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第7章 荒川のかっぱ

カランカラン


BARタイムを始めてすぐお客さんが入ってきた


カウンターで至福のまかないを食べていたけど

後ろ髪引かれる思いでカウンターの中に向かう


またあとでね、


私のカツ丼、、


などと、カツ丼にしばしの別れを告げながらお客さんを見ると


げっ!!


その筋の人?


こういうのって、先に挨拶行っとかなきゃいけなかったんだっけ?


こういう時に限ってエカテリーナはいない


わらしちゃんの洋服を買いに2人で出て行った


わらしちゃんとのお出かけが嬉しいらしく

ポルシェにチャイルドシートまでつけていた


あいつ悪魔だよね

何か変な悪魔

わらしちゃん

猫っぽいからなのか?

それとも、、、母性が刺激されたとか?


そんなことを思うと悪魔も人も大して変わらないんじゃないかって思えてきた。


まぁ、仲良いからいいか


大五郎さんは体はでかいし、

顔は怖いけど、

とっても気が弱い。

そして優しい。

休憩室から呼んできてもきっと青鬼になるだけだ


無理だ。

使えない。


チャラ男は弁当の容器の回収でいない


まぁ、あいつがいたって邪魔なだけなんだけど、、、


しょうがない。

みかじめ料ってやつを早く決めてもらってとっとと帰ってもらおう。


別に後で怒られてもいいや

って思っていたら


「この辺仕切らさせていただいています本所の岸と申します。

このたびはご開店おめでとうございます。

本日はご挨拶に参らさせていただきました

この街で何か困ったことがございましたらやつがれにご相談ください」


すごく丁寧なんだけど


すごい威圧感


すごいオーラ


でも、なんだか嫌じゃない感じがした


それだけ言うと、

良いお店ですね

とか言ってドアから出て行ってしまった


みかじめ料とか払わなくてよかったのだろうか?


請求されてないからまぁいいか

そんなことより

まかないの

カツ丼!!!



嫌な夢を見た


夢の内容覚えてねえ


目覚めが悪りい


時計を見る


まだ夜明け前じゃねーか


嫌な夢のせいかなんか胸騒ぎがする。

こんな時きゃ大抵大雨が来る


小屋の外に出て川に向かう


上を見ると満天の星空だ

といっても、昔ほどきれいには見えねぇけどな


スカイツリーとか言うでっけえろうそくみてえな塔も今日はスッキリ見える


俺の勘違いか?


いや、ちげえなぁ


最近、雨の降り方が何かおかしいんだ

まだよくわかんねぇけど

それに似た感じがする


「ちょっくら、みんなに伝えてくるか」


独り言を言って小屋に戻る


きゅうりの畑で源さんが朝から作業してた


「河太郎さん、朝早いね

どうしたんだい悪い夢でも見たかい?

ほら、これ持ってきな朝採りきゅうりだ」


「源さんそれどころじゃねぇ

みんなに大事なもの持って、早く避難するよう伝えてくれ

俺の勘違いならいいんだが

この胸騒ぎは捨ておけねぇ」



雨がパラついてきた


土手の上の橋の下で俺たちは荒川がどんどん水かさを増して膨らんで村を飲み込んでいくの黙って見ていた


風が吹いた


突然上から川が降ってきた



ゲリラ豪雨

線状降水帯

聞き慣れねえ雨が俺の今までの経験を全て洗い流していくようなそんな気がした。


村から離れる奴


ここを離れられねえ奴


翌日から生活の立て直しを始めた

とにかく、金と言うものが必要らしい

俺は今まで以上に空き缶を必死になって集めている


「悪いね〜いつもたくさん持ってきてくれてありがたいんだけど、会社の規定が変ってしまって、、、

身分証あるかい?

それがないと買取できないことになってしまったんだよ」


「身分証?そんなもの俺が持ってるわけねーだろ。」


「アンタラにはいろいろ事情があって、そういう人も少なくはないとは思うけど

俺も雇われてる身だから

悪く思わないでくれよ」


身分証を持っている人間に手数料を払って買取に行ってもらうが、ただでさえ少ない金額なのに、手数料取られたんじゃ身も蓋もねぇ

朝から晩まで空き缶集めて、飯食ってなくなっちまう

みんなの生活を立て直すには、もっと割の良い仕事を探さなきゃならねぇのかもな

キラキラとゆっくり流れる荒川を平井大橋の上から眺めながら

俺は村にちょくちょく来ていた貧乏神の話を思い出していた


「錦糸町に最近何か変な相談所ができたんですよ

私がよく行っているコンビニの2階なんですけどね。猫たちが言うには、

私たちみたいなものの相談に乗ってくれるそんな所らしいですよ。」


割と近所じゃねーか

ダメ元でちょっと行ってみるか?


貧乏神が言っていたコンビニはすぐに見つかった。


階段を上る目印に聞いた女の石像もある

俺は字が読めねぇから助かる


ここに間違えねぇ


カランカラン


「いらっしゃい、弁当かい?今日の日替わりは生姜焼きと茄子の煮浸しだよ」


「いや貧乏神から聞いて

ここは俺たちみたてえな者の相談に乗ってくれるって聞いてきたんだけどよぉ〜

弁当屋だったんなら間違いだったみたいだな」


「大丈夫です!!あってます!!KGBにようこそ!」


ボックス席から若い女が小躍りしながら満面の笑顔で俺に向かってきた


こんな奴に相談して大丈夫なのか?



やった!!

営業を開始して

立て続けの相談者!!!


でも貧乏神って何?


死神ちゃんの友達か何か?


まぁいい口コミ営業うまく回ってるみたい!!




薄汚れた作業着を着ている

靴もボロボロだ

手の指の間に水かき?


私はこの金になりそうもない薄汚れたカッパに軽蔑の目を向けていた

イツキはそんなことお構いなしで河童の話を親身になって聞いている


全くこの子の感覚はよくわからない

お金がないって愚痴を言っているのに

こんなお金になりそうもない相談者なんて追い返してしまえば良いものを、、、、


「イツキ!あなた料金の説明はしたの?

一応先にそういう事は説明しなきゃダメなんじゃない?」


イツキはそうだったなんて言って料金説明を始めたのだが、相手のカッパは

俺はそんな金持ってね〜

持ってるように見えんのか?

なんて開き直っている


「イツキ!!すぐにお断りしなさい。

うちは慈善事業でも

ボランティア活動でもないのだから、

良いかしら

あなたがつけた此処の名前はビジネスコンサルタントなのよ」


「でもエカテリーナ〜困ってる人をそのままにしておけないでしょう〜

出世払いでも

分割でも払ってもらえればいいじゃない?

KGBオープン記念で今回だけ!

ね!

今回だけっ!」



全くぬるい

ルノワールのココアより甘い!!

私は呆れてものが言えなかった


味方になりそうな死神を見るともうすでに諦めた顔している。


「仕方ないわね〜今回は私が貸付けをしておくわ。

そこのかっぱ

身分証を出しなさい」


「またここでも身分証か、、、なんだってそんなものが必要なんだ。

わかった。

自分でなんとかするよ。

世話になったなぁ。」


河童が帰ろうとする

イツキは私をちょっと睨む


「良いわよあたしがエカテリーナから借りれば良いんでしょ〜

後で書類作ってよ

それで契約よ

契約は得意でしょう悪魔なんだから。」


全くこの子ときたら

コメダ珈琲のシロノワールより甘いんだから、、、、



もうエカテリーナったら

あんなこと言ったらせっかく面白いお客さんが来たのに逃げちゃうじゃないのよ


河童よ河童!!


東京に河童がいるなんて、初めて知った

しかも、就職先を探してるとかって、めちゃくちゃ面白いじゃないのよ


あんなこと言ったらこんな面白い事件逃しちゃうじゃない


勢いでお金借りるとか言っちゃったけど

まぁいつも一緒にいることだし、そのうちナアナアにして踏み倒してやろう!


だって、私相談を受けながらいいこと考えついちゃったんだもん!!


「銭湯?!」


河童も含め、みんなの視線が私に集まった


なんか変なこと言ったかしら?

「水があって、

仕事があって、

もしかしたら住み込みで働ける

それだったら、もう銭湯しかないでしょうよ

私が銭湯が好きなのもあるけど

良い案だと思うんだけどなぁ〜」



と、いうことで

銭湯巡りのツアーを組む


前から行ってみたかった。黄金湯と大黒湯は外せない。

私の銭湯センサーがそう伝えてくる!


「さあ!お風呂入りにいきましょう〜!!!」



もうなんか銭湯じゃないみたい。

おしゃれなカフェ。

おいしそうなスイーツもあるし

スカイツリーを見ながら露天風呂

もう最高!!


充分満足した

楽しかった

気持ちよかった

おいしかったし


でも、河童を見るとなんか不機嫌

ちょっと元気がない


ごめん、私ちょっと自分の趣味に走りすぎたかも、、、


何か気まずい雰囲気でKGBに向かって帰る

ちょっと挽回したくて地元の強みの裏道を先導しながら歩いていく


定食屋の角を曲がったところで、古い昔ながらの銭湯を見つけた

営業してるんだかしてないんだか?

よくわからないけど。


高い煙突


空に向かって伸びている


その先から煙が出てる


「ここ入りてえ、ここなら良いかもしれねえ

お嬢いいかい?」


河童の機嫌が直った


よかった。

結果オーライ


KGBに戻って身分証のないこの河童にどうやって就職させよう

と言う作戦会議を開いている

死神ちゃんはなかなか良い案を出してきた


「常連となって顔を知ってもらって、それとなく働き口を探してるとかって言えば、履歴書とかなくても大丈夫かもしれないんじゃない?」


「私のエージェントを使えば身分証の偽造なんて簡単よ

ただ、高額な費用がかかるわ

イツキ!それもあなたが借りるっていうの?」


エカテリーナはさすが悪魔だ


私は何かずるしているようでちょっと反対だけど、

最終的にはこれが現実的なのかなぁ〜なんて思っていたら


カランカラン


解決策が来店した!


土地神はその銭湯にはよく行っているらしい


後継者がいなくて、

老夫婦で切り盛りしていて

薪のボイラーは年寄りにはきつい

とかって言っていたらしい

しかも、アルバイトを雇おうと思って求人を出してもなかなか人が来てくれないらしい


渡りに船ってこういう時に使うのよね


「土地神ありがとう」


地回りだと間違えたことを心の中で謝っておく


今度おつまみ一品

サービスしとこ


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