ランフェル 2
公爵家の者達や、一部の侯爵家の者達には理解されているのだが、平民や、下級貴族になると、色々な事で誤解をしている者達が多い。
王族は国民の奴隷なのだ。
国民の生活を守って当たり前、何かミスをするとクーデター。
ミスをしないのが当たり前だと思われていて、失敗が許されない。
尊敬の眼差しが侮蔑の眼差しに変わるのは一瞬だ。
四六時中見張られていて、息をつく暇もない。
自由なんて無いのが当たり前……。
よく言われるのが、国民の税金で贅沢三昧な生活を送っている、と言う言葉だ。
贅沢とは?
沢山の豪華な衣装を作ると思われているが、それは技術や美的感覚などの向上の為であり、少しでも良い質のものを、美しい物を作ることにより、流行を作ることにより、技術などが進歩し、その衣装や技術を輸出し、国庫を潤すのも王族の務めだ。
一度着た衣装は、リメイクして養護施設に寄贈したりしている。
無駄にしているわけではない。
美食に関してもそうだ。
新しい料理法、食材などの研究は、一般家庭では難しいだろう。
料理を作るのもただでは作れない。
設備や器材も必要になる。
豪華な料理は外交の手段の一つにもなる。
勿論豪華な料理だけではなく、手に入りやすい食材や、限られた料理法で、少しでも美味しい物を作ることも研究されている。
そのレシピは城下町の食堂から広げ、アレンジを工夫し、それぞれの店の味、家庭の味へと広がっていく。
数多くの貢物を貰って、と言うけれど、プレゼントには見返りが含まれている。
金品だったり、仕事の斡旋など。
迂闊に手にできない。
内政省の者達が選別してくれているけれど、中には直接手渡してくる者もいる。
無碍に断ると軋轢を生むので、対処は慎重にしなければならない。
王族は完璧でなければならない。
少なくても人目のあるところでは。
うっかりあくびでもしようものなら、気が抜けていると言われるし、くしゃみをすればベッドへ押し込められる。
勉強や武術はできて当たり前、乗馬も優雅にこなして、大声を出して笑うことも、お腹が痛くてトイレへ駆け込むこともできない。
いつも人の目を気にして、完璧な王族を演じなければならない。
ストレスがたまる。
王族の取り巻きになれば甘い汁を吸えると思っている馬鹿な男達、一度でもお手つきになれば、贅沢な日々を過ごせると思っているゲスな女達、言葉にはせずすべて察しろと近づいてくる子供達、媚びてへつらい、目の笑っていない笑顔ですり寄ってくる老害達。
ストレスがたまる。
そんな貴族をまとめて、国民の不平不満を可能な限り公平に対処し、他国との交流もこなし、いつでも背筋を伸ばし、優雅に先頭を歩くのが王族。
ストレスがたまる。
なぜ私は王子に生まれたのだろう。
自由には責任がつきものだと言うけれど、自己責任で済む平民に生まれた方が幸せだったのではないのだろうか。
そんな考えは兄も同じだった。
私より王位に就く兄のストレスの方が重いだろう。
【周りに隙を見せるな、侮られるな、すべての国民の手本であれ、国民あってこその王族だと忘れるな、そして幸せであれ】
我が王家の先祖の教えだ。
こんなストレスだらけの生活で、唯一好ましい相手と結婚できる事は幸せな事だと思う。
兄はストレスのあまり、よく食べた物をもどしていた。
その兄を支えたのは、親衛隊長をしている幼馴染みの男性だ。
その男性に包まれて癒されて、なんとか皇太子の立場を保っていたのだが、後継として結婚をしないわけにはならない。
そんな時に出会ったのが、他国から留学に来ていた、兄より二つ下の歴史や文学に明るい才女で、隣国の第二皇女だ。
2年前成婚したのだが、義姉は兄の弱い部分も理解して一緒になったそうだ。
兄と親衛隊長が一緒にいるとよく、「ツーショ、尊いわ〜、捗るわ〜」と小声で呟いているけれど、意味はわからない。
以前は親衛隊長の前でしか見られなかった自然な笑顔が、最近では義姉の前でも見られることがあるので、きっと兄は幸せになったのだと思う。
これからも親衛隊長と義姉の二人で兄を支えてほしい。
勿論私も支えるつもりだが。




