ヤスハルルートも消えた…だと……
「コウちゃんの家は、うちの国一番の海運業の会社で、コウちゃんは跡取りなんですよ」
学園祭が終わったので、久々にヤスハルとのランチタイムだ。
当たり前のように兄とリズヴァーンも一緒だ。
今日のお弁当のメインおかずは、じゃがいもたっぷりのほくほくコロッケと、アジフライと切り干し大根。
茶色い弁当サイコー。
「女性なのに跡取りなんだね」
「うん、コウちゃんにはお兄さんが二人いるんだけど、上のお兄さんは乗り物酔いしやすくて、船に乗れないんです。
下のお兄さんは目が弱くて、長い時間直射日光の下に居られない病気だから、コウちゃんが跡を継ぐことになったんですよ」
海運業と言っても、別に跡取り本人が海に出ること無いと思うけど、この世界では陸地にいる海運会社の跡取りはダメなんだろうか。
「まぁ、女性にしては凛々しいと思うけど、あの見た目はわざとなのかな」
そうなんだよ、コウエンジって男子生徒の制服着ているんだよ。
「あれは舐められないように、男性の制服を着ているんだろうね」
まぁ、海運業なんて聞いただけでも男の職場だろうし、元の世界でも昔は船に女を乗せないとかあったしね。
跡取りとしての決意表明みたいなものなのかな?
兄の言葉に対するヤスハルの返事は、
「あれはコウちゃんの趣味だよ」
めちゃ軽い答えだった。
「コウちゃんって背が高いし、スレンダーだから、ふわふわしたドレスとか似合わないの」
うん、兄と同じくらいの身長だったよな。
体のラインも女性らしさは無かったのも合わせて、男装が似合う。
「それにまだ見習いだけど、船の上の仕事もするから、動きやすい格好をしているの」
確かにドレスを着て動き回るのは、現実的ではないし、凶器装備してたらまともに動けなくなること間違いなし。
「男性の装束でないと、あそこまで鍛えることはできないだろう」
珍しくリズヴァーンが会話に加わる。
「いくら軽減の魔法をかけていると言っても、女性であそこまで動けるのはなかなかだよね」
兄も感心している。
あの試合展開は凄かったもんね。
「うん、強いんだよ、コウちゃんは!」
嬉しそうにニコニコしているヤスハル。
「もしかしてお知り合いなのですか?」
同郷なのだから知り合いでも不思議はないけど、単なる知り合いって感じでもないので聞いてみた。
「コウちゃんは幼馴染で、僕の婚約者なんだよ」
照れ笑いを浮かべるヤスハル。
ヤスハルの方が二つほど年下どけど、幼馴染が婚約者とは良く聞く話だ。
驚いたのは、幼く見えるヤスハルに婚約者がいたことと、その相手が男装の麗人ってことだ。
頭の中でヤスハルの横に、先日見た麗人を並べてみる………、うん、BLに見える。
性別逆ならしっくりこなくもないけど、いくら幼く見えても、ヤスハルは女の子には見えないし、コウエンジの見た目がイケメン過ぎて。
まぁ他人が口を出す事じゃないけど、大事なことは、これで100%ヤスハルルート消滅したし、コウエンジは隠しキャラでは無かったってことだな。
…………今回は俺がルート潰したんじゃないからね!
ご飯の後に、今日は家から持ってきたマドレーヌをたべてると、近づいて来る人の気配。
先に気づいた兄とリズヴァーンの表情から、嫌な奴が来たわけではないってのは分かったけど、【噂をすれば影】ってのはこの世界でもあるのかもしれない。
「やあ、こんにちは。
お二人が泰治と顔見知りだとは知りませんでした」
ご一緒しても?との言葉に、ベンチに座っていた俺がスペースを開ける。
兄とリズヴァーンが並んでベンチに座っていて、向かいのベンチに俺、お誕生席にヤスハルって座り方だったから、俺の横を開けたのは、他意はない。
「ありがとう、可愛いお嬢さん」
おぉう、イケメンスマイルが突き刺さる。
「先日は素晴らしい試合をありがとうございました。
学園一の噂を、身をもって味わうことができました」
「あなたも素晴らしい腕前だと思いますよ。
リズ…リズヴァーンが手を抜かず相手していましたからね」
兄さん、目が笑ってなくない?
「いえ、決勝戦を拝見させていただきました。
サリフォル様の技術には及びませんよ」
いえいえ、そんなそんなと言い合う二人の間の空気が冷たい。
「それで、何かご用でしたか?
タカナシ様にご用なら席を外しましょうか?」
兄の言葉の後ろに『メシ時邪魔してんじゃねぇよ』って幻聴が聞こえたよ。
「いえ、ヤスハルに渡すものが有っただけです。
お気になさらずに、渡せばすぐにお暇しますから。」
「何かあったの?コウちゃん」
「ヤスハルに頼まれていたものが昨日届いてね。
早い方が良いと思って、丁度お昼だから持って来たよ」
これ…と、20センチ四方程の箱を手渡す。
ヤスハルが蓋を開けると、
「あ、柿だ!
こちらの国ではどこ探しても見つからなくって、食べたかったんだ」
中から出てきたのはきれいなオレンジ色の柿だった。
そう言えば柿って日本原産の果物だったよな。
………いや、名前と言い見た目といい、ヤスハルの出身国は日本っぽい国の設定だけど、限定して良いの?
「ねぇコウちゃん、これみんなで食べていい?」
「勿論どうぞ。
友達と食べるだろうと思って、昼に持ってきたんだよ。
寮の部屋にも届けてあるから」
ところで……と、コウエンジの視線がこちらを向く。
「そちらのお嬢さんはどなたかな?」
あ、婚約者が別の女性と食事してるなんて、気になるよね。
「初めまして、私アルバートの妹で、キャスティーヌ・サリフォルと申します」
座ったまま少し頭を下げる。
「サリフォル様の妹ぎみか。
ふふふふ、とてもお可愛らしい」
素敵紳士スマイルをお見舞いされた。
キラキラエフェクトとバラの花を背負っていそうな笑顔だ。
……なんだけど、なぜか背筋が寒い?
「あ〜、キャスティーヌ様って小さくて可愛いもんね。
あのね、コウちゃん小さくて可愛いものに目がないんだよ。
男の子でも女の子でも、動物でも小さいのが好きなの」
可愛らしい笑顔でヤスハルがこともなげに言うけど、え?小さい子好き?
もしかしてヤスハルとの婚約って合法ショタ?
そして俺にも肉食獣の目を向けてない?
「ヤスハル、人聞きが悪いよ。
可愛いものを愛でるのは崇高な趣味なんだからね」
いや、目が怖いって!
趣味って言葉でごまかしてない?
★ ★★補足
コウエンジがヤスハルの事を『泰治』と呼んでいますけど、これは同郷の幼馴染み件婚約者なので、本来の漢字呼びにしています。
小さなフラグでもあるので、誤字修正頂きましたけど、これはこのままで、カタカナ表記にはしません。
補足が無く、混乱させてしまい、すみませんでした。




