コウエンジのこと
自分も昼を食べるからと、コウエンジは校舎へと戻って行った。
残された俺たちは微妙な空気だ。
一人だけ、空気を読まない(読めない?)ヤスハルが、相変わらずのニコニコ笑顔だ。
「コウちゃんって昔から背が高くて強くってカッコいいんだよ。
高円寺家のお兄さん達が頼りないからって、女の子なのに跡取りになるって、小さな頃から勉強も運動も頑張っていた、頑張り屋さんなんだ」
一番末の妹が跡を継ぐのに、問題がなかったんだろうか?
尋ねてみると、のほほんとヤスハルが答える。
「船に乗らなくて良いからって、お兄さん達は感謝しているよ」
「込み入ったことを聞くけど、海運業なら船に乗らなくとも、仕事の指図さえすれば良いのではないのかい?」
だよね、例えば輸入業なら、現地買付とかあるだろうけど、荷物を運ぶ海運業なら、必ずしも海に出る必要は無いと思う。
「前に聞いたんだけど、最初は小さな船で荷物を運ぶ仕事だったんだけど、創立者のご先祖様が先頭に立って、海賊や海の魔物を蹴散らしたんだって。
そのご先祖様の強さに、この人に任せると荷物を確実に運んでくれるとか、守ってもらえるから安心して船の操舵ができるとかで、仕事と人が集まったんだって。
だからコウちゃん家の後を継ぐには、船に乗って先頭で戦える強い人しかなれないんだって」
話を聞いてへーっと納得した。
納得したけど、海賊が居るんだって事の方が気になった。
「今でさえあれだけの腕前なら、この先まだまだ強くなるでしょうね。
2、3年後にでも手合わせをしてみたいな」
兄の言葉に頷くリズヴァーン。
「ふふふ、コウちゃんが聞くと喜ぶよ。
コウちゃんが認められて僕も嬉しいな。
あー、ほんと小さく生まれてよかった」
ヤスハルの言葉に首を傾げると、驚きの真相が。
「僕にはお兄ちゃんが6人いるんだけど、コウちゃんにお似合いの年のお兄ちゃんもいるんだ。
でもコウちゃんって小さくて可愛いもの好きだから、みんな断られちゃったの。
だから僕に順番が回ってきて、嬉しいんだ。
だってあんなにカッコいいコウちゃんに、年下の僕なんて相手にして貰えないって思っていたから」
な、7人兄弟……こりゃまた随分と
「ご兄弟が多いのですね」
「お母さんが違うから、きょうだい多いの。
お姉ちゃんや妹合わせると…………今は16人かな?」
多過ぎだし!
犬か猫ですか!
「ず……随分大家族なんですね」
「正妻さんは一人だけど、奥宮に側室さんが沢山いるから、子供も多いんだ」
大奥かよ!
……って、もしかして。
「ヤスハル様はもしかすると、皇族なのですか?」
「よくわかったね、この国では秘密にしてたのに」
ちょっとびっくりした顔をしているけど、国一番の海運王に子供を婿入りさせる+側室持ちの子沢山+継嗣でもないのに他国へ留学させるなどなど、現状を見て弾き出した答えだ。
「一番上と二番目のお兄ちゃん以外は、国の有力者なら好きな相手と付き合えるから、僕はずーっとコウちゃんのお婿さんになりたかったんだ。
でも年下だから無理だって思ってたのに、コウちゃんが小さい子好きで選んでもらえたの。
僕のお母さんも小柄だから、あまり大きくなりそうじゃなくて良かった」
嬉しそうに語るヤスハルは、コウエンジにベタ惚れのようだ。
好きな相手と結ばれるのは良いことだけど、留学生ルートが完璧になくなったよな。
おまけに隠しキャラかと思われたコウエンジは、まったくの対象外。
次から次へと攻略キャラがいなくなるんだけど、クリスティーナのお相手はどうなるんだろう?
そして男装の麗人なショタコンコウエンジ、帰り際の視線が妙に引っかかるのは考えすぎか?




