ベルアルム
私は美しい。
サラサラの髪は春の空のような透き通る水色、澄んだ湖のような瞳、いつも笑みをたたえたシメントリーの顔は、人の目を惹きつけます。
一つ上の学年に、女性に大層好まれている方が居ますけれど、あの方は女性以上に女性らしい美しさなので、私とは系統が違います。
南方の出身の商人も、男らし過ぎて系統違いです。
静謐な神殿に似合う美しさで、私の右に出るものはいないでしょう。
大聖堂に響く透明感のある声も勿論美しいですよ。
頭も良く、たいした苦労もなく、上位の成績を取れます。
美的感覚も鋭く、親は大神官と言う私は、神に愛されたと言っても過言ではないのでしょう。
そう、全てにおいて上質な私なのですけれど、足りないものがあるとするならば、パートナーの存在ですかね。
私の隣に並ぶのなら、勿論頭も良く、育ちも悪くなく、私のことをたててくれないといけません。
口は軽くなく、将来大神官となる私の足を引っ張らない為にも、周りに優しく接して、尚且つ控えめで、見た目も派手すぎず、どちらかと言うと私を引き立てるような………。
まあ理想を言い出すとキリがありませんね。
学園へ入学して四年が経ちますが、上級生や同学年に、私の隣に相応しい女性は居ませんね。
一学年下に2人ほど良さそうな方がいらっしゃいますが、お一人は色が華やか過ぎますかねえ。
澄んだ空や湖のような私の隣に、紅色は目に優しくないですね。
しかし、頭の回転も良さそうですし、全てを求めるのも酷ですから、色合いくらいは諦めますか。
一度どういった方なのか、話をしてみるのもいいかもしれません。
そう思っていたのですけれど、その女性は第二王子と婚約されました。
人から奪う程ではありませんよね。
もう一人の方はどうでしょう。
困ったことに3年に知り合いはいませんねえ、どうやって渡をつけましょうか。
急ぐ事もありませんし、機会があればお話する事にすればいいですかね。
そんな私はやはり神に愛されているのでしょう。
年明けのパーティーで、紅い方と親しげに話をしている女性が目につきました。
あの方は確か、サリフォル家のご令嬢でしたよね。
紅い方とお知り合いなのでしたら、同じ学年のもうひと方…確かお名前はヨルハイム嬢でしたかね、そちらもご存知かもしれません。
噂くらいならお伺いできるかもしれませんね。
声をかけてみましょう……。
「ふふふふ」
「ベルアルム様、いかがなされましたか?」
パーティー会場から神殿へ戻る馬車の中、従者に声をかけられました。
どうやら笑っていたようですね。
「あなたは、成人している貴族の女性が、表情豊かなのをどう思われますか?」
戯れに尋ねてみました。
「成人を過ぎてですか?
それは男女関係なく、よろしくない事だと思います」
「そうですよね。
驚いた顔や気分を害した表情を、本人は隠しているつもりなのでしょうけれど、全然隠されていないなんて……」
なんて愉快なのでしょう。
私はそう思いますけれど、従者の言うように、貴族としてはよろしくない事ですよね。
あの女性は他にどんな表情を見せてくれるのでしょう。
またお会いしたいですね。
神の愛は疑いようがありませんね。私の些細な願いを聞き届けてくれるだなんて。
サリフォル嬢が神殿へやって来ました。
ほんの一時間程しか居なかったのにも関わらず、色々と楽しませて下さいました。
光る魔石など、聞いた事もありません。
それより何より、あの彼女の嫌がる顔がなんとも…。
押し隠しているつもりで、引きつった笑いになっているところなども、なんと面白い生き物なんでしょう。
これは泣いている顔も見てみたいですね。
どんなゾクゾクとする泣き顔を見せてくれるのか、是非とも泣かせてみたい。
思いつきで婚約を申し込んだのですけれど、断られてしまいました。
どうやら幼馴染みと婚約したとか。
ふふふ、でも婚約は婚約ですからね、結婚ではありません。
幼馴染みはよく知っている相手ですから、私が出遅れてしまっただけです。
お互いをよく知れば、彼女も私のことを選んでくれるでしょう。
なんと言っても、私は神に愛された存在なのですから。
彼女はまだ3年生ですし、結婚するまで2年以上猶予があるでしょう。
それまでに私の良さをわかって貰えばいいのです。
焦らなくとも夏には5年生は卒業するのですから、そこからは私のターンですね。
ふふふふふ、待っていなさいキャスティーヌ、貴女の驚き顔も、嫌そうな顔も、泣き顔も、全て私が独り占めしてあげましょう。
神に愛された私に選ばれるのですから、貴女はきっと幸福になりますよ。
ふふふふふふふ………。




