美味しいものを食べたいのです
「最近二学年の男子生徒と二人きりで会っているそうだね」
目が笑っていない笑顔で詰め寄られてしまう。
「タカナシ様のことですか?」
いや、他にいないからわかり切ったことだけど、一応確認してみたら、大きく頷いた。
「お会いしてはいますけれど、昼食をご一緒しているだけですわ」
「昼食を?
僕でさえ学園では遠慮しているのに、なぜ他の男と食事を共にしているんだい?」
なぜって、食べたいんだよ、日本食。
生前?から朝はパン食だし、ご飯でもパンでも麺でも、あまりこだわりはなかったけど、食べられないとなったら食べたくなるもんだよね。
だからと言って、転生モノでよくある飯テロをする気力は無いな。
美味しく食べれればそれでOKと思ってたけど、やはり久々の日本食は美味しかった。
あー、この前の生姜焼き弁当も旨かったなぁ。
箸休めのほうれん草も、出汁のきいたひじきも美味しかった。
今度は何を食べさせてもらえるんだろう。
思わずニヤつきそうになったのを抑えて、一緒に食べるようになったきっかけを話す。
「そうか、孤立している留学生に気を使っているのか。
僕のキャシーは優しいな」
シスコンフィルターはブレません。
いや、俺が食べたいだけなんだって。
「今度はお互いの国のお菓子を交換しましょうと言ってますの」
おはぎときな粉もちが俺を待っているのだ。
禁止されるわけにはいかないから、頑張って言いくるめないと。
「私には優しいお兄様が居ますけど、甘やかされてばかりでしょう?
でもそれではいけないと思いますの、私も大人になったのですから。
弟や妹が欲しかったですから、タカナシ様はまるで弟みたいで可愛いのです」
「僕は可愛くないのかい?」
何対抗意識燃やしてんの?18歳。
「お兄様は可愛いのとは違いますわ。
アルお兄様は優しくて美しく、頼りになる素敵な方ですの」
ここでキメ顔、小首を傾げながらニッコリ微笑む。
「そうか、僕は素敵なのか。
そうだよね、キャシーより年上なんだから、可愛いとは違うよね」
うんうんと頷いておく。
割とチョロいいのか?
「キャシーの弟なら僕にとっても弟だね、次は僕もご一緒しよう」
どうしてそうなる?
取り分が減ったらどうしてくれる!
でもここで断るとまた長引きそうだな。
「それは素敵ですわ。
でも一度タカナシ様にお伺いしてからでよろしいかしら?」
「当然だよ。
なんなら僕から聞いておこうか?
いや、僕が聞くから、キャシーは二人っきりで会うのは控えなさい。
異性と二人っきりで会うのは誤解を生むからね」
まぁ言い分は間違っていたいから、了承しよう。
「ではお願い致します。
タカナシ様のクラスはご存知ですか?」
ニッコリ笑って頷くけど、このシスコン妹の行動どこまで把握してんだ?
その後、3人でお茶をした。
和菓子を気に入った兄は、素直で小動物なヤスハルも気に入り、その後は3人またはリズヴァーンも合わせて4人での昼ごはんやオヤツをする事が頻繁に行われるようになった。
まあ、日本食が食べれるなら俺に問題はない。
問題があるのは……ヒロインの留学生ルートを完全に塞いだような気がするんことなんだけど…………。
気にしないでおくかな。
因みに、兄とリズヴァーンは学園の人気者で、その二人と仲良く食事をしているヤスハルは、クラスメイトから尊敬の目を向けられるようになり、結果的にクラスで浮く事も無くなったそうだ。
結果オーライ、めでたしめでたし。
そうそう、モースディブスの件なんだけど、折角兄から聞き出した情報なのに、結果的に役に立たなかった。
何故かって?
聞いたモースディブスの話をクリスティーナにしたんだけど、どうやら別に男としてモースディブスを見ていたのではない事が発覚。
どうやらクリスティーナは将来自分で何か商売をしたいと考えているそうなのだ。
その為に商家のモースディブスに、色々店のことやなんやかやを聞いてたとのこと。
子爵家を継ぐのは長男なので、自分は政略結婚させられるのは明白。
それが嫌だから、独立して自由な生活と、自由な恋愛を手に入れようと考えたと。
貴族ではあまり無い考え(政略結婚当たり前なんだから)だけど、嫌なもんは嫌なんだろうな。
だから学園ではオールマイティに学んで、色々な事ができる女になるようにしてるんだって。
うーん、行動力あるなぁ。
俺なんて男と結婚なんて……とは思うけど、家のこととか考えると仕方ない、と思ってたんだけどね。
結婚とかする年頃までにはキャスティーヌともっと一体化してて、違和感なく政略結婚なりなんなりできるんじゃないかな、なんて希望的観念もあるんだけど。
そんな俺より男らしいな、ヒロインなのに。
てなわけで、モースディブスの件は要らぬお節介だったけど、彼女の考えが聞けて良かったかな。
ん?でも乙女ゲーム的にはどうなの?




