またもやバレた!
「あなたは誰ですの?」
いきなりズバッと切り込まれた俺は、思わずキョドってしまった。
クリスティーナの家へ向かう途中、彼女が少し気まずそうに言ってきた。
「あの、家に着いたら分かると思うので、先に行っておきますけれど……お恥ずかしい話なのですが………」
そう言って、領地運営が上手くいっていないこと、そのせいで、家の召使が最低限しか雇えず、色々なことが行き届いていないこと、などを伝えられた。
まさか、家に着く前に話されるとは思わなかったけど、今この話をするってことは、家では何の話なんだろう?
もしかして、援助の申し込みとかだったら、俺に協力できるかなぁ。
父に頼むくらいはしてあげたい。
なんて考えながらクリスティーナのタウンハウスへ到着した。
外から見ればなんの変哲もない貴族のタウンハウスだけど、家の中に入ると、隅々まで掃除は行き届いていないし、花瓶には花も飾られていない。
壁の色が違う場所は、きっと以前は絵画が飾ってあったのだろう。
クリスティーナの部屋に通されて、お茶の準備も彼女がしてくれた。
これって本格的にヤバいところまで来ているんじゃあないの?
クリスティーナ、大丈夫?
小さなテーブルを挟んで向かい合って座り、挿れてくれたお茶に口をつけ、さて、どうやって切り出そうと考えていたら、クリスティーナがじっとこちらを見ながら、真剣な口調で尋ねてきた。
「あなたは誰ですの?」
思わずお茶を吹き出しそうになったよ!
「え?な、なんのことですか?」
惚けてみるけど、彼女の視線の強さは変わらない。
「誤魔化されませんわ!あなた、キャスティーヌではありませんわ!」
断定的に言われてしまった俺は、パニックだよ。
なんで?何かバレるようなことしたかな?
ちゃんと貴族令嬢やってたよね?
キョドってあわあわしている俺に、
「死霊ですか?生霊ですか?
なぜキャシーに取り憑いているのですか?」
立ち上がり近寄ってきたクリスティーナは、グイッと顔を近づけて、目を覗き込んでくる。
おおぅ、お嬢さん、顔が近いよ。
思わず目を逸らすと、俺の額に何かを押し付けてきた。
何かの布?な肌触りだけど、硬いものを包んでいるような?
ハンカチに石を包んでるような感じ?
思わず寄り目になって額を見上げる。
「これでも正体を表しませんの?
ならこれはどう?」
額に当ててたものを投げ捨て、ポケットから出した水をかけられる。
「………?」
思わず唖然としていると、
「聖水でもダメですの?
やはり神官様にお願いしないと無理なのかしら?」
……なんだろう、憑き物憑きと思われてる?
このままだと神殿へ連れて行かれて、悪魔払いとかされたり、下手したら幽閉されるコース?
いやいやいや、待ってくれ!
別に取り憑いているわけではないから………多分!
これこのままじゃマズくない?
正直に言ったほうがいいのか?
信じてもらえるもらえないはひとまず置いといて、俺はクリスティーナに正直に話すことにした。
「………………ってな感じなんっすわ。
いや、いきなり異世界とかコイツ頭おかしいんじゃね?と思うでしょうけど、あの倒れた日に思い出したんですよ」
俺の話を黙って聞いていたクリスティーナは、口に手を当てて斜め下に視線をやっている。
「いや、信じられないよねー、俺も変なこと言ってるってわかるけど、ちゃんとキャスティーヌの記憶もあるし、キャスティーヌの意思に引っ張られることもあるけど、今のところ主人格は前世の俺なんだよね」
まだ黙ったままのクリスティーナに、どうすればいいのか分からなくて、冷めたお茶に口をつける。
すると、やっとクリスティーナが口を開いてくれた。
「確認させていただくわ。
今……去年の秋から生まれる前の記憶があって、その記憶のあなたは30歳の殿方…なのですか?」
「あ、はい、まだ一応29歳だったけど、男性です」
頭をかきながら頷くと、クリスティーナがキッ!とこちらを睨みつけてきた。
「………あなた、女性の更衣室で着替えていましたよね?
お手洗いも女性用を使われていましたよね?
わ…私に抱きついてきたこともありますわよね?
スカーレットのバ…バストも触られていましたよね!!」
あ………俺殺される?




