学園祭 後編
二日目の午前中は弓、槍、剣のそれぞれの決勝戦が行われ、午後からは各種発表、そしてダンスパーティーだ。
ミス、ミスターコンは、王子が自分が選ばれるのは(色んな裏事情的なことを含み)わかり切っているからと、辞退した。
そりゃあ王族がいたら、票を入れないわけにはいかないからね。
そんな出来レース面白くないから、王子の判断は英断だと思う。
でもそうすると、トーナメントの勝者が選ばれるんだろうな。
弓の試合では、4年の女生徒が勝ち抜いた。
領地での狩大会でも常勝なのだそうだ。
槍の試合ではモースディブスが圧勝。
なーんかカッコいいよね、長い槍を軽々と操るのって。
……悔しくなんてないんだからね!
そして最終試合、兄対リズヴァーンの試合だ。
今日は家族と観戦している。ぼっちぢゃないよ!
リズヴァーンの両親も一緒だから、5人もいるんだからね。
……いや、ほら、今日はさ、保護者も見にきているから、友達と回っている人は少ないから。
俺が寂しん坊ってわけじゃないからね!
……一体俺はムキになって誰に言い訳してんだか。
兄とリズヴァーンの試合は見応えがあった。
長身のリズヴァーンが上から剣を振り下ろし、素早く避けた兄が胴を抜く。
それを剣で弾き落とし、そのまま下から斬りあげるのを、上半身を逸らし避ける兄。
体格差を物ともしない兄は凄いと思う。
体の大きさが体力の差に繋がるので、最小限の動きで避けて攻める。
素人目でも凄さがわかるよ。
最初のうちは上がっていた歓声も、今は皆固唾を飲んで観戦している。
静かな武道館内に響くのは、剣と剣のぶつかる音だけ。
なんだろう、鳥肌が立ってきた。
その静寂も終わりはくる。
兄がリズヴァーンの右手を全力で打ち付けたのか、リズヴァーンの利き手が剣から離れる。
『決まった!』
と殆どの人が思っただろう。
兄もそう思っただろうその隙をリズヴァーンは見逃さなかった。
左手だけで剣を振り上げ、逆に兄の剣を弾き飛ばしたのである。
「勝者、アスデモス!!」
審判の教師の声が響き渡り、館内は割れんばかりの歓声が溢れた。
凄い、いや本当凄い、他に言葉が出てこないほど凄いと言う単語が頭の中を廻る。
二人の真剣試合を初めて見たけど、兄もリズヴァーンも凄い!
拍手で迎えられ、兄達が親族席にやってくる。
「やっぱりリズには勝てなかったよ」
「いや、手が剣から離れた時は焦ったよ」
「嘘つけ、僕の隙を作るためにわざと手を離したのではないのかい?」
「そんな余裕があるわけないだろ」
本当かなぁ、と言いながらも顔は笑っている。
ああ、青春だねぇ、男同士の友情だねぇ、甘酸っぱいねぇ。
見ている方もほっこり笑顔になるよ。
「お二人とも凄かったです!
私感動しました!
二人とも私の自慢です!」
思わず拳を握って力説してしまったよ。
あははと笑って兄に頭を撫でられた。
いや、本当にこんなスマートな兄があんなに強いとは思わなかった。
良い試合が観れて良かったな。
昼を挟んで各種表彰だ。
前期の成績優秀者で、3年男子は王子、女子はクリスティーナが、4年男子はベルアルム、5年は兄が表彰された。
トーナメントの表彰へ続き、出し物の投票は王子主演の演劇が表彰された。
そして浮かれ行事のミス、ミスターコンテスト。
剣の優勝者のリズヴァーンがミスターに選ばれると思っていたのに、蓋を開けてみてビックリ!
女性票を集めたトーナメント3位の留学生、コウエンジがミスターに選ばれた。
男性票は割れたみたいだけど、女性としては、無表情なイケメンより、愛想の良いフェミニストイケメンが良いらしい。
強さだけじゃあダメなんだね。
そしてミスに選ばれたのは…………。
「なぜ僕なんだい?」
そりゃあその辺の女生徒より美少女フェイスだもんね。
ミスに選ばれるのは、見た目が一番大事でしゃう。
それに、女性は自分以外が選ばれるくらいなら……って兄に入れた人が多数いたみたいで、ダントツの一位で選ばれたそうだ。
ミスターに選ばれたコウエンジと並ぶとまさに美男美女、迫力あるね〜。
「それでは一言ずつお言葉をお願いします」
司会進行の男性に言われ、兄から言葉を発する。
「なぜミスなのかは問い詰めたいところだけれど、自分で立候補したわけではないのだから、女性の皆さん恨まないでくださいね」
ね、で小首を傾げるのはあざといと思う。
続くコウエンジも、微苦笑を浮かべて口を開く。
「本当にね、なぜ私がミスターなんだろう」
「それは昨日の素晴らしい試合に加えて、成績も優秀だと聞き及んでいますよ。
その上女生徒に対する紳士的な振る舞いは、同級生だけでなく、全女生徒の注目の的ですよ」
盛り上げるように司会者が言うと、困ったように笑う。
「優しく接するのは当然じゃないのかな、同じ女性としては」
「……………」
「………………………」
「………………………………………え?」
会場中が阿鼻叫喚だ。
なんと、兄に劣らぬ剣の使い手のイケメン留学生は、麗しの断層の麗人……男装の麗人だったとな。
男がミス、女性がミスターに選ばれ、混乱を呼んだミス、ミスターコンは、その後のダンスパーティーでも、一番の話題となっていた。




