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第23章 上級悪魔過去を語る

弁当の配達を終えて、暇になった屋上でイツキが私と自分の分の遅い昼食の鯖を焼いている。


カッパ橋で買って来た魚を両側から挟んで焼く網を買ってきてから、最近やっと弁当メニューに加えることができたらしい。


大家さんには内緒なんだけど屋上で七輪を使って焼く。


私が弁当に入れる鯖を焼く作業にぜったい加わらない事をイツキが面白半分に突っ込んでくる。


「ビビアンウェストウッドのスーツなんか着てるから〜

明日からジャージでくればいいのに アジダス、一着あげようか?」


「断るわよ。誰がそんなマヌケな魚のジャージ着るのよ」


私はスーツに煙の匂いがつかないように少し離れて、七輪の上でジュウジュウと音を立てて脂を落とす鯖を見つめた。


赤く爆ぜる炭火の熱が、私の頬に熱を伝えてくる


「まぁいろいろあんのよ 暇だから、

ちょっと悪魔の過去でも話しましょうか?」


***


なぜ私がこんなところにいるのだろう....


教会前の広場で太い木材に縛られ、足元に火をつけられようとしている。


石が飛んでくる、

体のあちこちに大小の石が当たる。


石を投げる人、

それを走り回って止めている人がいる。


泣き叫び、やめてくれと叫ぶ人がいる。


疑念の目

侮蔑の目

恐れの感覚

様々な人間の思考が私に届く。


なんで私はこんなところにいるのだろう。


「魔女を焼き殺せぇ〜!!!」


教会に行かなかったから?


教会に行くはずの人たちを、私のヒーリングで集めてしまったから?


治せない人がいたから?


お金や野菜やお肉をもらったから?


わからない、、、


わからない、、、


物心ついた頃から、なんとなく大人たちの病気の場所がわかるようになっていた。


私は普通だと思っていた おばあちゃんにそれを話すと、お前の力は神様から与えられた素晴らしいものだと褒められた。

薬草で薬を作ることをなりわいにしていたおばあちゃんから薬草の知識を叩き込まれた。

薬草を知れば知るほど、この病気にはこの薬草が効くこの配合がこの量が。


どんどんわかるようになってきて、私も薬草研究にのめり込んだ。

それだけではない。


私は気を送れる。

送れるだけではない調整もできるようになった。


これで本来人間が持つ自然治癒力を高め、薬草との相乗効果で病気の治癒率は高まった。


私はいつの間にか皆から聖女と呼ばれるようになっていた。


***


痛い


苦しい


許さなきゃ 許すのよ


最後の瞬間


やっぱり死にたくない


なんで私が


ちくしょう許せない


許せない


そう思った時、


煙と炎の間から赤い顔の悪魔が出て来た。


悪魔が私の耳元で囁く、


「痛みを無くしてやろう、迷いも、苦しみも、、」


「わしが貴様の願いを叶えてやる、契約するか?」


迷う事なく契約した。


永遠の命をもらった。


贅沢の限りをしている。


そして無限の渇きが私の中に生まれた。


私を焼き殺したお前たちは、私の前に膝まつくしかない。


復讐してやる。


このかりは絶対返してやる。


こうして私は上級悪魔となった。


聖女なんかくそくらえだ。


話終わったらなんだか心の奥になったしこりのような嫌な塊が溶けていくように感じられた。


私の横では、口の周りにご飯粒と醤油をつけたイツキがご飯張っている。


「ねぇ、エカテリーナ」


「なによ」


「鯖はあげないわよ」


「戻りたい?」


「ん?どこに?」


「いただきぃ〜」


「ちょっと〜」


「何なのよあんたは」


「だってエカテリーナ大根おろし食べないでしょ?」


「私、大根おろしと醤油でご飯一杯は余裕で食べれる」


「あんた最近食べ過ぎじゃない?」


最近、戻らなくてもいいかなと私は思っている。


今、結構気に入ってるから


私は何も言わずに 遅い昼食の焼きサバを イツキと二人で無言で食べた。



ヴィヴィアンのスーツから、香ばしい大衆食堂の匂いが立ち上っていた。


ジャージなら持ってる。


(ドルチェ&ガッパーナ)


明日着てこよう。

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