王子ルート終了?
前世の記憶を思い出して一月以上経った今は11月の末だ。
ゲームでは、ヒロインが学園に入る15歳の二年生から始まる。
最初の一年部分はステータス上げが主で、割とサクッと進む。
その間にいく人かの登場人物との出会いが有るんだけど、一番最初に出会う攻略キャラが王子だ。
ルートも二通り有るし、最初に出会うから好感度も上げやすい。
初心者向けのキャラになっている。
ほら、大半の女の人って好きでしょ?王子様。
第二王子なので、将来は皇太子を立て、国を栄えさせる為にも宰相となる事を目指して学んでいる。
しかしながら、周りの貴族が自分を勝手に推し、当事者抜きで後継者争いを起こしている。
勝手に暗躍している貴族達を手玉に取るには若く経験が足りないので、最近は苛立つ事が多い。
タヌキオヤジ達に振り回されない学園が唯一の息抜きの場なのに、親に言い含められた子供達が群がるので、学園でも息が抜けない。
そんな時にヒロインと出会う。
田舎育ちで裏表のない彼女に興味を持ち………
と、ありがちな展開へと進む筈なんだけど……進んでいないよね?
スカーレットは侯爵令嬢として、第二王子に嫁ぐべく、幼い頃から教育を受けて来た。
貴族なのにまとも(?)な親に育てられ、真っ直ぐて正義感のある娘に育ったけれど、融通の効かない頑固な一面もある。
今はまだ婚約こそしていないけど、周りからも第二王子へ嫁ぐ人物として扱われ、足を引っ張ろうとするクズ貴族を蹴散らし、日和らず真っ直ぐに生きてきた。
しかし王子から見れば、融通の効かない頑固な女。
そんな所に遅れてやってきたヒロイン登場。
他のクズ貴族と違う裏表のない存在に、一目置きたい所だが、嫁ぐ予定の王子の周りをチョロチョロするからには排除しなければならない。
下級貴族の割には成績も優秀なうえ、他者(俺のことかな)を気遣うところなど嫌いにはなりきれず、正々堂々と正面から打ち負かそうとする…って、こう言うのも悪役令嬢って言うの?
姉貴の奴【悪役令嬢】って言葉を使いたかっただけなんじゃないの?
おっと、話が逸れた。
で、社交界デビューの夜会で倒れた友達(俺だ)を気遣う優しさや、バッシングから庇う場面を見て、王子はだんだんヒロインが気になってくる。
王子授業で討伐中クラスメイトの危機に飛び出す→やられそうになる→ヒロインが魔獣を蹴散らす→王子ビックリ→それを見たスカーレットがキーってなる→王子クズ貴族に毒を盛られて倒れる→ヒロイン田舎で母親看病中に薬草に詳しくなっていた→薬草入手→王子助かる→チョロい王子ヒロインに興味マシマシ→スカーレットキーってなる→ヒロイン身分差も考えて身を引く→獲物が逃げたら追うのが男→スカーレットキーってなる→王子益々ヒロインに興味津々→スカーレットキーってなる→王子捕らえた獲物を頂きます。
ここで俺の前世終わりました。
多分その後なんやかやご都合主義で乗り越えて、ハッピーエンドなんだろうね。
しかし現状はと言うと、クラスメイトを助けるイベから変わってきている。
毒を盛られてもいないし、スカーレットと良い雰囲気です。
そんな二人の間に周りも割り込みたいけど、相手が侯爵家なので、それ以下の貴族はなかなか割って入れないからね。
しかも!二人の雰囲気が数日前から違うんですよ、奥さん!
アラサーお兄さんの勘では、王子様侯爵令嬢食べましたね。
スカーレットのあの潤んだ瞳、自然なボディタッチなどなど、滲み出るものがねぇ。
でもまだ婚約してないよね?
風紀乱れてないか?
乙女ゲームでも18禁なら婚前交渉もOKなのか?
あのスチルのような顔で、あの甘々ボイスでスカーレットはいただかれたのか?
……いやー、妄想捗るねぇ……なんて言っちゃあだめだよね。
まぁラブラブして下さい。
……ってダメだよね?
ヒロインはスカーレットじゃなくて、クリスティーナなんだから。
魔獣討伐から話逸れたのって、やっぱり俺のせい?
どうにかルート修正した方が良いのか?
だからと言って勝手に暴走するわけにはいかず、まずは本人に王子をどう思うかって聞いてみた。
「クリスって殿下のことをどう思われますか?」
「殿下です?
優秀な第二王子だと思いますけど?」
うん、王子ダヨネー。
「そうではなくって、異性としてですわ」
16歳って恋バナするお年頃だよね?
不自然じゃないよね?
「異性としてですか?
ありえないですわね」
「え?ナイんですか?
第二と言えど王子ですよ、玉の輿ですよ」
乗れるなら 乗ってみたいな 玉の輿 なんじゃないの?
「キャシー、現実を見ましょうよ。
王宮なんて魑魅魍魎の住処ですわよ。
他人の足を引っ張ろうと虎視眈々と狙っている貴族、隙あらば女性に手を出す男性方、御主人の目を盗んで男性を誘惑するご婦人方、賄賂に横領に……。
いつも気を張っていないと足元を掬われますし、媚を売って取り入ろうとする方々や、取って代わろうとする貴婦人や、粗探しをする老害……ご年配の方など、周りは敵だらけですよ。
あんな恐ろしい所に嫁ごうとする方々の気が知れませんわ」
クリスティーナさーん!偏見ゴイス!
顔も怖くなってるっす!
しかも老害って言ってるし!
「それに私の家は子爵家ですから、万が一殿下と心通わすこととなっても、釣り合わないなど言われて迫害されますわ」
うん、現実問題として、男爵家や子爵家から王族へ輿入れって、階級的に無理だわな。
一旦上位貴族の養女になってなど抜け道は有るけれど、下級は下級、後々色々言われるのはわかりきっている事だよね。
「私は好きになった方と、慎ましく幸せに暮らしたいと思いますの。
お互いを思い合い、尊敬のできる方と、無理のない安らかな生活を送りたいですわ」
おぉう、怖い笑顔は引っ込んで、慈愛に満ちた微笑み、ギャップがハンパネー!
「私はそう思いますけれど、それは私の考えです。
幸せのありようは人それぞれだと思います。
でもやはり好きな方と結ばれることが一番だと思いますわ」
それに…と、王子たちの方へ視線を向けて小声で囁く。
「スカーレット様とてもお幸せそうですし」
「そうですわね」
うん、こりゃあ王子ルート潰れてても問題なさそうだな。
留学生ルートも潰れてるけど、まだ他に居るから、他の人と幸せになってね、是非とも。




