ヒロインの友達ポジ
いや、ほらさ、こう、ねぇ…女の子がスタイルの良い子を羨ましく思って、どんな感じか触るなんて、あるあるだよね?
若いメイドの子のお尻を触るとかは、ほら、えーと……そうだ、女性のお尻が幾つくらいから垂れてくるかの確認!
抱きついたのは、感情が昂ってだよ、うん!
やましい気持ちなんて無いよ、ナイナイ。
だから、震えながら入り口近くに立てかけてある剣を見ないで!
ってか、何で部屋の中にロングソードが置いてあるの⁈
「ク…クリスティーナさん、落ち着いて!
ほら、中身が元男って言っても、俺は今キャスティーヌだから!女だから!
男性用の更衣室やトイレに入ったら痴女だよ?
それに抱きついたって、ハグじゃん、ハグ!
嬉しい気持ちを伝えただけだよ?」
そう、男子更衣室なんてなんの面白味もない。
いや、襲われちゃうんじゃないの?
「……確かに男性用の更衣室には入れませんね。
ハグに関しても一応納得してあげましょう。
それで?スカーレットの件はどう言い訳しますの?」
「ほら、スカーレットはとてもスタイルが良いじゃない?
俺の大きいだけと違って、バランスが絶妙で憧れると言うか、芸術的なプロポーションを触って確かめたかったと言うか……」
決してやらしい意味では無かったと言ってはみるけど、言葉を重ねる毎に機嫌が悪くなってる?
「そうですわね、スカーレットは素晴らしいプロポーションをなさっていますわ。
女性でも憧れますわよね」
うんうんと頷く俺。
「………私と違って」
あ、やらかした、クリスティーナは貧乳がコンプレックスだった。
もうどう言えば良いのか分からなくてあうあうしてしまう。
「ご……ごーめーんーなーさーい……」
誤ったら、とっても情けない声が出てしまった。
「………………ぷっ!」
笑われた!
クリスティーナは口を押さえて震えている。
目尻に涙まで浮かべているのに、声を出して笑えない貴族の女性って不便だなぁ、なんて考えながら見ていると、なんとか笑いを抑えたクリスティーナは、お茶を口にして気を落ち着けている。
「なんで顔をなさっているの?
そうですわね、素晴らしいものを見れば触れてみたくなりますわよね。
下心が無かったと言うことにしておきましょう」
「そうして下さい」
「喋り方は今の話し方が素なのですか?」
そうだと頷くと、クリスティーナは少し考えて言葉を続けた。
「しかしあれですわね、これからはあなたの事は男性として扱った方がいいのかしら?」
「その辺りは俺も微妙なんだけど、キャスティーヌであることは変わりないんだから、やはり女としてなのかな?」
これは自分でも悩むところなんだけど、これからも女性として生きて行かなきゃいけないんだから、そう扱ってくれと伝える。
「仰ることはわかりますわ」
クリスティーナも理解してくれたけど、「ただ……」と続ける。
「これからは着替えなどは別の部屋でして下さいね」
ニッコリと怖い笑顔で微笑まれたら、頷く以外の返事は無いと思う。
「あとお伺いしておく事は……、そうですわね、この事は他の方はご存知なのですか?」
「いや、誰にもバレていないよ。
っていうか、気づいたクリスティーナがすごいと思う」
「私から言わせていただくと、気づかない方がおかしいのではないのかしら」
「そう?」
実際両親も、シスコン兄も気付かないのに、と言うと、近すぎて逆に気付かないのではないかと言われた。
なる程。
「それではこの事は他の方に言わない方がいいのですね?」
「できればお願いしたいです」
頭を下げると、「わかりました」と言ってくれた。
「本当はさ、親とか兄とかには言いたいけど、混乱するだろ?
自分の娘が、妹が、生まれる前に生きていた時の記憶があって、その上それが中年一歩手前の男だなんて、知りたくないだろうし」
「………それはわかりますけれど、もし、私がキャスティーヌの家族なら、教えてほしいと思いますわ」
「………うーん、どうだろう…、生前の記憶があっても、女性なら俺も言ってたと思う。
でも男だからねぇ」
考えながら言うと、クリスティーナもそうかもしれないと頷く。
そう、女だったら、さっさと言ってたんじゃないかな。
「でも、いつか言えたらいいな。
理解してもらえたらいいな」
そうですわねと言ってくれるクリスティーナ。
そんな彼女に気になることを聞いてみた。
「それで…あのさ、こんな俺だけど、これからも友達でいいのかな?
それともやっぱりムリ?」
一瞬キョトンとした後、ため息をつかれた。
「私は貴女と知り合ってもうすぐ2年かしら、そのうちの半分近くは【今のあなた】なのですよね?
ならばこれからも変わりませんわ」
そんなことを疑われるのは心外だと、ちょっとふてくされてみせる。
「ありがと、これからもよろしく」
照れ臭くなりながらも右手を差し出すと、握り返してくれた。
正直今回クリスティーナにバレて、気が楽になった感がある。
秘密を一人で抱え込んでるって、思ったより負担になってたのかな?
いつか本当に家族にも話せる時が来たらいいな。
その後も色々と、前世のことや、記憶を思い出してからのことなどを、遅くまで話し込んだ。
言えなかった事は、この世界がゲーム内世界ではないかと言うこと、クリスティーナがヒロインで、攻略相手が複数いる事、その中の何人かはルートが潰れている事。
だってさ、説明しようがないよ?
まず乙女ゲームの説明からして、ゲームの概念のないこの世界で、一から説明ってなるから、俺にはムリ。
今回バレたことで、本物の【ヒロインの友達】になれた気がする。
俺はこれからも、この世界で楽しく生きていけると思う。
さあ、第二の人生、ここからがスタートだ!
第一部終了って感じです。
番外編を少し挟んで、第二部突入となります。
番外編は、サブキャラの話を少しさせていただきます。
ではまだ暫くのお付き合いをよろしくお願いします。




