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第8章 陰陽師、CIAになる

私の勤務する宮内庁治部省陰陽寮直系伝統文化財保護維持管理局特務調査班に公安から依頼が入った

官房副長官付きの第2秘書が錦糸町の怪しげな違法カジノに出入りしている


調査を行ったがそのビルにはそれらしいカジノが見当たらない

楽天地ビルと言うその建物には10階までしか存在しないのだが

第二秘書が持っていたカジノの会員カードには11階と記載されていたらしい。


都市伝説の類は大抵陰陽師の私のところに仕事を持ち込んでくる。

とても迷惑な話だが上司からの命令には逆らえない


錦糸町の土地柄から相手は足洗いかムジナと予想して調査のため式神を放ったのだが1つも戻ってこなかった

手掛かりのないまま途方に暮れていたところに

部下からある事件の報告書を渡された


公安でも目をつけていたらしく調査資料が残っていた


ロシア大使館主催のパーティーで大暴れをした女性、、、



目撃者の証言では

数人の被害者が

彼女によって空手による制裁を受け闇に飲まれていったのだと言う


本人は逮捕直後は素直に供述していたらしいが、

簡易鑑定の後

終始黙秘を続け

被害者の公的書類や捜索願なども出ておらず

事件を立件することもできず

大使館側とも示談が成立したため

処分保留となり

留置所から出て行ったとのことだ

今、錦糸町で何やら怪しげな仕事を始めたらしい


怪しい!!!


ここが式神を消し去った魔窟

あるいは違法カジノの出先機関なのか?


女の供述調書や、簡易鑑定を続けて読む


幼少期に死神と友達になり

事件、直近に再会

死神の見習いになる?


友達の命を救うために悪魔と契約する?


私は代々続く陰陽師だが、死神も悪魔も見たことがない

我が家の記録にも、そのような記述はなかったはずだ


この女の虚言なのか


私の常識でははかれないこの事件を分析しながら


冷めて酸味が増したコーヒを飲み干した


「それでねチャマに言おうかどうか迷ってたのよ」


「それはそうよね

ドレッドヘアの怪しいおじさんがウロウロしてるなんて

街には1人か2人、そんな変な人いるもんね」


給湯室に新しいコーヒーを取りに行くと女性課員が何やら雑談をしていた


チャマとは私のことだろう

大体続く陰陽師の家系ということで、おぼっちゃまだと思って、そんな呼び方を影でしているのだろう


そんなことで、目くじらを立てても人間関係をややこしくするだけなので知らないふりをしている


「勅使河原を呼んできてくれ

君たちに頼みたい仕事がある

宮内班会議室に全員集合だ!」


関係者の聞き取りでこの女の人が好意的に受け取られていることを考えて

何か事件に巻き込まれているだけなのでは?


事件を法的に逃れるための狂言では?


など、意見が出た


資料を真剣に読んでいた勅使河原が

自分の祖父も死神が見えていた

死期がわかったと言っていたと言う話をし始めた


「自分の死に際だけは

わからないなんて皮肉だな」


そう言っていたらしい


私の頭の中に電気が走った


「これから集められるだけの資料を全て集めてくれ

宮内庁の権限を全て使っていい

私はこれから室長に会いに行ってくる」


室長室のドアを開けて一礼して中に入る


「ご連絡もしないで、突然の訪問お許しください 緊急の案件です」


「相変わらず堅苦しいなぁ。マロは

気にするな公安からの案件に解決策でも見つかったか?」


私は、上司に不思議な女の事件のことの疑問をぶつけてみた

私たちにも神の存在を感じられるそんな現象はある

神社やパワースポットなどで、

光を見たり、

霧が出たり、

しかし、我々能力者でも神と話をしたり、ましてや実体を見ることなどできないことについて意見を聞いてみた


「能力者にも種類というか、認識できる「領域」が違う者がごく稀にいる。マロには式神や妖怪が見えるだろ?しかし別の領域に属する者には、マロには見えない存在――神のようなものまで認識できるらしい。」


「まぁSNSなどで神と話せるとか竜神を見たとか言う奴はよく見かけるけど

果たして、それがそういう人種なのか、それとも妖に惑わされて神だと思っているのか?まだ我々はそこまで調査をするまでの余裕がないからな」


「先程の打ち合わせで勅使河原の祖父が死神を見たと言っていたらしいと、、、

その内容を聞く限り 私の報告書と類似する点が多いのです」


「仮にですよ、この報告書の女がスサノオやクシナダヒメの加護を得て力が使えるとしたら?」


「そりゃすごいことだろうな

我々陰陽師の常識を覆すような人物、もしくは能力なのだろうと私も思う」


「そこで室長!

我々の協力者にしませんか?

下手なところに唾をつけられる前に早めにコンタクトを取って真相を見極める。

味方になるようなら懐柔して我々が囲い込む、その逆ならば、

早めに対処しなければならない相手だと私は思います」


「わかった細かい事は私が手を回しておく

好きなだけこの部署の特権を使いたまえ。」


「良い報告を待ってるぞ」


「はい!よろしくお願いいたします」


では、私は急ぎますので

これからその女の関係者のところに行って、

私なりの人物像を作ってから錦糸町に向かいます」


「なんか目が輝いてるな 久しぶりにお前のその目を見たよマロ

最近じゃあチャマって呼ばれているらしいじゃないか」


「はい、ちょっと気に入ってきてます」


「失礼します」


そんな馬鹿な。

自分は陰陽師だぞ。

代々続く家にもそんな記録はない。

でも室長は「だから存在しないとは限らない」と。


この女は狂っているのではなく、私とは違うものを見ているのではないか?

それも神話に綴られているような 大いなる力を、、、、、


周囲からの女の評判は驚くほど良いものだった


あの供述調書の内容は本当なのか?

悪霊や、妖怪に惑わされているのならば、私が何とかしてやらなければならないだろう

そう思いながら

私は懐の呪符を指先で確認し、冷や汗の滲む手で、色褪せた雑居ビルのドアノブを握った。


扉の横には、女性の石像が日替わり弁当800円と言う看板を持って笑顔で立っている


メデューサ?


なぜ、メデューサ?


怪しい!!!!


入り口の扉には木彫りの看板がかけられていた


大五郎弁当


私が間違えたのか?


公安の資料が古かったのか


すでにここには怪しい組織はもうなくなっているのか?


スマートフォンで大五郎弁当と検索してみる


食べログで3.6

ぼちぼちおいしいんじゃないか?

評価コメントを見る


ちょっと見た目は怖いけど、とっても優しいご主人

サービス満点。

味も最高。


やはり間違えたらしい

ここはただの弁当屋だ、、、

帰ろうと思い、踵を返した時に小さな電飾看板に脛が当たった


昔使っていたであろうバーの看板


よく見ると、以前の店舗の名前の上にガムテープが貼ってある

そこには

若い女性の文字で


『怪異事件ビジネスコンサルタント(KGB)』


やはりここなのか?

既に移転して看板だけ片付け忘れて置きっぱなしなのか?


私ある重要なことに気がついた

怪異事件ビジネスコンサルタントならば、

KJB

じゃないとおかしいのではないかと、、、、


お弁当屋の店主は食べログでは見た目は怖いらしいが、サービス満点で良い人らしいので中に入って移転先を聞いてみようと思い、少し安心した気持ちで私は扉を開けたのである




カランカラン


じゅわあああああぁぁぁ。


「いらっしゃい〜今日はもう唐揚げ弁当しか残ってないだよ〜

ご飯大盛りはサービスするっけそれでもええかい?」


カウンターの奥から、香ばしい唐揚げの香りと

純朴そうな店主らしき声で私は出迎えられた


店の奥から出てきたのは、慎重2メートルぐらいありそうな大男


鬼っ!!!!!!!


鬼だっ!!!!!!


私はパニックになり懐の呪符を取り出そうとした瞬間


スーツのズボンの裾を引っ張られた


ひっ!!


後ろに下がり扉に背中をくっつけ下を見ると

おかっぱ頭のいかにも日本昔話に出てくるような着物を着た子供が不審そうな顔で私を見上げている


「お前は何者だ人間にしては

珍しい妖気を放っているな

弁当を買いに来たのではないな

キャキャキャキャ」


とんでもないところに来てしまった

店内凄まじい妖気だ、、、


懐の呪符を使おうとすると

ドアが勢い良く開く

私は、カウンターの下まで飛ばされ転がる

後頭部に衝撃を受け

そのまま意識が遠のいていった


不覚だった、、、、


後頭部に冷たいものを当てられ、私は目を開けると

目の前には心配そうに私を見下ろす若い女の子の顔があった


「大丈夫ですか?

痛みますか?

救急車呼びますか?

自分の名前言えますか?

今日は何年何月何日かわかりますか?

ここはどこだかわかりますか?」


そうだった。

私は調査に来た。


KGBで強襲を受け、

飛ばされたんだった。


「ここは?」


私は辺りを見回そうと身を起こそうとしたが

この女の子が相当な力で押さえつけてきたので、また床に後頭部をぶつける羽目になってしまった


「何やってんの?あんたは

馬鹿力なんだから〜

ちょっとは加減しなさいって言ってるでしょう〜

ほんとにあんたはガサツよね?」


女の子の隣を見ると銀髪黒ずくめの美少女が不敵な笑いを浮かべているのが見えた


「わかっているわよ〜エカテリーナ

今日は両手に買い物の荷物を持っていたから足でドアを開けちゃったのよぉ〜」


「ちょっと気合い入っちゃって

せいって、、、、、」


「せいっじゃないわよwwwwイツキ〜」


なんなのだここは、、、

しかし妖気は凄まじいが

敵意は全く感じない、、


話が通じるのでは無いかともはや諦めの境地で事情を話す事にした


最初の疑問を投げかけてみた


あの〜ここは怪異事件ビジネスコンサルタントでいいんですよね?


やった〜ひさしぶりの依頼者!!!


女の子がガッツポーズをして小躍りして喜んでいる


それでそれならKJBなんじゃないんですか?


部屋の空気が凍りついた、、、、


鬼や

おかっぱ

黒ずくめが

あっ!!

って顔をしたと思ったら私から目を逸らして天井とか後ろとか見ている


私は何かヘマをしたんだろうか?

これを言うと、何か恐ろしいものでも出てくるのだろうか?

少し身構えていつでも攻撃を避けられるよう気を引き締める


女の子は少し違う

何言ってるの?

みたいな顔して目をまんまるにしている


「だって頭文字とったらKGBに、、、、、、、、」


そこまで言った途端、

彼女は顔を真っ赤にして、両手で顔を抑え、ドアを勢い良く開けて放ち看板を確認に行ったのだった


「あの子はそういうところあまり気にしないのよ

いまだにゲーウルウーって言ってるしwwww」


「あーあ言っちゃったよこの人は

みんな言わないで黙ってたのに、、、

てゆうか、俺なんてそんなこと突っ込んだら肩パン何回されるか恐ろしくて突っ込めなかったんだよね」


さっきまでいなかった売れないホストのような男が

私を憐れむような顔で見ている



「まあご相談ならボックス席へ、、、」


黒ずくめに案内され

私はボックス席に移り、顔を真っ赤にして、鼻息の洗い女の子を目の前に

公安からの依頼だけを伏せ今までの事情を説明した


「宮内庁治部省陰陽寮直系伝統文化財保護維持管理局特務調査班 宮内 清」


目の前にいる女の子は、私の名刺を一心に眺めながらぶつぶつ何かを言っていたと思ったら


「ぜっんぜん覚えらんない、、うちのライバル業者みたいな所から来たって事でしょ?

わかりずらいからCIAで良い?」


何を言っているんだ。この子は?

私があっけにとられていると


「じゃあ決まりっ!

KGBのライバルだからCIA」


「だからKJBですよ、、、」


「やだぁ〜もう細かい事言っちゃって〜」


と笑いつつ結構ずしりとくる肩パンをされてしまった


なんなんだこの娘は!!!


改めてこの状況を説明し直した

式神を放ったがすべて戻ってこなかったこと

そして、楽天地ビルの11階の件


すると、先程の売れないホストが

血相を変えて


「ひ、楽天地ビル11階のネオンに、深紅のベルベット……! 間違いない、僕の教育係だった極道悪魔のマモン先輩ですわ! 」


マモンだと!


悪魔じゃないかっ!


本当に悪魔なんているのか!


どうりで私の陰陽道が効かないわけだ、、


式神も全て奴らに滅されたのだろう、、、


私は自分の力が及ばないことに自分自身に落胆した、、


肩を落としていると


先程の娘がドヤ顔でまた私の肩にパンチをしてきた


「大丈夫です!

私達KGBにお任せくださいっ」


「でもね、今1つだけ問題があるの

今、主要メンバーが長期休暇をとっていて、里帰りしているのよ〜

だから今回は偵察だけにしておきましょう」


娘がわけのわからないことを言ってきたので、詳しく聞いてみると

後から店に入ってきた死神ちゃんと呼ばれる中年の男性が私に説明してくれた


信じられないことに彼女はスサノウの加護を受けているらしい

そして、なおかつクシナダヒメの櫛を授かっているのだと言うではないか!!


「今神無月だからね。2人とも出雲に帰省しているんだよ。」


「ああなるほどね

神無月だから長期休暇で帰省って!!!」


「だから、今ちょうどお弁当屋さんが忙しくなったから、神無月が終了するまで弁当事業にシフトしていたんだよねwwww」


「まぁあと少しで神無月も終わるからそれまで作戦決行は保留って事でもいいかなぁ?」


彼はほんとに死神なのだろうかなんかすごく軽い

そして、出雲への長期休暇って、、、


うらやましい、、、

私はこの半年休みを取っていない事に気がついた、、、



潜入方法を売れないホストとイツキと呼ばれている肩パン娘

エカテリーナと言う黒ずくめ美少女とあーでもないこーでもないと脈絡のない作戦会議が煮詰まった頃


「あの〜そのお店

おらの弁当いつも注文してくれるところじゃねーかと思うんだども」


鬼が鬼らしくなく弱気な感じで遠慮しながら話に加わってきた


「大五郎さん!

本当にっ!!

でかしたっ!!!」


「エカテリーナはコムデギャルソンの上に割烹着なんてナンセンス

とか言って乗り気じゃないみたいだから大五郎さんと私とCIAで行くわよ」


CIAが普通に私の呼び名になっていることに疑問を感じながら、

また細かいとってとか言われて

肩にパンチを食らうのも不本意なので

今回は目を合わせてうなずき返すだけにした


鬼の作った弁当を持って

お揃いの割烹着を着て

楽天ビルに着いた

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